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第七十話 焦りと叫び

ランキング戦まで残り一ヶ月。


流星竜舎訓練場。


ビュン!!


木球が飛ぶ。


恒一

(右!)


レヴ

『右か』


ゴン!!


恒一

「いてぇぇぇぇぇ!!」


顔面直撃。


レオン

「遅い」


恒一

「今の俺じゃねぇだろ!!」


レヴ

『お前だ』


恒一

「何でだよ!?」


レヴ

『伝達が遅い』


恒一

「お前も遅いだろ!」


レヴ

『そうだな』


恒一

「認めるのかよ!!」


エリシア

「息は合ってきてるんだけどね」


ルミナス

『肝心な所でズレますわね』


レオン

「続けろ」


恒一

「休憩」


レオン

「続けろ」


恒一

「鬼か」


レヴ

『鬼だな』


レオン

「聞こえているぞ」


恒一・レヴ

「『……』」


◇◇◇


再開。


ビュン!!


恒一

(左!)


レヴ

『左だな』


ドッ!!


回避。


ビュン!!


恒一・レヴ

(右)『右だな』


ドッ!!


回避。


エリシア

「出た!」


ルミナス

『成功ですわ!』


恒一

「よし!」


レヴ

『出たな』


さらに。


ビュン!!


恒一・レヴ

(前)『前だな』


ドッ!!


回避。


恒一

「おっ!」


レヴ

『続いたな』


恒一

「この調子で――」


ビュン!!


恒一

(左!)


レヴ

『左だ――』


ゴン!!


レヴ

『むごっ!?』


木球がレヴの鼻先に直撃した。


恒一

「ぶはっ!!」


エリシア

「今のは酷い」


ルミナス

『見事に入りましたわね』


レヴ

『……』


恒一

「大丈夫か?」


レヴ

『恒一』


恒一

「何だ?」


レヴ

『わざとだろ?』


恒一

「何でだよ!?」


レヴ

『当たる直前に伝達が遅れた』


恒一

「偶然だ!!」


レヴ

『怪しい』


恒一

「俺だって当たりまくってるだろ!!」


レヴ

『それはお前が鈍いからだ』


恒一

「レヴ!お前も反応鈍いだろ!!」


レヴ

『お前が悪い』


恒一

「お前だ!!」


エリシア

「始まった」


ルミナス

『始まりましたわね』


レオン

「黙れ」


シーン。


恒一・レヴ

「『……』」


レオン

「失敗した原因も分からんのか」


レオン

「だから三割なんだ」


恒一

「……はい」


レヴ

『……はい』


ルミナス

『竜が怒られておりますわ』


エリシア

「珍しいわね」


レヴ

『理不尽だ』


レオン

「聞こえているぞ」


レヴ

『……』


恒一

「お前だけじゃないから安心しろ」


レヴ

『安心できん』


午後。


訓練は続いた。


成功。


失敗。


成功。


失敗。


共鳴は確かに出る。


だが、安定しない。


ビュン!!


恒一・レヴ

(右)『右だな』


ドッ!!


回避。


ビュン!!


恒一

(左!)


レヴ

『何だ?』


ゴン!!


恒一

「いてぇ!!」


レヴ

『失敗だな』


恒一

「分かってるよ!!」


ビュン!!


恒一

(前!)


レヴ

『前だな』


ドッ!!


回避。


ビュン!!


恒一・レヴ

(跳ぶ)『跳ぶか』


ドォン!!


跳躍。


着地。


恒一

「今のは良かっただろ!」


レオン

「三割だ」


恒一

「そんなに低いのかよ……」


エリシア

「成功した時は速い」


ルミナス

『ですが、成功するかどうかが読めませんわね』


レオン

「武器としては不十分だ」


恒一

「……」


ランキング戦まで残り一ヶ月。


ボルグ。


ミリア。


ゼノス。


全員が強い。


その中で勝つには、共鳴が必要だった。


だが。完成にはまだほど遠い。


夕方。


訓練終了。


レヴ

『明日の肉を忘れるな』


恒一

「お前はそればっかだな……」


レヴ

『重要だ』


恒一

「ああ、分かったよ」


そう返したものの、声には力が無かった。


恒一はふらふらになりながら竜舎を出た。


レヴは竜舎に残り、いつものように寝床へ向かう。


共鳴は出る。


だが続かない。


掴めたと思えば、次の瞬間には崩れる。


恒一

「……あと一ヶ月か」


その言葉だけが、妙に重く感じた。


竜のしっぽ亭に着くと自室のベッドへ恒一は倒れ込んだ。


恒一

「はぁ……」


天井を見る。


共鳴。


ランキング戦。


ボルグ。


ミリア。


ゼノス。


考えることばかりだった。


恒一

「全然完成しねぇ……」


ゴロリ。


寝返りを打つ。


ゴロリ。


もう一度。


恒一

「くそ……」


焦っている。


自分でも分かる。


だから余計に嫌だった。


その時。


コンコン。


扉が鳴った。


恒一

「……誰だ?」


ガロン

「入るぞ?」


扉が開く。


現れたのはガロンだった。


恒一

「ガロンか。どうしたんだよ?」


ガロン

「なんだぁ?」


ガロンはニヤリと笑った。


ガロン

「やけに落ち込んでるじゃねぇか」


恒一

「なんでもねーよ」


恒一

「からかいに来たのかよ」


ガロン

「まぁ、そう不貞腐れるな」


ガロンは肩を竦める。


ガロン

「いや〜よぉ〜」

「今日クロムウェル商会から仕入れた食材の中に、家畜の飼料が混ざっててな」


恒一

「飼料?」


ガロン

「ああ、明日竜舎に行くついでに持って行って欲しくてよ」


恒一

「あん?」

「なんで俺が……」


ガロン

「たまには従業員として働け」


恒一

「俺は竜騎手だ」


ガロン

「聞こえねぇなぁ〜」


ガロンはそう言うと。


ドサッ。


五キロほどありそうな麻袋をテーブルへ置いた。


ガロン

「ほらこれだ」


恒一

「おい」


ガロン

「じゃあ頼んだぞ」


恒一

「おい待て」


ガロン

「頑張れ従業員」


恒一

「だから違うって――」


バタン。


扉が閉まる。


静寂。


恒一

「……」


恒一

「なんだよ」


恒一

「こっちはそれどころじゃないってのに」


ぶつぶつ文句を言いながら、恒一は麻袋へ近付いた。


紐を解く。


恒一

「……ん?」


中には茶色い粒が大量に入っていた。


恒一

「なんだこれ」


手に取る。


軽い。


殻のようなものに包まれている。


家畜の餌と言われれば、そう見える。


だが。


妙に見覚えがあった。


恒一

「いや……」


まさか。


そんなはずがない。


一粒摘まむ。


指先で擦る。


パラリ。


殻が剥がれた。


中から現れたのは、薄茶色の粒。


恒一

「……」


固まる。


もう一粒。


もう一粒。


何度確認しても同じだった。


恒一

「……玄米?」


心臓が跳ねた。


恒一は袋の中をもう一度見る。


茶色い粒。


籾殻に包まれた大量の粒。


恒一

「……」


恒一

「……米だ」


数秒。


沈黙。


そして。


恒一

「ウオオオオオオオオオオオ!!!!!!」


その日の夜、竜のしっぽ亭に恒一の絶叫が響き渡った。


――第七十話 終――

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