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第四十一話 料理人の魔力

夜の自主練から数日。


流星竜舎。


恒一とレヴナントは相変わらず魔力操作に苦戦していた。


レオン

「違う」


恒一

「またか!」


レオン

「違うものは違う」


恒一

「説明!」


レオン

「考えろ」


恒一

「そればっかりだな!」


レヴナント

『同感だ』


二人とも少し苛立っていた。


魔力を流すことはできる。


だが。


操ることができない。


それが飛行への壁になっていた。


昼過ぎ。


竜舎の入口から聞き慣れた声が響いた。


ガロン

「差し入れだ」


恒一

「ガロン?」


ガロンは大量の食材を抱えていた。


肉。


野菜。


パン。


そして酒。


恒一

「酒いらなくない?」


ガロン

「俺が飲む」


恒一

「だと思った」


ガロンは竜舎の空きスペースを勝手に使い始めた。


レオン

「何をしている」


ガロン

「料理だ」


レオン

「そうか」


恒一

「そうかじゃないだろ」


誰も止めなかった。


しばらくして。


良い匂いが広がり始める。


恒一は何となく料理するガロンを眺めていた。


すると。


違和感に気付く。


恒一

「ん?」


ガロンは包丁で肉を切っている。


それは普通だった。


だが。


その横では鍋が宙に浮いていた。


ゆっくりとかき混ぜられている。


さらに。


棚に置かれた塩壺がふわりと浮いた。


鍋の上まで移動する。


必要な量だけ塩が落ちる。


そして。


何事もなかったかのように元の場所へ戻った。


恒一

「待て」


ガロン

「ん?」


恒一

「今何やった?」


ガロン

「何がだ?」


恒一

「鍋!」


ガロン

「鍋がどうした」


恒一

「浮いてたぞ!?」


ガロン

「ああ」


恒一

「ああじゃない!」


レヴナント

『確かに浮いていたな』


ガロン

「普通に調理してるだけだが?」


恒一

「普通じゃない!」


ガロンは首を傾げた。


本当に分かっていないらしい。


ガロン

「魔力操作で調理するのは普通だろ?」


恒一

「普通なのか!?」


レオン

「普通だな」


レヴナント

『普通らしい』


恒一

「俺だけ知らなかったのか!?」


ガロンは笑いながら鍋をかき混ぜる。


ガロン

「便利だぞ」


恒一

「便利とかそういう問題じゃない」


ガロン

「そうか?」


恒一

「そうだよ!」


その時。


ガロンは鍋を見ながら言った。


ガロン

「鍋を動かす時な」


恒一

「うん」


ガロン

「全部同じ力で動かしたらひっくり返る」


恒一

「そりゃそうだ」


ガロン

「だから少しずつ調整する」


ガロン

「かき混ぜる時も同じだ」


ガロン

「必要な場所に」


ガロン

「必要な分だけ」


恒一

「……」


レヴナント

『……』


二人の動きが止まる。


ガロン

「何だ?」


恒一

「レヴ」


レヴナント

『ああ』


ガロン

「?」


恒一

「俺達」


レヴナント

『全部流していた』


恒一

「脚に魔力を送るつもりで」


レヴナント

「全身に流れていた」


ガロン

「そうなのか?」


レオン

「そうだ」


ガロン

「馬鹿だな」


恒一

「うるさい」


レヴナント

『否定できん』


恒一は立ち上がった。


手綱を握る。


レヴナントも立ち上がる。


恒一

「試すぞ」


レヴナント

『ああ』


ゆっくり。


本当にゆっくり。


魔力を送る。


今までみたいに大量ではない。


少しだけ。


必要な場所へ。


必要な分だけ。


レヴナントの右前脚が淡く光った。


恒一

「!」


レヴナント

『来た』


恒一

「来た!」


レヴナント

『来たな!』


今まで一度もできなかった。


脚だけへの魔力操作。


ほんの少し。


だが。


確かに成功した。


レオン

「ようやくか」


恒一

「最初から言え!」


レオン

「考えろと言った」


恒一

「説明しろ!」


レヴナント

『説明不足だな』


レオン

「結果的に出来た」


恒一

「それはそうだけど!」


ガロンは豪快に笑った。


ガロン

「はっはっは!」


ガロン

「俺の料理のおかげだな!」


恒一

「調子に乗るな!」


ガロン

「もっと褒めろ」


レヴナント

『褒めてやるか?』


恒一

「やめろ」


竜舎に笑い声が響く。


飛行への道はまだ遠い。


だが。


確実に前へ進んでいた。


― 第四十一話 終 ―

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