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エピソード8 余裕の撤退
僕は、慎重にあたりをうかがう。妖魔以外には誰もいない。それは確実だ。つまり、それは最悪の状況ではないということだ。今から僕がすることを見ている人はいないということだから。
僕は、何事もないように落ち着いて後ろに下がっていきながら、静かな声で言った。
「今は勝ち誇っているといい。いずれ吠えづらをかかせてやるからね」
そして、僕は後ろを向いてその場から走り去った。
本気で走る僕に追いつける者はそうはいない。退魔術を使わなくても、僕には生来の運動能力がある。退魔士学園でも、僕は鍛錬をさぼりがちだったが、短距離走でも長距離走でも本気を出せば学年のトップだった。そんな僕を後輩の子たちは憧れの目で見ていたものだ。
僕は走りながら後ろを振り向いた。妖魔たちは、僕を追いかける気はないらしく、変な声を上げながら僕を見送っていた。僕はほっとしつつも、余裕の笑顔を妖魔に見せつけ、言った。
「君たち程度じゃ僕は倒せないよ。残念だったね」




