エピソード7 妖魔との遭遇
僕は素早くそちらを向いて、両手を交差させるようにそちらに向けて構えた。音がしたところでは、空間がゆがむように赤茶色のチリみたいなものの流れが生まれていた。これは、妖魔が発生する兆しだ。
そして、その赤茶色の霧の中から、体の下半分が無い上半身だけの犬が3頭生まれた。空中に浮いているそいつらは、こちらを睨んで大きな声で吠えた。
「なんだ、雑魚か。今はおまえらの相手をしている暇は無いんだよ」
とつぶやいてみたが、実際のところ、余裕は無い。なんど目を凝らしても、魔力の流れは見えない。やはり僕の力は封印されているようだ。一縷の希望を込めて、攻撃の技も使ってみる。
「退魔術“正雀”」
だが、やはり術は発動しない。妖魔たちは、馬鹿にしたような表情で僕の方を見ながらふわふわ浮いている。
というかむかつく顔だな。僕にそんな顔を向ける奴なんていなかった。退魔士だろうと妖魔だろうと嫌悪感を向ける奴はいても、それは常に畏れのような感情も伴う物だった。
こいつらには思い知らせてやるべきだな。そうは思ったが、その手段は無い。普通の退魔士は、様々な魔道具を使って戦うが、僕はいつも手ぶらだ。なにしろ、どんな魔道具よりも強力な退魔術を持って生まれてきている。才能がその辺の退魔士とは違うのだ。
だが、才能の違いはそれとして、今の僕はその退魔術を封印されてしまっている。つまり、今は考えている以上に悪い状況かもしれない。




