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第六十七話 共鳴

ランキング戦まで残り二ヶ月。


早朝の流星竜舎。


恒一が訓練場へ向かうと。


既に黒竜が暴れていた。


ドォン!!


恒一

「朝から何やってんだお前!?」


レヴ

『訓練だ』


ドォン!!


地面が抉れる。


恒一

「訓練場壊してるだけだろ.....」


レヴ

『細かい事を気にするな』


恒一

「細かくねぇ!」


その時だった。


上空から影が落ちた。


白銀の飛竜が優雅に舞い降りる。


背には銀髪の女性。


エリシア

「おはよう」


恒一

「おはようございます」


ルミナス

『ごきげんようですわ』


レヴ

『ああ』


ルミナス

『初めましてですわ』


レヴ

『肉は好きか』


ルミナス

『初対面ですわよ!?』


恒一

「まずそこなのかよ」


レヴ

『重要だ』


エリシア

「重要じゃない」


そこへレオンが現れる。


レオン

「揃ったな」


恒一

「今日は?」


レオン

「訓練だ」


恒一

「毎回説明雑だな」


レオン

「模擬戦を行う」


レヴ

『勝ったら肉か』


レオン

「違う」


レヴ

『解散だな』


恒一

「おい、帰るな」


ルミナス

『この方本当に聞いていた通りですわね……』


エリシア

「むしろ予想以上」


模擬戦開始。


スタート。


ドン!!


ルミナスが飛び出す。


恒一

「速っ!?」


白銀の身体が一気に前へ出る。


レヴに匹敵する加速。


恒一

「何だ今の!?」


エリシア

「ルミナスの特性」


ルミナス

『光翼ですわ』


恒一

「光翼?」


ルミナス

『三秒先を前提にした加速ですの』


エリシア

「予測型」


ルミナス

『計算型とも言いますわね』


レヴ

『長い』


ルミナス

『は?』


レヴ

『三秒も待てん』


ルミナス・エリシア

『待ちなさい』「待ちなさい」


レヴ

『嫌だ』


ドォン!!


爆発加速。


一瞬で並ぶ。


ルミナス

『話を聞きなさいませ!?』


恒一

「まぁ、正論だな」


数本後。


エリシア

「ルミナス」


ルミナス

『ええ』


ルミナスが一瞬空へ舞い上がる。


そして。


ドン!!


空中で。


再加速した。


恒一

「!?」


レヴ

『!?』


恒一

「今何した!?」


ルミナス

『空を蹴りましたの』


恒一

「は?」


ルミナス

『空気層と魔力を足場にするのですわ』


レヴ

『嘘だ』


ルミナス

『本当ですわ』


レヴ

『空気は蹴れん』


ルミナス

『蹴れますわ』


レヴ

『無理だ』


ルミナス

『出来ますわ』


レヴ

『嘘だ』


ルミナス

『本当ですわ!』


エリシア

「子供みたい」


恒一

「子供だな」


ルミナス

『飛行竜は空を走りますの』


レヴ

『地面で十分だ』


ルミナス

『飛べないからですわ』


レヴ

『……』


ルミナス

『あ』


エリシア

「言っちゃった」


恒一

「おい」


ルミナス

『ご、ごめんなさいまし』


レヴ

『別に気にしていない.....』


恒一

「本当か?」


レヴ

『肉が食えればいい』


恒一

「絶対本心じゃねぇ」


レオン

「今は必要ない」


全員がレオンを見る。


レオン

「ランキング戦が先だ」


レヴ

『そうだな』


恒一

「珍しく素直だな」


レヴ

『肉が先だ』


恒一

「.....やっぱりいつも通りだった」


午後。


最後の模擬戦。


混戦形式。


複数ライン。


障害物あり。


実戦想定。


スタート。


ドン!!


ルミナスが加速。


エリシア

(右)


ルミナス

『ええ』


エリシア

(今)


ルミナス

『分かっていますわ』


魔力伝達。


理解。


行動。


教科書通りのエリシアとルミナスの走り。


一方。


恒一は前を見る。


相手を見る。


流れを見る。


最適なラインを見つける。


恒一・レヴ

(左) 『左』


ドォン!!


レヴが動く。


エリシア

「……?」


もう一度。


恒一・レヴ

(右) 『右』


ドォン!!


レヴが動く。


さらに。


恒一・レヴ

(今) 『今だ』


ドォン!!


