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第十三話 飛べない理由

GD天空王杯から三日後。


竜のしっぽ亭。


昼時。


ガロンはカウンターに突っ伏していた。


恒一

「どうした?」


ガロン

「聞くな……」


恒一

「まだ引きずってるのか」


ガロン

「全部消えたんだぞ……」


恒一

「自業自得だろ」


ガロン

「お前のせいでもある」


恒一

「なんでだよ」


ガロン

「グレイファングなんか買えるか!」


恒一

「買えよ!」


ガロン

「結果論だ!」


レオン

「うるさい」


いつの間にか昼飯を食べていたレオンが呆れた顔をしていた。


ガロン

「お前は勝ったじゃねぇか」


レオン

「少しな」


ガロン

「複勝はずるい」


レオン

「堅実と言え」


恒一は笑った。


いつもの光景になりつつあった。


だが。


レオンはスープを飲み終えると真面目な顔になる。


レオン

「今日からだ」


恒一

「何がです?」


レオン

「新人戦登録」


恒一

「あ」


ガロン

「忘れてたな」


恒一

「少しだけ」


レオン

「少しじゃない」


午後。


王都新人競走協会。


新人戦登録所。


受付嬢

「竜主名をどうぞ」


恒一

「神崎恒一」


受付嬢

「出走竜名は?」


恒一

「レヴナント」


受付嬢

「竜騎手名は?」


恒一

「神崎恒一です」


受付嬢

「ご本人が竜騎手を務めるのですね」


恒一

「はい」


受付嬢

「登録完了しました」


書類へ判が押される。


その瞬間。


神崎恒一とレヴナントは正式に新人戦出走資格を得た。


恒一

「よし」


ガロン

「おめでとう」


レオン

「まだ始まっただけだ」


流星竜舎。


訓練場。


レオンは腕を組んでいた。


レオン

「新人戦まで一か月」


恒一

「意外と近いな」


レオン

「近い」


レオン

「だから今日から本格的に始める」


恒一

「おう!」


レオン

「飛ぶぞ」


恒一

「おう!」


レヴナント

『無理だ』


恒一

「おう?」


レオン

「おう?じゃない」


訓練場の端。


飛行訓練用の滑走路。


恒一は初めて見る設備だった。


レオン

「新人戦は地上競走だ」


レオン

「だがD級を目指すなら飛行は避けられん」


恒一

「分かってる」


レオン

「なら飛べ」


レヴナント

『分からん』


レオン

「翼を使え」


レヴナント

『分からん』


レオン

「羽ばたけ」


レヴナント

『分からん』


レオン

「なんでだ!」


レヴナント

『飛んだことがない』


レオンは頭を抱えた。


恒一

「気持ちは分かる」


レオン

「分からん」


それでも訓練は始まる。


走る。


翼を広げる。


走る。


翼を広げる。


何度も繰り返す。


しかし。


浮かない。


一ミリも。


ガロン

「地面と仲良しだな」


レヴナント

『仲良しだ』


恒一

「認めるな」


夕方。


十数回目の挑戦。


結果は同じだった。


レオンはレヴナントの翼を触る。


筋肉。


骨格。


関節。


すべて確認する。


そして眉をひそめた。


レオン

「おかしい」


恒一

「何がです?」


レオン

「飛べない竜の身体じゃない」


恒一

「え?」


レオン

「翼の筋肉は十分」


レオン

「骨格も問題ない」


レオン

「体重も軽い」


レオン

「なのに飛べない」


ガロン

「欠陥じゃなかったのか?」


レオン

「分からん」


レヴナント本人も首を傾げている。


レヴナント

『飛べないものは飛べない』


レオン

「それが分からん」


日が沈み始める。


今日の訓練は終了だった。


恒一はレヴナントの首を撫でる。


恒一

「焦るな」


レヴナント

『焦ってない』


恒一

「本当か?」


レヴナント

『少しだけ焦っている』


恒一

「正直だな」


レヴナント

『お前ほどじゃない』


恒一

「なんだそれ」


二人は少し笑った。


その時だった。


神眼が発動する。


【レヴナント】


速度:E


持久力:E


成長率:SSS


飛行適性:???


恒一

(またか)


ここまではいつも通り。


だが次の瞬間。


文字が揺れた。


飛行適性:???



飛行適性:SSS



飛行適性:測定不能



飛行適性:???


一瞬だった。


恒一

「え……?」


思わず声が漏れる。


レオン

「どうした?」


恒一

「いや……」


言えない。


神眼のことは誰にも言えない。


だが確信した。


レヴナントは飛べない竜じゃない。


何かがおかしい。


何かが隠されている。


そしてそれは。


誰も気付いていない。


レヴナント本人ですら。


夕日に照らされながら。


レヴナントは空を見上げていた。


まるで。


そこへ行く方法を思い出そうとしているかのように。


― 第十三話 終 ―

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