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第四十六話 面白そうだから

レオンがアークライト竜舎から戻った翌日。


流星竜舎。


恒一は今日も翼への魔力操作訓練を続けていた。


恒一

「翼へ」


レヴ

『来た』


恒一

「もう少し」


レヴ

『来ている』


翼が淡く光る。


だが。


飛ばない。


恒一

「くそっ!」


レヴ

『飛ばん』


恒一

「知ってる!」


レオン

「元気だな」


恒一

「元気じゃない」


レヴ

『飛べん』


レオン

「それも知っている」


恒一

「何か分かったか?」


レオン

「少しな」


恒一

「本当か!?」


レヴ

『飛べるのか』


レオン

「それはまだ分からん」


恒一

「じゃあ何が分かったんだ」


レオン

「お前の出生だ」


レヴ

『出生』


レオン

「アークライト竜舎生まれだった」


恒一

「アレクシスの実家か」


レオン

「ああ」


レヴは少し考える。


だが。


何も思い出せない。


レヴ

『覚えておらん』


レオン

「だろうな」


恒一

「それで?」


レオン

「アレクシスに会ってくる」


恒一

「また留守番か」


レオン

「訓練」


恒一

「はいはい」


レヴ

『働け』


恒一

「だからそれ誰の影響だよ」


レオンは小さく笑った。


そして王都へ向かった。


王都。


競走竜育成学院。


訓練を終えたアレクシスはレオンを見ると軽く目を見開いた。


アレクシス

「レオン殿?」


アレクシス

「珍しいですね」


レオン

「聞きたい事がある」


アレクシス

「レヴナントの事ですか?」


レオン

「知っていたのか」


アレクシス

「かなり前から」


レオン

「いつからだ」


アレクシス

「初めてレヴナントを見た時から違和感はありました」


アレクシス

「その後、執事に調べさせました」


レオン

「なぜ黙っていた」


アレクシス

「面白そうだったので」


レオン

「……」


アレクシス

「……」


レオン

「最低だな」


アレクシス

「よく言われます」


レオンは小さくため息を吐いた。


やはりこういう男だった。


アレクシス

「ですが、本当に興味があったのです」


レオン

「何にだ」


アレクシス

「何故レヴナントが市場にいたのか」


アレクシス

「何故飛べないのか」


アレクシス

「そして、何故父上が隠したのか」


レオン

「研究棟か」


アレクシスの表情が少しだけ変わる。


アレクシス

「そこまで調べたのですね」


レオン

「ああ」


少しの沈黙。


アレクシスは遠い記憶を思い出す。


幼い頃。


屋敷の裏手にあった研究棟。


誰も近付こうとしない建物。


そして。


檻の奥にいた一頭の黒竜。


普通の竜とはどこか違った。


不気味というより。


異質だった。


ただそこにいるだけで空気が重くなるような存在。


アレクシスは興味本位で近付いた。


だが。


その時。


研究棟の奥から怒鳴り声が聞こえた。


父親の声だった。


伯爵

「何故だ!!」


伯爵

「何が足りない!!」


伯爵

「魔力量は十分なはずだ!!」


伯爵

「何故完成しない!!」


研究員

「わ、分かりません!」


研究員

「理論上は成功しているはずです!」


伯爵

「答えろ!!」


幼いアレクシスは恐ろしくなり、その場から逃げ出した。


その直後。


父親に見つかり激しく叱責された。


二度と研究棟へ近付くなと。


アレクシス

「詳しい事は知りません」


レオン

「だろうな」


アレクシス

「ですが」


アレクシス

「父上は何かを作ろうとしていました」


レオン

「何か」


アレクシス

「真龍です」


レオンの目が細くなる。


レオン

「真龍だと」


アレクシス

「古い戦記に登場する存在です」


アレクシス

「戦場を一頭で変える伝説の竜」


レオン

「伝説だな」


アレクシス

「ええ」


アレクシス

「ですが父上は本気でした」


レオン

「……」


アレクシス

「研究員達も真龍という言葉を使っていました」


レオン

「そして完成しなかった」


アレクシス

「少なくとも父上はそう考えていたのでしょう」


二人の間に沈黙が流れる。


飛行不能。


機密指定。


研究棟。


真龍。


そしてレヴナント。


全てが繋がりそうで繋がらない。


アレクシス

「レヴナントは元気ですか」


レオン

「元気だ」


レオン

「よく食う」


アレクシス

「それは良かった」


レオン

「飛べんがな」


アレクシス

「そこは変わりませんね」


少しだけ笑う。


だが。


すぐに真面目な表情へ戻った。


アレクシス

「私も調べましょう」


レオン

「いいのか」


アレクシス

「もちろんです」


レオン

「理由は」


アレクシス

「面白そうですから」


レオン

「やはりそれか」


アレクシス

「それです」


夕陽が学院を照らしていた。


レオンは学院を後にする。


その背中を見送りながら。


アレクシスは静かに呟く。


アレクシス

「父上」


アレクシス

「あなたはレヴナントに何をしたのですか」


その答えを知る者はまだいない。


流星竜舎。


研究棟。


アークライト伯爵。


真龍。


そしてレヴナント。


少しずつ。


確実に。


過去へ続く扉が開き始めていた。


― 第四十六話 終 ―

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