第三十一話 祝勝会
新人戦優勝翌日。
流星竜舎。
ガロン
「今日は祝勝会だ!」
恒一
「おお!」
レヴナント
『肉』
恒一
「それしか言わないのか」
ガロン
「竜のしっぽ亭貸切だ!」
恒一
「待て」
ガロン
「何だ」
恒一
「レヴ入らないだろ」
ガロン
「入る」
恒一
「入らない」
ガロン
「入る」
恒一
「だから入らないって」
レオン
「確かに入らんな」
レヴナント
『無理だな』
ガロン
「入る」
恒一
「何その自信」
ガロン
「来れば分かる」
恒一
「嫌な予感しかしない」
そのまま一行は竜のしっぽ亭へ向かった。
そして。
恒一
「……は?」
レオン
「……」
レヴナント
『……』
全員が固まった。
店の裏庭が消えていた。
代わりにあるのは巨大なテラス席。
頑丈そうな木製デッキ。
大型開閉扉。
竜用の水飲み場。
竜用の休憩スペース。
そして。
明らかにレヴナントが入れる広さ。
恒一
「何だこれ」
ガロン
「テラス席だ」
恒一
「見れば分かる」
レオン
「いつ作った」
ガロン
「三週間前」
恒一
「は?」
ガロン
「新人戦出るって聞いた日に決めた」
恒一
「早すぎるだろ」
ガロン
「商機を感じた」
レオン
「最低だな」
ガロン
「最高と言え」
恒一
「いや待て」
恒一
「これ全部レヴのために作ったのか?」
ガロン
「半分はな」
恒一
「半分?」
ガロン
「もう半分は商売だ」
恒一
「やっぱりか」
ガロンは完成したテラス席を見回した。
ガロン
「考えてもみろ」
ガロン
「人気竜が来る宿屋だぞ?」
恒一
「うん」
ガロン
「新人戦優勝竜が来る宿屋だぞ?」
恒一
「うん」
ガロン
「竜騎手も来る」
ガロン
「観光客も来る」
ガロン
「競走ファンも来る」
ガロン
「絶対儲かる」
恒一
「最低だ……」
レオン
「最低だな」
レヴナント
『最低だな』
ガロン
「何でだ!」
恒一
「その発想が先に来るのがだよ!」
ガロン
「商売人だからな!」
レオン
「清々しいほど欲に正直だ」
ガロン
「褒めるな」
レオン
「褒めてない」
その時。
常連Aが笑いながら割って入る。
常連A
「嘘つけ」
ガロン
「何がだ」
常連A
「毎日訓練見に行ってただろ」
常連B
「休みの日もな」
常連C
「レヴが転んだ時なんか一番心配してたぞ」
恒一
「え?」
レオン
「行ってたな」
ガロン
「……」
レヴナント
『本当か?』
ガロン
「たまたまだ」
常連達
「嘘だな」
恒一
「嘘だな」
レオン
「嘘だな」
レヴナント
『嘘だな』
ガロン
「お前らなぁ!」
店中が笑いに包まれた。
レヴナントはゆっくりとテラス席へ入る。
そして。
一番大きな席へ腰を下ろした。
レヴナント
『良い席だ』
ガロン
「主役席だからな」
レヴナント
『悪くない』
恒一
「気に入ったな」
レヴナント
『うむ』
そこへ。
大量の料理が運び込まれる。
肉。
肉。
肉。
そして肉。
レヴナント
『素晴らしい』
恒一
「全部肉じゃねぇか」
ガロン
「主役だからな」
レヴナント
『主役だからな』
ガロン
「ほら見ろ」
恒一
「変なこと覚えさせるな」
宴会は大盛り上がりだった。
新人戦の話。
レースの話。
写真判定の話。
常連達は何度も同じ話で盛り上がる。
ガロン
「ハナ差だぞ!」
常連A
「鳥肌立った!」
常連B
「俺泣いた!」
レヴナント
『俺は勝った』
恒一
「知ってる」
夜も更けた頃。
恒一はふと思い出した。
恒一
「そういえば」
恒一
「次はD級だな!」
レヴナント
『飛行競走だな』
レオン
「違う」
全員
「え?」
レオン
「次はE級だ」
恒一
「あ」
レヴナント
『あ』
ガロン
「あ」
レオン
「忘れてたのか」
恒一
「忘れてた」
レヴナント
『忘れていた』
レオン
「飛べないからな」
レヴナント
『ぐぬぬ』
その時。
店員が一通の手紙を持って来た。
差出人。
アレクシス。
恒一が封を開ける。
『新人戦優勝おめでとう』
『だが私はD級へ進む』
『追いつけるなら追いついてみろ』
恒一
「腹立つな」
レヴナント
『腹立つな』
ガロン
「良いライバルじゃないか」
レオン
「追う目標が出来たな」
レヴナントは夜空を見上げた。
レヴナント
『追いつくぞ』
恒一
「ああ」
恒一
「絶対にな」
新人戦は終わった。
だが。
E級。
D級。
その先の神級競走。
売れ残り黒竜と異世界人の挑戦は。
まだ始まったばかりだった。
― 第三十一話 終 ―




