第六十四話 E級上位達の課題
新生・竜のしっぽ亭が完成して数日。
恒一は久しぶりにゆっくり朝食を食べていた。
ガロン
「おい」
恒一
「ん?」
ガロン
「お前本当に何もしなくなったな」
恒一
「だから竜騎手に専念するんだって」
ガロン
「俺は辞めていいなんて言ってねぇぞ」
恒一
「今さらなんだよ。店長頑張れ!」
ガロン
「誰のせいだと思ってやがる...」
そこへ。
一人の従業員が走ってきた。
「店長!」
ガロン
「やめろ」
「店長!」
ガロン
「だからそれをやめろ!」
恒一は笑う。
完全に板についてきていた。
その時。
店の入口が開く。
レオンだった。
レオン
「恒一」
恒一
「ん?」
レオン
「訓練だ」
恒一
「急だな」
レオン
「E級ランキング戦まで二ヶ月しかない」
恒一
「それはそうだけど」
レオン
「準備して競竜場へ来い」
そう言ってレオンは去っていった。
恒一
「相変わらず説明が足りねぇな」
レヴ
『行けば分かる』
恒一
「お前も同類だな」
王都競竜場。
訓練用コース。
恒一達が到着すると。
既に二組が待っていた。
ミリアとフェルド。
ボルグとアイアンシェル。
恒一
「何でいるんだ?」
ボルグ
「俺も知らん」
ミリア
「呼ばれたからよ」
フェルド
『暇ではなかったのだがな』
レヴ
『面白そうだな』
アイアンシェル
『悪くない』
レオンが全員の前に立った。
レオン
「集まったな」
恒一
「何するんだ?」
レオン
「模擬戦だ」
全員
「模擬戦?」
レオンは頷く。
レオン
「E級ランキング戦まで二ヶ月」
「お前達は現在E級十位以内」
ボルグを見る。
レオン
「一位」
ボルグ
「……」
ミリアを見る。
レオン
「三位」
ミリア
「そうね」
恒一を見る。
レオン
「八位」
恒一
「何か俺だけ場違いじゃないか?」
レオン
「場違いなら呼ばん」
恒一
「お、おう」
レオン
「お前達はE級の上位陣だ」
「互いを知れ」
「それがこの模擬戦の目的だ」
第一模擬戦。
純粋走力測定。
他の二頭は存在しないものとして純粋にコースを走る。
レオン
「まずはそれぞれの基準を見る」
恒一
「タイムアタックか」
レオン
「そうだ」
「行くぞ。スタート」
ドン!!
フェルドが飛び出した。
恒一
「速っ!?」
ミリア
「当然よ」
フェルド
『遅いな』
レヴ
『腹が立つな』
アイアンシェルはマイペース。
ボルグ
「いつも通りだ」
アイアンシェル
『承知した』
結果。
一位 フェルド
二位 レヴナント
三位 アイアンシェル
恒一
「やっぱ速ぇな……」
ボルグ
「フェルドの加速は反則だからな」
ミリア
「褒め言葉として受け取っておくわ」
第二模擬戦。
障害物コース。
急カーブ。
段差。
泥地。
本来のレースでは使われない特殊訓練コース。
恒一
「嫌な予感しかしねぇ」
レオン
「走れ」
恒一
「説明短っ!」
「よし、スタート」
今度はアイアンシェルが前へ出る。
圧倒的な安定感。
障害物を無視するように突破していく。
ボルグ
「行け!」
アイアンシェル
『任せろ』
フェルドは速度が出せない。
レヴは対応するが届かない。
結果。
一位 アイアンシェル
二位 レヴナント
三位 フェルド
ボルグ
「よし」
ミリア
「面倒なコースね」
フェルド
『嫌いだ』
レヴ
『俺は嫌いじゃない』
第三模擬戦。
レオンが静かに言う。
レオン
「ここからが本番だ」
恒一
「やっとか」
ミリア
「最初からこれで良かったんじゃない?」
レオン
「己の実力を知らずに実戦をやる意味はない」
ボルグ
「なるほどな」
レオン
「実戦形式で進路争いあり、駆け引きあり」
「好きに走れ」
レヴ
『待っていた』
フェルド
『同感だ』
アイアンシェル
『全力で行こう』
レオン
「スタートだ」
ドン!!
