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第三十三話 E級の洗礼

新人戦優勝から一週間後。


竜のしっぽ亭。


恒一は朝から皿洗いをしていた。


恒一

「何で優勝したのに働いてるんだろうな……」


ガロン

「残り銀貨十枚だからだ」


恒一

「ぐっ……」


ガロン

「手を止めるな」


恒一

「はい」


常連A

「おーい新人戦王者!」


恒一

「その呼び方やめろ」


常連B

「サインくれ」


恒一

「ない」


常連C

「レヴのなら欲しい」


恒一

「俺より人気あるじゃねぇか!」


店内が笑いに包まれる。


新人戦優勝の話題はまだ続いていた。


常連A

「次はE級だな」


恒一

「そうだ」


常連B

「頑張れよ」


常連C

「まぁ新人戦なんて運動会みたいなもんだけどな」


恒一

「え?」


常連C

「ん?」


恒一

「運動会?」


常連A

「新人戦だからな」


常連B

「本番はE級からだぞ」


恒一

「……」


嫌な予感がした。


その時。


店の入口が開く。


レオン

「恒一」


恒一

「来たか」


レオン

「時間だ」


恒一

「E級登録だな」


レオン

「ああ」


ガロン

「行ってこい」


恒一

「仕事は?」


ガロン

「帰ってきてからだ」


恒一

「鬼だ」


ガロン

「働け」


恒一

「はい」


店内が再び笑いに包まれた。



流星竜舎。


レヴナントは既に準備を終えていた。


レヴナント

『遅い』


恒一

「働いてたんだよ」


レヴナント

『働け』


恒一

「お前まで言うな」


レオン

「行くぞ」


三人は王都競走協会へ向かった。


E級登録は思ったより簡単だった。


受付。


書類確認。


新人戦優勝証明。


そして終了。


受付係

「E級登録完了です」


恒一

「こんなもんか」


受付係

「こんなもんです」


恒一

「もっとこう……」


受付係

「何です?」


恒一

「凄そうな演出とか」


受付係

「ありません」


恒一

「ですよね」


協会を出る。


恒一は歩きながら聞いた。


恒一

「E級ってどのくらいいるんだ?」


レオン

「今年だけで二百頭以上」


恒一

「多っ!」


レヴナント

『多いな』


レオン

「新人戦は十二頭だったな」


恒一

「比べるな」


レオン

「比べるぞ」


恒一

「嫌だ」


レオン

「現実だからな」


容赦が無い。


さらにレオンは続けた。


レオン

「E級には色々いる」


恒一

「例えば?」


レオン

「新人戦優勝竜」


恒一

「俺達だな」


レオン

「E級常連」


恒一

「うん」


レオン

「何年も昇級出来ない古参」


恒一

「嫌な響きだな」


レオン

「元D級」


恒一

「は?」


レオン

「飛行が苦手で降級した竜もいる」


恒一

「それE級にいていいのか?」


レオン

「規則上は問題ない」


恒一

「聞きたくなかった」


レヴナント

『強いのか』


レオン

「強い」


レヴナント

『なるほど』


レヴナントの目が少しだけ真剣になる。


流星竜舎へ戻る頃には夕方になっていた。


レオンは事務所から一枚の紙を持ってくる。


レオン

「出走予定表だ」


恒一

「来たか」


レヴナント

『来たな』


恒一は紙を見る。


そして固まった。


恒一

「五番人気?」


レヴナント

『五番人気だな』


新人戦優勝竜。


なのに。


五番人気。


恒一

「低くないか?」


レオン

「妥当だ」


恒一

「何でだよ」


レオン

「飛べないからだ」


恒一

「E級は地上競走だろ?」


レオン

「関係ない」


レオン

「周囲はそう見ない」


恒一

「ぐっ……」


悔しい。


新人戦で勝った。


優勝した。


それでも評価は高くない。


レヴナントは出走表を見つめていた。


そして静かに言った。


レヴナント

『勝てば良い』


恒一

「……だな」


レヴナント

『一着になれば文句は無い』


レオン

「その通りだ」


恒一は笑った。


そうだ。


悔しいなら勝てば良い。


その時だった。


レオンがもう一枚の紙を差し出す。


レオン

「その前にだ」


恒一

「ん?」


レオン

「練習相手を呼んだ」


恒一

「練習相手?」


レヴナント

『強いのか』


レオン

「ああ」


レオン

「E級常連だ」


恒一

「へぇ」


レオン

「明日来る」


恒一

「男か?」


レオン

「女だ」


恒一

「へ?」


レヴナント

『へ?』


レオン

「勝気でうるさい」


恒一

「嫌な予感しかしない」


レオン

「俺もだ」


レヴナント

『同感だ』


新人戦優勝。


だが。


E級はその先にある。


恒一達はまだ知らない。


E級の壁が。


思っていたより高いことを。


― 第三十三話 終 ―

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