第二十三話 地上戦特訓
新人戦まで残り十八日。
恒一は一人で考えていた。
レヴナントが眠る竜房の前。
朝日が差し込む静かな時間。
恒一
(封印率九十六パーセント……)
あの日。
神眼に表示された数字。
見間違いではない。
封印状態。
封印率。
そして少しだけ下がった数字。
だが。
解き方が分からない。
何をすればいいのかも分からない。
レヴナント
『朝から難しい顔だな』
恒一
「起きてたのか」
レヴナント
『さっきな』
恒一
「何でもない」
レヴナント
『嘘だな』
恒一
「お前最近鋭くなったな」
レヴナント
『お前が分かりやすいだけだ』
恒一は苦笑した。
神眼のことは話せない。
封印のことも。
今はまだ。
その時だった。
訓練場の方から声が響く。
レオン
「集合だ」
ガロン
「飯食う前にか?」
レオン
「そうだ」
ガロン
「鬼か」
レオン
「違う」
ガロン
「鬼だな」
全員が訓練場へ集まる。
レオンは腕を組んでいた。
レオン
「新人戦まで十八日」
恒一
「もうそんなか」
レヴナント
『早いな』
レオン
「飛行訓練は続ける」
レオン
「だが優先順位を変える」
恒一
「優先順位?」
レオン
「新人戦は地上競走だ」
ガロン
「そうだったな」
レオン
「だから」
レオンはレヴナントを指差した。
レオン
「走れ」
レヴナント
『走る』
レオン
「魔力を脚へ流せ」
レヴナント
『なるほど』
レオン
「飛ぶことは忘れろ」
恒一
「思い切ったな」
レオン
「勝つためだ」
その言葉に全員が頷いた。
新人戦まで時間は少ない。
今必要なのは結果だった。
午前中。
地上訓練が始まった。
スタート。
加速。
減速。
コーナリング。
それをひたすら繰り返す。
レオン
「スタート!」
レヴナントが飛び出す。
以前とは別竜だった。
脚へ魔力を流しながら走る。
地面を蹴る音が重い。
速い。
明らかに速い。
ガロン
「おい」
恒一
「何だ?」
ガロン
「速くないか?」
恒一
「速いな」
レオンも驚いていた。
レオン
「想像以上だな」
レヴナント
『当然だ』
恒一
「偉そうだな」
レヴナント
『事実だからな』
午後。
今度はコーナリング訓練。
レオン
「競走は真っ直ぐ走るだけじゃない」
レオン
「曲がれなければ勝てん」
レヴナント
『分かった』
だが。
ドガッ!
派手に転んだ。
恒一
「おお」
ガロン
「曲がれなかったな」
レヴナント
『地面が悪い』
レオン
「お前だ」
もう一度。
ドガッ!
また転ぶ。
レヴナント
『地面が悪い』
レオン
「お前だ」
恒一
「お前だな」
レヴナント
『味方がいない』
何度も失敗した。
何度も転んだ。
だが。
夕方頃には変わっていた。
レオン
「最後一本!」
レヴナント
『行くぞ!』
スタート。
加速。
第一コーナー。
今度は転ばない。
第二コーナー。
綺麗に抜ける。
第三。
第四。
そして直線。
レヴナントが駆け抜けた。
レオン
「……」
ガロン
「……」
恒一
「どうだ?」
レオンは少し考えた。
そして。
レオン
「速い」
ガロン
「速いな」
レオン
「いや」
レオン
「かなり速い」
レヴナント
『当然だ』
恒一
「そればっかりだな」
だが。
恒一も感じていた。
レヴナントは確実に強くなっている。
飛行はまだ無理。
封印も解けない。
過去の謎も分からない。
それでも。
目の前の相棒は前へ進んでいる。
それだけは確かだった。
訓練終了後。
恒一は神眼を発動する。
【レヴナント】
速度:B
持久力:C
成長率:SSS
飛行適性:???
魔力操作:F
恒一
(もうBか……)
新人戦レベルなら十分戦える。
だが。
その時。
視線を感じた。
振り返る。
遠く。
竜舎の入り口。
アレクシスとシルヴァリオンが立っていた。
シルヴァリオン
『速くなったな』
レヴナント
『少しだけな』
アレクシス
「成長しているな」
恒一
「見学か?」
アレクシス
「偵察だ」
ガロン
「堂々と言ったぞ」
アレクシスは笑う。
だが余裕は崩れない。
恒一は神眼を向ける。
【シルヴァリオン】
速度:A
持久力:B
飛行適性:A
魔力操作:A
恒一
(まだ差があるな……)
新人戦最大の本命。
やはり強い。
レヴナントもシルヴァリオンを見つめていた。
シルヴァリオン
『新人戦で会おう』
レヴナント
『ああ』
シルヴァリオン
『楽しみにしている』
新人戦まで残り十八日。
封印の謎はまだ遠い。
だが。
最初の戦いは確実に近付いていた。
― 第二十三話 終 ―




