第五十四話 E級の壁
出走竜達がゲートへ集まる。
恒一はレヴの背に跨った。
周囲を見渡す。
全部で十頭。
どれもE級所属の実力者達だった。
だが。
視線は自然と一頭へ向く。
アイアンシェル。
巨大な地竜。
そして。
その背に乗るボルグ。
圧倒的一番人気。
E級の王者。
レヴ
『見るな』
恒一
「ん?」
レヴ
『前を見ろ』
恒一は笑う。
恒一
「ああ」
ゲートが閉じる。
観客席から歓声が響く。
実況
「E級競走第一レース!」
実況
「まもなくスタートです!」
緊張が高まる。
恒一は手綱を握る。
レヴが低く唸った。
そして。
スタートの鐘が鳴る。
実況
「スタートォォォ!!」
十頭が一斉に飛び出した。
アイアンシェル。
速い。
巨体とは思えない加速。
あっという間に先頭へ出る。
ボルグ
「行くぞ」
アイアンシェル
『任せろ』
実況
「アイアンシェル先頭!」
実況
「やはり王者アイアンシェル!」
実況
「完璧なスタートです!!」
観客が沸く。
一方。
フェルドは三番手。
ミリア
「いい位置ね」
フェルド
『問題ない』
そして。
最後方。
レヴ。
実況
「おっとレヴナント!」
実況
「新人戦王者は最後方です!」
観客席から笑いが起きる。
「終わったな」
「置いていかれてるぞー」
「やっぱりE級じゃ無理かぁ」
恒一もレヴも気にしない。
恒一
「予定通りだ」
レヴ
『ああ、予定通りだ』
第一コーナー。
第二コーナー。
先頭は変わらない。
アイアンシェル。
二番手。
三番手。
隊列は固まる。
実況
「アイアンシェル独走態勢!」
実況
「後続に隙を与えません!」
実況
「まさに鉄壁だァ!!」
レオンは観客席から見ていた。
レオン
「やはり強いな……」
ガロン
「だな」
残り五百メートル。
アイアンシェルがさらに加速する。
実況
「来たァァァ!!」
実況
「王者アイアンシェルのスパート!!」
観客が総立ちになる。
後続との差が開く。
恒一
「やっぱり速いな...」
レヴ
『だが届く』
恒一
「分かってるさ」
残り三百メートル。
ミリアが叫ぶ。
ミリア
「フェルド!」
フェルド
『任せろ!』
疾風竜の身体を風が包む。
特殊能力。
疾風。
実況
「フェルド加速!!」
実況
「一気に二番手へ!!」
実況
「疾風竜の本領発揮だァ!!」
観客が沸く。
だが。
まだ遠い。
先頭はアイアンシェル。
残り二百メートル。
残り百五十メートル。
残り百メートル。
そして。
最後方だった黒竜が動いた。
実況
「なっ!?」
実況
「レヴナントだァァァ!!」
実況
「最後方からレヴナント!!」
実況
「大外から一気に駆け上がって来たァァァ!!」
黒い閃光が駆け抜ける。
恒一
「行くぞ!!」
レヴ
『応!!』
観客席がどよめく。
ボルグが振り返る。
ミリアが目を見開く。
レオンが立ち上がる。
ガロン
「来たか!」
実況
「速い!」
実況
「速い速い速い!!」
実況
「何だこの加速はァァァ!!」
残り五十メートル。
アイアンシェル。
フェルド。
レヴナント。
三頭が並ぶ。
実況
「アイアンシェル!!」
実況
「フェルド!!」
実況
「レヴナント!!」
実況
「三頭横一線だァァァ!!」
ゴール板が迫る。
誰が勝つ。
誰が届く。
三頭の影が。
同時にゴール板に飛び込んだ。
実況
「これは分からない!!」
実況
「三頭同時にゴール!これは写真判定です!!」
― 第五十四話 終 ―




