第十七話 地獄の魔力訓練
新人戦まで残り二十四日。
恒一は嫌な予感で目が覚めた。
嫌な予感はよく当たる。
特にレオンが笑った翌日は。
訓練場へ着くと。
そこには大量の木樽が並んでいた。
恒一
「何これ」
ガロン
「墓場」
恒一
「帰る」
レオン
「帰るな」
レヴナント
『賛成だ』
レオン
「お前もだ」
二人は揃ってため息を吐いた。
レオンは木樽を指差す。
レオン
「魔力は筋肉と同じだ」
恒一
「ほう」
レオン
「使わなければ育たない」
恒一
「ほう」
レオン
「だから使う」
恒一
「嫌な流れだな」
レオン
「まずはこれを運べ」
恒一
「木樽?」
レオン
「魔力樽だ」
ガロン
「昔は俺もやったな」
レオン
「魔力を流しながら運ぶ」
恒一
「魔力が分からないんだが」
レオン
「感じろ」
恒一
「またそれか!」
午前中。
恒一は木樽を抱えて訓練場を走らされた。
一本。
二本。
三本。
十本。
二十本。
恒一
「死ぬ……」
ガロン
「まだ午前だぞ」
恒一
「帰りたい……」
レヴナント
『情けない』
恒一
「お前は何してる」
レヴナント
『走っている』
振り向く。
レヴナントは巨大な丸太を引きながら走っていた。
恒一
「お前の方が大変じゃねぇか」
レヴナント
『そうでもない』
恒一
「強がるな」
レヴナント
『バレたか』
昼頃。
ついに事件が起きた。
恒一
「うおおおお!」
木樽を抱えた瞬間。
掌が熱くなった。
レオン
「止まるな!」
恒一
「熱い!」
レオン
「そのままだ!」
ガロン
「来たか!」
恒一の掌から淡い青白い光が漏れる。
木樽が僅かに軽くなった。
恒一
「え?」
レオン
「それだ!」
恒一
「今の何!?」
レオン
「魔力だ!」
恒一
「おお!」
ガロン
「おめでとう」
恒一
「おおおお!」
ガロン
「単純だな」
レヴナント
『単純だな』
恒一
「うるさい」
午後。
今度はレヴナントの番だった。
レオン
「魔力を翼へ流せ」
レヴナント
『どうやって』
レオン
「感じろ」
レヴナント
『雑だな』
恒一
「気持ちは分かる」
レオン
「お前は出来たんだから黙れ」
レヴナントは目を閉じる。
じっと集中する。
しばらく沈黙。
その時だった。
レヴナントの身体を青白い光が流れる。
翼へ向かって。
ゆっくりと。
レオン
「来たぞ!」
ガロン
「おお!」
恒一
「レヴ!」
レヴナント
『何か熱い』
次の瞬間。
バサッ!
翼が大きく広がる。
風が吹き抜ける。
そして。
フワリ。
レヴナントの前脚が浮いた。
恒一
「浮いた!」
ガロン
「また浮いた!」
レオン
「続けろ!」
レヴナント
『おおおおお!?』
しかし。
ドゴン!
盛大に転んだ。
恒一
「惜しい!」
レヴナント
『痛い!』
ガロン
「いつものだな」
レオン
「いつものだな」
だが全員笑っていた。
昨日まで出来なかった。
今日は出来た。
それだけで十分だった。
夕方。
訓練終了。
恒一はレヴナントの隣へ座る。
恒一
「進歩したな」
レヴナント
『少しだけな』
恒一
「飛べそうか?」
レヴナント
『分からん』
恒一
「正直だな」
レヴナント
『お前ほどではない』
恒一
「最近それ多いな」
二人は笑う。
その時だった。
神眼が発動する。
【レヴナント】
速度:D
持久力:D
成長率:SSS
飛行適性:???
魔力操作:F
恒一
(上がった)
初めて表示が変わった。
未習得だった魔力操作がFになっている。
そして。
一瞬だけ。
その下に新しい文字が現れる。
【封印状態】
恒一
(封印?)
思わず目を見開く。
だが次の瞬間には消えていた。
見間違いだったのか。
それとも。
レヴナントは空を見上げていた。
夕焼けの空。
その瞳は。
どこか懐かしいものを見るようだった。
新人戦まで残り二十四日。
レヴナントの秘密は。
少しずつ姿を現し始めていた。
― 第十七話 終 ―