今度は全く違った。
フェルドが前へ出る。
しかし。
レヴは追わない。
恒一
「まだだ」
レヴ
『ああ』
ボルグも動かない。
アイアンシェル
『見るか』
ボルグ
「見る」
ミリア
「仕掛けるのが早いわよフェルド」
フェルド
『承知している』
全員が駆け引きをしている。
単純な速さ比べではない。
レースそのものだった。
中盤。
フェルドが仕掛ける。
アイアンシェルが進路を塞ぐ。
レヴが空いた大外から一気に加速する。
恒一
「今だ!」
恒一がレヴナントの足に魔力を通す。
レヴ
『行くぞ!!』
最後の直線。
三頭横並び。
歓声が響く。
そして。
ゴール。
一位 レヴナント
二位 フェルド
三位 アイアンシェル
恒一
「よっしゃあああ!!」
レヴ
『当然だ』
ボルグ
「今のは上手かったな」
ミリア
「判断勝ちね」
恒一
「へへっ」
レオン
「調子に乗るな」
恒一
「わかってますよぉ...」
模擬戦終了後。
全員が息を整える。
レオンが静かに口を開いた。
レオン
「なるほど」
恒一
「何がだ?」
レオン
「全員の欠点が見えた」
ボルグ
「言ってみろ」
レオンはアイアンシェルを見る。
レオン
「アイアンシェル」
アイアンシェル
『何だ』
レオン
「加速が遅い」
ボルグ
「チッ」
アイアンシェル
『否定できん』
レオンはフェルドを見る。
レオン
「フェルド」
フェルド
『聞こう』
レオン
「接触戦への対応が甘い」
ミリア
「否定できないわね」
フェルド
『改善しよう』
最後に。
レオンは恒一を見る。
恒一
「おう」
レオン
「全部足りん」
恒一
「雑じゃねぇ!?」
レオン
「事実だ」
恒一
「いやいやいや!」
レオン
「経験」
「技術」
「判断」
「駆け引き」
レオン
「全てが足りん」
恒一
「初めからそう言えよ!」
レオン
「面倒だった」
恒一
「この野郎!」
レヴ
『否定できんな』
恒一
「お前は味方しろよ!」
フェルド
『事実だ』
アイアンシェル
『事実だな』
ミリア
「事実ね」
ボルグ
「事実だな」
恒一
「全員敵か!?」
レオン
「安心しろ」
恒一
「何がだ?」
レオン
「伸び代は一番ある」
恒一
「お?」
レオン
「今は一番弱いからな」
恒一
「フォローになってねぇ!!」
ボルグが吹き出した。
ミリアも肩を震わせる。
レオン
「十分だ」
恒一
「終わりか?」
レオン
「ああ」
ミリア
「課題は見えたわね」
フェルド
『接触戦か』
ミリア
「帰ったら徹底的にやるわよ」
フェルド
『覚悟しておこう』
ボルグ
「アイアンシェル」
アイアンシェル
『加速だな』
ボルグ
「ああ」
アイアンシェル
『やるぞ』
ボルグ
「当然だ」
恒一
「俺は?」
レオン
「全部だ」
恒一
「ひどくない!?」
レヴ
『全部だな』
恒一
「お前まで!?」
レオン
「各自持ち帰れ」
レオン
「次のランキング戦で結果を見せろ」
ミリア
「簡単には勝たせないわよ」
ボルグ
「それはこっちの台詞だ」
レヴ
『面白い』
フェルド
『望むところだ』
アイアンシェル
『次は負けん』
ランキング戦まで残り二ヶ月。
それぞれの竜舎へ戻り、
新たな課題と向き合うのだった。
― 第六十四話 終 ―




