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第十五話 飛べない理由②

レヴナントが浮いた翌日。


流星竜舎は朝から騒がしかった。


ガロン

「飛んだんだよな?」


恒一

「浮いた」


ガロン

「飛んだんだよな?」


恒一

「浮いた」


ガロン

「同じだろ」


レオン

「違う」


ガロン

「違うのか?」


レオン

「全然違う」


レオンは珍しく真剣だった。


昨日の出来事を何度も思い返しているようだった。


レオン

「だが一つだけ分かった」


恒一

「何がです?」


レオン

「レヴナントは飛べない竜じゃない」


レオン

「飛べるはずの竜だ」


恒一とレヴナントは顔を見合わせた。


レヴナント

『飛べるなら飛んでいる』


恒一

「それはそう」


レオン

「だから原因を探す」


レオン

「今日の訓練は中止だ」


ガロン

「珍しいな」


レオン

「訓練しても意味がない」


レオン

「原因が分からんからな」


その日。


レオンは朝からレヴナントを調べ続けた。


翼。


筋肉。


骨格。


呼吸。


血流。


体重。


ありとあらゆる部分を確認する。


だが異常は見つからない。


昼過ぎ。


レオンは大きく息を吐いた。


レオン

「身体は問題ない」


ガロン

「じゃあ何で飛べない」


レオン

「……」


レオンは黙った。


何かを考えている。


そして。


突然。


レオンの表情が変わった。


レオン

「そういうことか」


恒一

「分かったんですか?」


レヴナント

『飛べるのか?』


レオン

「飛べる」


レオン

「だが今のままじゃ無理だ」


恒一

「どういうことです?」


レオン

「お前ら」


レオン

「魔力操作は出来るか?」


沈黙。


恒一

「魔力操作?」


レヴナント

『魔力操作?』


レオン

「……」


ガロン

「あー」


レオンは頭を抱えた。


レオン

「知らないのか」


恒一

「知らない」


レヴナント

『知らない』


レオン

「お前ら本当に何も知らんな」


ガロン

「まぁ片方は異世界人だし」


レオン

「何だそれ」


恒一

「気にしないでください」


レオン

「気になる」


レオンは深いため息を吐いた。


そして地面に棒で絵を描き始める。


竜の絵。


翼の絵。


そして線。


レオン

「竜は翼だけで飛んでいる訳じゃない」


恒一

「違うのか?」


レオン

「違う」


レオン

「魔力だ」


レヴナント

『魔力』


レオン

「体内の魔力を翼へ流す」


レオン

「それで初めて飛べる」


恒一

「へぇ」


レヴナント

『へぇ』


レオン

「へぇじゃない」


レオン

「常識だ」


恒一

「知らなかった」


レヴナント

『知らなかった』


レオン

「だろうな」


レオンはさらに説明を続ける。


レオン

「そして竜騎手も同じだ」


恒一

「俺も?」


レオン

「手綱は魔導具だ」


レオン

「竜騎手は魔力を流して竜を補助する」


恒一

「そんなことしてたのか」


レオン

「普通は知ってる」


ガロン

「普通はな」


恒一とレヴナントは顔を見合わせた。


恒一

「つまり」


レヴナント

『つまり』


恒一

「俺達」


レヴナント

『俺達』


二人同時に言った。


恒一

「何も知らない?」


レヴナント

『何も知らない』


レオン

「その通りだ」


ガロンが腹を抱えて笑い始めた。


ガロン

「ははははは!」


ガロン

「飛べない竜と!」


ガロン

「魔力使えない竜騎手か!」


恒一

「笑うな!」


レヴナント

『笑うな』


ガロン

「無理だ!」


その日の訓練は魔力操作になった。


レオン

「まず魔力を感じろ」


恒一

「どうやって」


レオン

「感じろ」


恒一

「説明が雑だな」


レオン

「感じろ」


レヴナント

『感じろ』


恒一

「お前まで言うな」


夕方まで続けた。


だが。


何も分からない。


魔力の「ま」の字も分からない。


恒一

「無理だろこれ」


レヴナント

『無理だな』


レオン

「無理じゃない」


レオン

「俺も最初は出来なかった」


ガロン

「珍しく優しいな」


レオン

「事実だ」


レオンは空を見上げた。


レオン

「だが」


レオン

「飛べるようになる」


レオン

「お前も」


レオンはレヴナントを見る。


レオン

「お前もな」


レヴナントは静かに空を見上げた。


夕焼けに染まる空。


まだ遠い。


だが。


昨日より近い気がした。


その時だった。


恒一の神眼が反応する。


【レヴナント】


速度:D


持久力:D


成長率:SSS


飛行適性:???


【魔力操作:未習得】


恒一

(魔力操作……)


さらに。


自分自身を見る。


【神崎恒一】


魔力量:測定不能


魔力操作:未習得


恒一

(え?)


思わず固まる。


魔力量。


測定不能。


レヴナントと同じ表示だった。


だが次の瞬間には消えていた。


恒一は黙って空を見上げる。


レヴナントは知らない。


レオンも知らない。


ガロンも知らない。


だが。


何かが始まっている。


そんな気がした。


新人戦まで残り二十六日。


レヴナントと恒一は。


ようやくスタートラインに立った。


― 第十五話 終 ―

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