レヴが加速。


エリシア

「ちょっと待って」


訓練終了。


エリシア

「今の模擬戦」


恒一

「ん?」


エリシア

「魔力伝達何回した?」


恒一

「何回だ?」


レヴ

『二回くらいか』


エリシア

「少な過ぎる」


恒一

「そうなのか?」


エリシア

「普通なら五回以上」

「混戦ならもっと増える」


ルミナス

『わたくし達は七回ですわ』


恒一

「そんなに?」


エリシア

「だからおかしい」


検証開始。


再スタート。


恒一は前を見る。


最適なラインを見つける。


恒一・レヴ

(左) 『左』


ドォン!!


レヴが動く。


エリシア

「今」


エリシア

「魔力伝達した?」


恒一

「してない」


エリシア

「でも動いた」


恒一・レヴ

「動いたな」『動いたな』


ルミナス

『どういう事ですの?』


エリシア

「普通は」

「考える」

「伝える」

「理解する」

「動く」


エリシア

「でもこの二人は違う」


ルミナス

『違いますの?』


エリシア

「判断した時には、もう動いてる」


ルミナス

『そんな事が可能なんですの!?』


恒一

「俺に聞くな」


レヴ

『知らん』


エリシア

「当事者が知らないの!?」


恒一

「気付いたら出来てた」


レヴ

『そうだな』


ルミナス

『適当過ぎますわ……』


レオンが腕を組む。


しばらく考える。


そして。


レオン

「共鳴だな」


エリシア

「共鳴……」


レオン

「普通の竜騎手は違う」


全員がレオンを見る。


レオン

「考える」

「魔力で伝える」

「竜が理解する」

「そして動く」


ルミナス

『ええ、それが普通ですわね』


レオン

「ああ」


レオン

「だから上位になるほど」

「判断速度」

「魔力伝達速度」

「竜の理解速度」


レオン

「この全てを鍛える」


エリシア

「私達もそう」


レオン

「ボルグも」

「ミリアも」

「ゼノスもだ」


恒一

「でも俺達は違うと?」


レオン

「ああ」


レオン

「お前達は」


「考える」

「そして動く」


恒一

「……」


ルミナス

『一つ工程が足りませんわ』


レオン

「足りないんじゃない」

「存在していない」


静寂。


エリシア

「だから魔力伝達が少ない……」


レオン

「違う」


エリシア

「?」


レオン

「少ないんじゃない」


レオン

「判断した時には既に魔力が伝わっている」


ルミナス

『……』


恒一

「そんな事あるのか?」


レオン

「本来は無い」

「だから異常だ」


レヴ

『褒めているのか?』


レオン

「ああ」


レヴ

『そうか』


恒一

「ちょっと嬉しそうだなお前」


レヴ

『当然だ』


ルミナス

『褒められると喜ぶのですわね』


エリシア

「分かりやすい」


レオン

「だが欠点もある」


恒一

「欠点?」


レオン

「再現性が低い。感覚に頼り過ぎている」

「今は偶然に近い」


エリシア

「確かに」


ルミナス

『理論化されていませんものね』


レオン

「鍛えろ」


恒一

「どうやって?」


レオン

「知らん」


恒一

「知らんのかよ!!」


エリシア

「丸投げ……」


ルミナス

『師匠ですのよね?』


レオン

「ああ」


恒一

「駄目だこの師匠!!」


訓練終了。


全員帰ろうとした時。


レオン

「待て」


全員


「?」


レオンが訓練場を指差した。


そこには。


穴。


穴。


穴。


穴。


クレーター。


恒一

「……」


レヴ

『……』


ルミナス

『酷いですわね』


エリシア

「酷い」


恒一

「誰のせいだよ」


全員


「レヴナント」


レヴ

『証拠は?』


全員


「ある」


レヴ

『そうか』


恒一

「認めるなよ」


レオン

「整地」


恒一

「は?」


レオン

「日没まで」


恒一

「何で俺まで!?」


レオン

「相棒だ」


恒一

「都合良すぎるだろ!!」


夕方。


恒一

「何でこんな事に……」


レヴ

『左だ』


恒一

「何がだよ...?」


レヴ

『そこにも穴がある』


恒一

「作ったのお前だろ!!」


レヴ

『気付くのが遅い』


恒一

「誰のせいだぁぁぁ!!」


遠くから。


帰り際のエリシアとルミナスが眺めていた。


ルミナス

『まだ終わっていませんわね』


エリシア

「当然」


ルミナス

『共鳴より整地を鍛えるべきでは?』


エリシア

「それはそう」


恒一

「聞こえてるぞぉぉぉぉ!!」


ランキング戦まで残り二ヶ月。


恒一とレヴは新たな武器を知った。


共鳴。


それは。


判断と行動の間が存在しない。


二人だけの力。


だが今の二人に必要なのは――


まず整地だった。


― 第六十七話 終 ―

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