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第六十九話 竜の郷の問題児コンビ

人の国から遥か北。


活火山が連なる禁域にある竜の郷。


人間が立ち入ることを許されない竜達の聖域。


その空を一頭の黒竜が背に赤髪の男を乗せ飛んでいた。


ゼノス

「退屈だ!!」


グランヴァルド

『嫌な予感がする』


ゼノス

「勝負しよう!!」


グランヴァルド

『誰とだ?』


ゼノス

「強そうな奴だ!!」


グランヴァルド

『いつものだな』


その時。


前方を一頭の赤竜が飛んでいた。


ゼノスの目が輝く。


ゼノス

「いたぁぁぁ!!」


赤竜

『……』


赤竜

『またお前らか』


ゼノス

「久しぶりだな!!」


赤竜

『全然嬉しくねぇ!!』


グランヴァルド

『元気そうだな』


赤竜

『お前らに会うと元気が無くなるんだよ...』


ゼノス

「勝負だ!!」


赤竜

『帰れ』


ゼノス

「何でだ!?」


赤竜

『何でじゃねぇよ!!』


赤竜

『毎回毎回追いかけ回しやがって!!』


グランヴァルド

『今回は少しだ』


赤竜

『その台詞を信じて火口まで逃げた事が何回あると思ってんだ!!』


ゼノス

「楽しかったな!!」


赤竜

『お前だけだ!!』


ゼノス

「よし行くぞ!!」


赤竜

『来るな!!』


ドォン!!


グランヴァルドが加速する。


赤竜

『だから待てぇぇぇぇ!!』


数時間後。


竜の郷。


巨大な火口を囲むように広がる竜達の集落。


赤竜は息を切らしていた。


赤竜

『はぁ……はぁ……』


ゼノス

「良い勝負だった!!」


赤竜

『勝負してねぇ!!』


グランヴァルド

『逃げ足は速かった』


赤竜

『追いかけて来たのはお前らだろうが!!』


そんなやり取りをしていると地面が揺れた。


竜達が頭を下げる。


火口の奥。


巨大な老竜がゆっくりと目を開く。


竜族の長老エンシェントドラゴンだ。


エンシェントドラゴン

『騒がしいのぅ』


赤竜

『長老ぉぉぉ!!』


エンシェントドラゴン

『何じゃ?』


赤竜

『またです!!』


ゼノス

「ただいま!!」


グランヴァルド

『帰った』


エンシェントドラゴン

『よく帰ってきたのぉ』


赤竜

『聞いてくださいよ!!』


エンシェントドラゴン

『また追いかけ回されたのかの?』


赤竜

『そうですよ!!』


エンシェントドラゴン

『そうかそうか』


赤竜

『終わりですか!?』


エンシェントドラゴン

『元気で良い事じゃ』


赤竜

『良くねぇ!!』


周囲の竜達が笑う。


飛竜

『また始まったな』


岩竜

『いつもの事だ』


赤竜

『お前らも笑うな!!』


夕方。


竜達が思い思いに過ごす時間。


ゼノスは大岩の上で肉を食っていた。


ゼノス

「うまい!!」


グランヴァルド

『五人前だぞ』


ゼノス

「足りん!!」


エンシェントドラゴン

『昔からよく食うのぅ』


ゼノス

「強くなるからな!!」


エンシェントドラゴン

『十分強いと思うがの』


ゼノス

「まだだ!!」


グランヴァルド

『まだらしい』


エンシェントドラゴン

『そうかのぅ』


その時。


一頭の飛竜が舞い降りる。


飛竜

『長老』


エンシェントドラゴン

『どうしたんじゃ?』


飛竜

『人の国で噂になっている黒竜がおります』


ゼノス

「レヴナントだな!!」


飛竜

『知っているのか?』


ゼノス

「知ってる!!」


ゼノス

「強いぞ!!」

「面白いぞ!!」


ゼノス

「最高だったぞ!!」


飛竜

『聞いてない事まで答えたな』


グランヴァルド

『いつもの事だ』


エンシェントドラゴン

『ほう』


長老の目が細くなる。


エンシェントドラゴン

『黒竜かのぅ』


ゼノス

「ランキング戦で走る!!」


ゼノス

「俺が勝つけどな!!」


グランヴァルド

『そうだな』


エンシェントドラゴン

『ほっほっほ』


エンシェントドラゴンは静かに笑った。


夜。


崖の上。


竜の郷を見下ろす場所。


ゼノスとグランヴァルドが並んで座る。


ゼノス

「楽しみだな!!」


グランヴァルド

『何がだ?』


ゼノス

「全部だ!!」


ゼノス

「ボルグもいる!!」

「レヴナントもいる!!」

「強い奴がたくさんいる!!」


グランヴァルド

『そうだな』


ゼノス

「だから楽しい!!」


グランヴァルド

『単純だな』


ゼノス

「褒めるな!!」


グランヴァルド

『褒めていない』


ゼノスは立ち上がる。


そして夜空へ向かって叫んだ。


ゼノス

「待ってろよぉぉぉ!!」


ゼノス

「八位ぃぃぃ!!」

「レヴナントぉぉぉ!!」


その声が竜の郷に響く。


遠く。


火口の奥。


エンシェントドラゴンは目を閉じたまま呟く。


エンシェントドラゴン

『若いのぅ』


そして小さく笑った。


エンシェントドラゴン

『実に若い』


――第六十九話 終――

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