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第六十八話 共鳴訓練

ランキング戦まで残り二ヶ月。


流星竜舎訓練場。


恒一は朝から嫌な予感がしていた。


目の前にはレオン。


その横にはレヴ。


そして大量の木球。


恒一

「......嫌な予感しかしない」


レオン

「訓練だ」


恒一

「それは分かる」


レオン

「共鳴を鍛える」


恒一

「どうやって?」


レオン

「レヴナントに騎乗しろ」


恒一

「ん?」


レオン

「レヴナントに目隠しをする」


レヴ

『嫌だ』


レオン・レヴ

「肉」『やる』


恒一

「共鳴してねぇ?」


十分後。


レヴの目は黒い布で覆われていた。


レヴ

『見えん』


恒一

「当たり前だ」


レヴ

『よし、帰るか』


恒一

「帰れないんだよ」


そこへ。


エリシアとルミナスがやって来る。


エリシア

「何してるの?」


恒一

「俺も知りたい」


ルミナス

『拷問ですの?』


恒一

「多分そんな感じ」


レオン

「違う」


レオンは木球を持ち上げた。


レオン

「これから木球を投げる」


恒一

「危なくないか?」


レオン

「危ないな、避けろ」


恒一

「雑だな」


レオン

「一つ条件がある」


恒一

「条件?」


レオン

「恒一は声を出すな」


恒一

「は?」


レオン

「指示は全て魔力伝達」


レオン

「口を使うな」


恒一

「何でだ?」


レオン

「レース中は騒音もある」

「観客もいる」

「他の竜もいる」

「声での伝達は聞こえない事もある」


エリシア

「理屈は分かる」


ルミナス

『確かに上位ほど声は使いませんわね』


恒一

「なるほど」


レオン

「始めろ」


ビュン!!


恒一

(右!)


レヴ

『ああ』


ドッ!!


回避。


ビュン!!


恒一

(左!)


レヴ

『遅い』


ゴン!!


恒一

「痛えぇぇぇぇぇ!!避けてねぇ!!」


レヴ

『今のはお前が悪い』


恒一

「理不尽だな!?」


一時間後。


ビュン!!


恒一

(右)


レヴ

『右か』


ドッ!!


回避。


ビュン!!


恒一

(左)


レヴ

『左か』


ドッ!!


回避。


ビュン!!


恒一

(前)


レヴ

『前だな』


ドッ!!


回避。


レオン

「続けろ」


恒一

「休憩は!?」


レオン

「無い」


恒一

「鬼だ......」


昼。


訓練はさらに厳しくなった。


二方向。


三方向。


連続投擲。


ビュン!!


ビュン!!


恒一

(右)


レヴ

『右か』


ドッ!!


回避。


ビュン!!


恒一

(左)


レヴ

『左か』


ドッ!!


回避。


そして。


ビュン!!


恒一・レヴ

(前)『前だな』


ドッ!!


回避。


全員が止まる。


恒一

「ん?」


レヴ

『ん?』


エリシア

「今」


ルミナス

『出ましたわ!』


恒一

「何が?」


レオン

「続けろ」


恒一

「...少しは教えてくれよ」


レオン

「続けろ」


再開。


ビュン!!


恒一

(右)


レヴ

『右か』


ドッ!!


回避。


恒一

「あ」


レヴ

『戻ったな』


エリシア

「まだ不安定」


ルミナス

『偶然に近いですわね』


恒一

「偶然かぁ……」


午後。


障害物コースを走る。


木球も飛んでくる。


レヴは目隠しのまま。


スタート。


ビュン!!


恒一

(右)


レヴ

『右か』


ドッ!!


回避。


ビュン!!


恒一

(前)


レヴ

『前だな』


跳躍。


ビュン!!


恒一・レヴ

(左)『左だな』


ドッ!!


回避。


恒一

「お?」


レヴ

『今のは早かったな』


エリシア

「二回目」


ルミナス

『確実に増えていますわね』


さらに。


障害物を増やす。


木球を投げる人員も追加。


ビュン!ビュン!!ビュン!!!


恒一・レヴ

(跳ぶ)『跳ぶか』


ドッ!!


跳躍。


ビュビュン!!


恒一・レヴ

(右)『右だな』


ドッ!!


回避。


恒一

「出た!」


レヴ

『出たな』


恒一

「何だ今の」


レヴ

『知らん』


恒一

「知らんのかよ」


エリシア

「三回目」


ルミナス

『面白くなってきましたわ』


夕方。


最後の一本。


レオン

「これで終わりだ」


恒一

「やっとか……」


レヴ

『肉』


レオン

「成功したらな」


レヴ

『やる』


スタート。


ビュン!!


木球。


恒一・レヴ

(右)『右だな』


ドッ!!


回避。


ビュン!!


木球。


恒一・レヴ

(左)『左だな』


ドッ!!


回避。


ビュン!!


三発同時。


右。


左。


正面。


一瞬。


恒一は危険を察知した。


その瞬間。


恒一・レヴ

(危ない)『危ないな』


ドォン!!


脚に魔力を流すと爆発的な加速をみせる。


三つの木球が後方を通り過ぎた。


さらに。


恒一・レヴ

(前に木箱)『飛び越える』


障害物の木箱を飛び越え。


恒一・レヴ

(着地点に柵)『蹴飛ばす』


最後の柵を――


バキィ!!


壊した。


恒一

「壊したぁぁぁ!!」


レヴ

『ちゃんと蹴って避けたぞ』


恒一

「蹴って壊すなよ!!」


そのままゴール。


静寂。


エリシア

「今の……」


ルミナス

『共鳴ですわ』


恒一

「今伝えたか?」


レヴ

『知らん』


恒一

「俺もだ」


レオンが頷く。


レオン

「良い」


恒一

「初めて褒めたな」


レオン

「まだ足りん」


恒一

「知ってた」


レヴ

『そうなのか?』


訓練終了。


エリシアが訓練場を見回す。


エリシア

「ところで....」


ルミナス

『随分壊れていますわね』


恒一

「ん?」


柵。

多数破損。


木箱。

半数消滅。


訓練コース。

無数の穴。


恒一

「……」


レヴ

『……』


エリシア

「酷い」


ルミナス

『酷いですわね』


恒一

「誰だよこんなに壊したの」


全員

「レヴナント」


レヴ

『証拠は?』


全員

「ある」


レヴ

『そうか』


恒一

「認めるのかよ」


レオン

「片付けろ」


恒一

「またかよ!!」


夕方。


片付け終了。


恒一

「終わったぁ……」


レヴ

『飯だな』


恒一

「ちゃんと働け」


レヴ

『働いた』


恒一

「壊しただけだろ」


レヴ

『結果的にそうなった』


恒一

「結果的にじゃねぇよ!」


二人は言い合いながら帰っていく。


その背中を見送るレオン。


視線の先には。


壊れた木箱。


折れた柵。


埋めた後の残る訓練コース。


レオン

「……」


しばらく無言。


そして。


誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。


レオン

「請求書に付けておくか……」


そのまま踵を返す。


― 第六十八話 終 ―

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