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第四十四話 調査開始

恒一は欠伸をしながら訓練場へ向かっていた。


恒一

「眠い……」


レヴナント

『寝ろ』


恒一

「お前も起きてるだろ」


レヴナント

『竜だからな』


恒一

「便利だな」


レヴナント

『そうでもない』


そんなやり取りをしながら訓練場へ出る。


だが。


いつもいるはずの人物がいなかった。


恒一

「あれ?」


レヴナント

『レオンは?』


竜舎にもいない。


訓練場にもいない。


珍しい。


しばらくすると。


事務所からレオンが出てきた。


眠そうだった。


恒一

「寝てないな?」


レオン

「少しな」


恒一

「珍しい」


レオン

「調べ物をしていた」


レヴナント

『調べ物?』


レオンは少しだけ二人を見る。


そして言った。


レオン

「お前の事だ」


レヴナント

『俺か』


恒一

「飛べない理由か?」


レオン

「ああ」


空気が少し変わった。


レオンは書類を差し出す。


恒一が受け取る。


そこには。


【飛行能力:飛行不能】


と書かれていた。


恒一

「知ってる」


レオン

「その下を見ろ」


恒一

「ん?」


【原因:空欄】


恒一

「……」


レヴナント

『……』


レオン

「普通は書いてある」


恒一

「怪我とか?」


レオン

「ああ」


レオン

「翼の異常」


レオン

「病気」


レオン

「先天的欠陥」


レオン

「色々だ」


恒一

「でもレヴには無い」


レオン

「無い」


レヴナント

『無いな』


レオン

「だからおかしい」


恒一は少し考える。


確かにそうだ。


翼は正常。


身体能力も高い。


魔力操作も出来るようになった。


なのに。


飛べない。


恒一

「何か隠してる?」


レオン

「分からん」


レヴナント

『俺も分からん』


レオン

「だから調べる」


その日の訓練は短かった。


理由は簡単。


レオンが競走協会へ向かうからだった。


王都競走協会。


資料保管室。


大量の書類が並ぶ部屋。


レオンは朝から記録を読み漁っていた。


競走登録。


健康診断書。


血統書。


出生記録。


売買記録。


普通の竜なら。


ここで何か分かる。


だが。


レヴナントの資料は妙だった。


レオン

「何だこれは」


一枚の資料で手が止まる。


【出生竜舎】


アークライト竜舎


レオン

「アークライト……?」


聞いた事のある名前だった。


王都有数の名門竜舎。


貴族経営。


高額な競走竜を扱う。


そして。


アレクシスが所属している竜舎でもある。


レオン

「何故だ」


売れ残り黒竜。


飛べない竜。


そんな竜が。


名門竜舎生まれ。


それだけでもおかしい。


さらに資料をめくる。


そこで。


もう一つ妙な記載を見つける。


【魔力測定記録】


記録なし


レオン

「記録なし?」


あり得ない。


競走竜は必ず測る。


脚力。


持久力。


飛行適性。


そして魔力量。


それが競走竜の価値を決める。


なのに。


何も無い。


レオン

「測定していないのか?」


そんなはずがない。


名門竜舎だ。


忘れる訳がない。


さらに下を見る。


そこには小さな文字があった。


【機密指定】


関係者以外閲覧禁止


レオン

「……」


沈黙。


機密指定。


飛行不能。


原因不明。


魔力記録なし。


全てが繋がらない。


レオン

「何を隠している」


誰に言うでもなく呟く。


その頃。


流星竜舎。


恒一とレヴナントは自主訓練を続けていた。


恒一

「レオン遅いな」


レヴナント

『珍しい』


恒一

「何か分かったかな」


レヴナント

『分からん』


恒一

「だよな」


二人とも知らない。


レオンが今。


レヴナントの過去へ続く扉を見つけかけている事を。


夕方。


競走協会を出るレオン。


手には資料の写し。


その目は真剣だった。


アークライト竜舎。


機密指定。


飛行不能。


偶然とは思えない。


レオン

「一度会う必要があるな」


風が吹く。


資料の端が揺れた。


その先にある真実は。


まだ誰も知らない。


レヴナント自身でさえも。


― 第四十四話 終 ―

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