第三十九話 魔力が伝わらない
ミリアとフェルドが帰った翌日。
流星竜舎。
朝から訓練場にはレオンの声が響いていた。
レオン
「違う」
恒一
「何がだよ!」
レオン
「全部だ」
恒一
「酷くない!?」
レオン
「事実だ」
容赦が無い。
今日の訓練は魔力操作。
飛行への第一歩。
そして。
恒一とレヴナントが最も苦手としている訓練だった。
レオン
「もう一度だ」
恒一
「はいはい」
レヴナント
『脚へ』
恒一
「分かった」
手綱を握る。
魔力を流す。
だが。
レヴナントの全身が淡く光った。
レヴナント
『全部来た』
恒一
「全部?」
レヴナント
『脚だけ頼んだ』
恒一
「そんな器用な事言われてもな!」
レオン
「雑だな」
恒一
「簡単そうに言うな!」
レオン
「簡単だからな」
恒一
「絶対嘘だろ」
再挑戦。
失敗。
再挑戦。
失敗。
再挑戦。
失敗。
恒一
「くそっ!」
レヴナント
『難しいな』
恒一
「お前も分からないのか」
レヴナント
『分からん』
レオン
「当然だ」
恒一
「当然なのか?」
レオン
「お前達は今まで力任せだった」
レヴナント
『否定できんな』
恒一
「否定してくれよ」
昼。
少し休憩。
恒一は草の上へ倒れ込む。
恒一
「新人戦の方が楽だったな……」
レヴナント
『走るだけだったからな』
恒一
「だよなぁ」
レヴナント
『今は頭を使う』
恒一
「苦手分野だ」
レヴナント
『同感だ』
午後。
再び訓練。
レオン
「魔力を流すな」
恒一
「分からん」
レオン
「操れ」
恒一
「だから分からん」
レオン
「考えろ」
恒一
「ヒント!」
レオン
「無い」
恒一
「鬼か!」
レオン
「調教師だ」
恒一
「意味が分からん!」
夕方。
訓練終了。
結局。
大きな成果は無かった。
レヴナント
『飛べる気がしないな』
恒一
「俺もだ」
レオン
「そういう日はある」
恒一
「珍しく優しいな」
レオン
「明日もやるからな」
恒一
「優しくなかった」
レオンは少しだけ笑った。
そして竜舎へ戻っていく。
恒一とレヴナントだけが残った。
空は赤く染まっていた。
飛行。
魔力。
封印。
何一つ分からない。
だが。
立ち止まる訳にはいかなかった。
― 第三十九話 終 ―




