第三十四話 勝気な竜騎手
翌朝。
流星竜舎。
恒一は宿屋の手伝いを終えて竜舎へ向かっていた。
恒一
「朝から働いて訓練してレース出て……」
恒一
「俺、思ってた異世界生活と違うんだけど」
レヴナント
『働け』
恒一
「お前それ気に入ってるだろ」
レヴナント
『働け』
恒一
「くそっ」
竜舎へ到着すると。
既にレオンが待っていた。
レオン
「来たか」
恒一
「練習相手は?」
レオン
「もう来てる」
恒一
「早いな」
レオン
「向こうはE級常連だからな」
その時。
竜舎の奥から声が響いた。
???
「へぇ」
???
「アンタが新人戦王者?」
恒一
「ん?」
振り返る。
そこにいたのは。
茶色の髪を高い位置で結んだ少女だった。
年齢は十七歳くらい。
動きやすそうな竜騎手服。
そして。
いかにも気が強そうな顔。
少女は恒一を上から下まで見た。
そして。
ミリア
「思ったより普通ね」
恒一
「お前もな」
ミリア
「喧嘩売ってる?」
恒一
「そっちだろ」
ミリア
「買うわよ?」
恒一
「売ってねぇよ!」
レオン
「始まったな」
レヴナント
『始まったな』
恒一
「止めろよ!」
少女はニヤリと笑った。
ミリア
「ミリア・クロフト」
ミリア
「E級所属竜騎手」
恒一
「神崎恒一だ」
ミリア
「知ってる」
恒一
「知ってるのか」
ミリア
「新人戦優勝した売れ残り黒竜でしょ?」
恒一
「その言い方やめろ」
ミリア
「事実じゃない」
恒一
「ぐぬぬ」
その時だった。
大きな影が近付いてくる。
恒一は思わず振り返った。
そこには。
美しい緑色の鱗を持つ竜がいた。
体格はレヴナントより少し大きい。
脚が長い。
そして何より。
速そうだった。
ミリア
「私の相棒」
ミリア
「フェルドよ」
フェルド
『よろしく』
レヴナント
『よろしく』
珍しく普通の挨拶だった。
恒一は神眼を発動する。
【フェルド】
種族:疾風竜
速度:B+
持久力:B
魔力操作:B
飛行適性:C
総合評価:B+
恒一
(強い……)
新人戦で見た竜達より明らかに格上だった。
レオン
「今日来てもらった理由は分かるな?」
恒一
「E級の壁か」
レオン
「ああ」
ミリア
「まぁ」
ミリア
「手加減してあげるわよ」
恒一
「言ったな」
ミリア
「負ける気しないし」
恒一
「腹立つな」
ミリア
「そう?」
レオンは呆れたように息を吐く。
レオン
「模擬レースをやる」
恒一
「いきなりか」
レオン
「そのために呼んだ」
ミリア
「望むところよ」
フェルド
『よろしく頼む』
レヴナント
『負けん』
訓練場の空気が変わる。
冗談ではない。
遊びでもない。
これは。
E級への試験だった。
ミリアはヘルメットを被る。
そしてフェルドの背に飛び乗った。
その動きは無駄が無い。
恒一
「慣れてるな」
ミリア
「当たり前でしょ」
恒一もレヴナントへ乗る。
レオンがスタート位置へ案内する。
レオン
「一周」
レオン
「本番と同じだ」
恒一
「了解」
ミリア
「泣かないでよ?」
恒一
「それ俺の台詞な」
ミリア
「言うじゃない」
二人が睨み合う。
ガロンはいない。
レオンだけが静かに見ていた。
レオン
「始めるぞ」
レヴナントが地面を蹴る。
フェルドも身構える。
レオンは腕を振り上げた。
レオン
「――スタート!」
二頭が同時に飛び出した。
新人戦王者。
そして。
E級常連。
その差が今。
明らかになろうとしていた。
― 第三十四話 終 ―




