第七十二話 重なる声
ランキング戦まで残り三週間。
流星竜舎の訓練場。
ビュン!!
木球が飛ぶ。
恒一
(右!)
レヴ
『右だな』
ドッ!!
回避。
ビュン!!
恒一
(左!)
レヴ
『何だ?』
ゴン!!
恒一
「いてぇ!!」
レヴ
『失敗だな』
恒一
「分かってるよ!!」
エリシア
「惜しいのよねぇ」
ルミナス
『本当に惜しいですわ』
レオン
「惜しくない」
恒一
「厳しくない?」
レオン
「事実だ」
「休んでる暇は無いはじめろ」
成功。
失敗。
成功。
失敗。
共鳴は出る。
だが安定しない。
ランキング戦は迫ってくる。
完成率は上がっている。
それでも決定的な何かが足りなかった。
夕方。
訓練場。
恒一は地面へ座り込んだ。
恒一
「分かんねぇ……」
レヴ
『何がだ』
恒一
「全部だよ」
レヴ
『俺も分からん』
恒一
「だよなぁ……」
珍しく二人とも弱気だった。
そこへ、レオンがやってくる。
レオン
「お前達は間違っている」
恒一
「何がだ?」
レオン
「お前達は共鳴しようとしている」
恒一
「それが駄目なのか?」
レオン
「だから出来ない」
恒一
「...意味が分からん」
レオン
「共鳴は起こすものではない」
「結果だ」
恒一
「結果?」
レヴ
『余計分からん』
レオン
「考えるな。考えるから失敗する」
恒一
「は?」
レオン
「感じろ」
恒一
「......今一番胡散臭い事言ったぞ」
レオン
「事実だ」
三日後。
訓練場。
ビュン!!
木球が飛ぶ。
恒一
(右!)
レヴ
『右だな』
ドッ!!
回避。
ビュン!!
恒一
(前!)
レヴ
『前だな』
ドッ!!
回避。
エリシア
「おっ」
ルミナス
『続いてますわ』
恒一
「よし!」
ビュン!!
恒一
(左!)
レヴ
『何だ?』
ゴン!!
恒一
「いてぇ!!」
レヴ
『失敗だな』
恒一
「だから分かってるって!!」
レオン
「考え過ぎだ」
恒一
「またそれかよ」
さらに二日後。
ランキング戦まで残り二週間。
訓練場。
夕日が差し込む。
恒一は何度目かの失敗の後、空を見上げていた。
恒一
「もう分かんねぇ」
レヴ
『俺もだ』
恒一
「考えるのやめるか」
レヴ
『賛成だ』
エリシア
「投げたわね」
ルミナス
『投げましたわね』
恒一
「だってよ」
レヴ
『分からんものは分からん』
恒一
「それもそうだな」
二人は笑った。
その時だった。
レオン
「最後だ」
ビュン!!
木球発射。
恒一は反射的に動く。
考えない。
予測もしない。
ただ。
感じた。
その瞬間。
恒一・レヴ
(右)『右だ』
ドッ!!
回避。
エリシア
「え?」
ビュン!!
二発目。
恒一・レヴ
(左)『左だな』
ドッ!!
回避。
ルミナス
『今……』
ビュン!!
三発目。
恒一・レヴ
(跳ぶ)『跳ぶ』
ドォン!!
高く跳躍。
回避。
恒一
「……あれ?」
レヴ
『……』
ビュン!!
四発目。
恒一・レヴ
(前)『前だ』
ドッ!!
回避。
ビュン!!
五発目。
恒一・レヴ
(右)『右だな』
ドッ!!
回避。
誰も喋らない。
訓練場が静まり返る。
恒一
「今……」
レヴ
『聞こえたな』
恒一
「ああ」
レヴ
『お前の声が』
恒一
「ああ」
恒一はようやく気付いた。
考えていない。
伝えようとしていない。
なのに分かる。
レヴが何を考えているのか。
レヴもまた。
恒一が何を感じたのか理解していた。
レオン
「完成だ」
恒一
「……」
レヴ
『……』
エリシア
「やっとね」
ルミナス
『長かったですわ』
レオン
「ランキング戦に間に合ったな」
恒一はレヴを見る。
レヴも恒一を見る。
そして。
恒一
「やっとだな」
レヴ
『遅かったな』
恒一
「誰のせいだよ」
レヴ
『お前だ』
恒一
「お前だろ」
レヴ
『お前だ』
恒一
「お前だ」
レオン
「黙れ」
恒一・レヴ
(はい)『はい』
一瞬。
全員が固まる。
そして。
エリシア
「ふふっ」
ルミナス
『完成しておりますわね』
レオンも僅かに笑った。
ランキング戦まで残り二週間。
ついに。
恒一とレヴの共鳴は完成した。
――第七十二話 終――




