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第五十五話 勝負の行方

競竜場が静まり返る。


先ほどまでの歓声が嘘のようだった。


実況

「写真判定です!」


実況

「これは分かりません!」


実況

「レヴナント!」


実況

「フェルド!」


実況

「アイアンシェル!」


実況

「三頭ほぼ同時です!!」


観客達も騒いでいた。


「どっちだ!?」


「アイアンシェルだろ!」


「いやレヴナントだ!」


「フェルドじゃないか!?」


誰も分からない。


恒一も。


ミリアも。


ボルグも。


結果を待っていた。


恒一

「レヴ、どうだ……?」


レヴ

『分からん』


恒一

「お前でもか」


レヴ

『ゴールしか見ていない』


恒一

「それもそうか」


少し離れた場所。


ミリアは拳を握っていた。


フェルド

『どうだと思う』


ミリア

「知らないわよ」


フェルド

『珍しいな』


ミリア

「うるさいわね...」


その声は少し震えていた。


そして。


ボルグ。


アイアンシェルの首を撫でていた。


ボルグ

「よく走った」


アイアンシェル

『勝ったか?』


ボルグ

「まだ分からん」


アイアンシェル

『そうか』


だが。


その目に焦りは無かった。


王者の余裕。


それがあった。


やがて。


審議席のランプが消える。


実況席に紙が届いた。


実況が息を飲む。


実況

「出ました!」


会場が沸く。


実況

「結果が出ましたァァァ!!」


巨大掲示板に文字が映る。


まず。


三着。


実況

「第三着!!」


全員の視線が集まる。


表示された名前は――


【アイアンシェル】


一瞬。


会場が静まった。


そして。


大歓声。


「嘘だろ!?」


「アイアンシェルが負けた!?」


「俺アイアンシェルが負けたの初めて見たぞ!」


「三着だと!?」


ボルグは驚かなかった。


ただ。


少しだけ目を細めた。


アイアンシェル

『負けたか』


ボルグ

「そのようだ。だがまだ二着と一着が出ていない」


アイアンシェル

『ああ』


実況も興奮している。


実況

「王者アイアンシェル!」


実況

「まさかの三着です!!」


実況

「E級競走に激震が走りました!!」


恒一は息を飲んだ。


つまり。


残ったのは。


レヴナント。


フェルド。


ミリアも掲示板を見上げる。


拳を握り締めた。


実況

「続いて第二着!!」


静寂。


誰も息をしていないようだった。


そして。


表示される。


【フェルド】


ミリア

「っ!」


フェルド

『届かなかったか』


ミリア

「くっ...惜しかった……!」


だが。


次の瞬間。


ミリアは笑った。


ミリア

「よくやったわ!」


フェルド

『当然だ』


実況

「フェルド二着!!」


実況

「アイアンシェルを差し切りましたァァァ!!」


実況

「疾風竜の猛追!!」


会場はさらに沸く。


だが。


その歓声すら。


次の発表で消えた。


残った名前は一つ。


実況の声が震える。


実況

「それでは!」


実況

「E級競走第一レース!」


実況

「栄えある第一着は――!!」


巨大掲示板に文字が映る。


【レヴナント】


一瞬。


誰も動かなかった。


そして。


爆発した。


「うおおおおおおおお!!」


「勝ったァァァ!!」


「レヴナントだァァァ!!」


「飛べない飛行竜が!!」


「新人戦王者がやりやがった!!」


恒一は呆然としていた。


恒一

「……勝った?」


レヴ

『ああ...勝った』


恒一

「勝った」


レヴ

『勝った』


恒一

「勝ったぁぁぁぁぁ!!」


思わず叫ぶ。


レヴも咆哮を上げた。


レヴ

『オオオオオオオオオオ!!』


会場中に響く咆哮。


観客が応える。


歓声が止まらない。


レオンは静かに笑った。


レオン

「本当に届いたか」


ガロンは。


観客席で立ち上がっていた。


ガロン

「よっしゃぁぁぁ!!」


周囲が驚く。


ガロン

「複勝当たったぁぁぁ!!」


レオン

「そこか!?」


ガロン

「そこだぁ!!!」


ミリアが近付いてくる。


ミリア

「負けたわ」


恒一

「ギリギリだっただろ」


ミリア

「次は勝つわよ」


恒一

「望むところだ」


フェルド

『次は負けん』


レヴ

『次も勝つ』


二頭が睨み合う。


そこへ。


重い足音。


ボルグだった。


会場の空気が変わる。


ボルグは恒一の前で止まる。


そして。


レヴを見る。


アイアンシェルもレヴを見る。


少しの沈黙。


そして。


ボルグは笑った。


ボルグ

「強かった」


恒一

「……」


ボルグ

「認めよう」


ボルグ

「今日の勝者はお前達だ」


レヴ

『当然だ』


ボルグ

「だが」


ボルグの目が鋭くなる。


ボルグ

「次は負けん!」


恒一

「次も追い抜いてみせるさ」


アイアンシェル

『次は勝つ!』


レヴ

『受けて立つ』


王者は敗れた。


だが。


終わったわけではない。


むしろ。


ここから始まる。


飛べない飛行竜。


レヴナント。


その名は。


この日。


E級全体へ知れ渡った。


― 第五十五話 終 ―

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