エピソード9 詠唱
そんな感じで妖魔には余裕を見せたものの、さすがの僕でも妖魔を倒せる攻撃方法が無いのはやばい。妖魔の王との戦いどころではない。僕の命にも関わる。
そこで、僕が思い出したのが、僕が「倉庫」と呼んでいる魔道具の収蔵場所だ。僕ぐらいになると、退魔士の上層部には言えないような魔道具もいくつか入手している。言えないというか、言ってもいいんだが、もしそうすると没収されてしまうようなヤバいブツだ。
そのようなものは、上層部に渡ったとしても、死蔵されるだけだろう。であれば、僕が管理した方が安全だろうし僕が使ってあげた方がいい。そう思い、上層部にばれないように、僕は拠点にしている街の近くの森の中に秘密の保管場所を作っていた。
幸い、僕の転生した場所は僕の倉庫からそう遠くない所だった。やると決めたらすぐにやるのが僕のスタイルだ。僕はすぐに倉庫に移動することにした。
約3時間後、日もだいぶ陰ってきたころに僕は倉庫に到着した。森の中の大きな木の根元に僕の倉庫への入口がある。もちろん入口は偽装されており、退魔術の心得のない者には入口を開ける事はおろか、入口の存在に気付くこともできない。
僕は木の下の地面を向いて立ち、言葉に魔力を込めて言った。
「我は運命の明星、天頂に輝く天魁の輝きなり。闇のざわめきの中の漆黒よ。そなたの永遠の王にして刹那の輝きたる偉大なる我が汝に命ず。我が前にその衣を脱ぎ、輝く巨星にさらなる輝きを与えるその漆黒への道を我が前に示せ」
すると、地面に地下室に降りるための入り口が姿を現した。これは、退魔術の1つで、言葉に魔力を込めると言葉ごとに異なる波長の魔力となる性質を利用した隠蔽術だ。まあ、普通の腕の退魔士であれば簡単に使えるが、詠唱を知らずに隠蔽を解くのはそれほど容易ではない。
ちなみにこの詠唱だが、知っているのは僕以外にはチームメンバーに選んだ教え子たちだけだ。教え子たちには、長い、星とか我が多すぎる、覚えられないとさんざんに言われたが、「僕が君たちの星ってことさ」と言ったらため息をつかれた。とはいうものの、この程度の長さの詠唱を覚えられないようでは一人前の退魔士にはなれない。だから教え子たちには無理やり覚えさせた。
まあ、僕のチームメンバーや教え子ならこれぐらいはやってくれないとね。




