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ジェネシス・オブ・アイランドー天神七代記ー視えない私の神攻略  作者: 梵天丸(ぼんてんまる)
第壱ノ世界 コモリク 未だ天地開闢は起こらず

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国之常立神 参

 「一つ試したいことがあります」

 「なに?」

 「左右に分かれましょう。これまでずっと一直線で戦ってきた。あの神はそれに慣れている。だから崩します」

 

 サクヤが息を吐いた。

 

 「……やってみよう」

 

 私は右へ。サクヤは左へ。

 国之常立神が私を見た。次にサクヤを見た。

 標的を定めかねているのか、わずかに動きが止まる。

 

 今だ。


 「行きます!」

 

 私は正面から踏み込んだ。神の注意を引きつけながら、脇腹へ薙刀を叩き込む。

 

 ガギン!

 

 同時に、左側からドンッ、ドンッとサクヤが撃つ。

 側面からの銃撃が、巨大な肩口に連続で命中した。


 「効いてる!」

 

 ダメージエフェクトが連続で弾けた。これまでより大きな数字だ。 

 

 右腕が迫る。

 低く潜り、その剛腕を躱す。


 しかし、潜った先に巨大な膝が迫ってきた。

 

「っ!」

 

 反射的に薙刀を間に滑り込ませて、なんとか直撃は免れる。

 それでもなお衝撃は止まらず、私の体を容易に吹き飛ばす。

 

 ドォン!

 

 エコーロケーションが激しく揺らぐ。

 HPが残り一割を切った。

 

 「カナデちゃん!!」

 「大丈夫……です……!」

 

 大丈夫じゃない。でも止まれない。

 今度はサクヤへと向きを変えた。

 その瞬間、私の頭に一つの考えが浮かんだ。

 

 (……もう、距離を取る必要はない)


 「サクヤさん!」


 私は力一杯に叫ぶ。


 「なに!?」

 

 「これじゃあ、一対一と変わりません。二人で一気に間合いを詰めて、近接で二対一を作りましょう!」

 「近接って、俺これでも十分近づいてるんだけど!?」


 遠距離からの攻撃をやめたと言っても、サクヤはあくまで後衛だ。

 現状、近接とまではいかないものの、中間距離でダメージを与えてくれている。


 しかし、それでは手数が足りない。

 国之常立神が、私かサクヤか片方に照準を定めたら止められない。


 なら、いっそ二人纏めて超近接で攻めれば、あいつは私とサクヤの攻撃を同時に捌くことになる。


 危険は百も承知だ。

 だけど、今はリスクを取らなければ勝てる相手ではない。


 「もっと、もっと近づいてください。私と同じくらい!」


 一瞬の沈黙。


 「……あーもう、わかったよ」


 サクヤは頭を掻きむしりながら、愛銃をストレージへと戻す。

 そして、代わりに二丁の拳銃を両の手に宿す。


 「じゃあ、カナデちゃんと心中と行こうか」

 

 サクヤが二丁拳銃を構えたまま、低く呟いた。

 私たちは同時に動いた。

 

 四メートルの巨体私たちの意図を察知したのか、両腕を高く振り上げる。

 右腕が私へ。左腕がサクヤへ。

 

 右腕の内側へ、体ごと飛び込んだ。

 腕が頭上を通り過ぎる轟音が、耳の真横で炸裂する。

 そのまま止まらない。神の脇腹へ、薙刀を水平に薙ぎ払う。

 

 ガギィン!!

 

 同時に左側で。


 「ダブル・タップ!!」

 

 サクヤが左腕を紙一重で躱しながら、神の同一箇所へ二発を瞬時に叩き込んだ。

 乾いた轟音が二発、重なって響く。

 神の左肩口が、連続のダメージエフェクトで弾け散る。


 「六十パーセント!!」

 

 削れている。これまでとは比較にならない速度で。

 だが神も黙っていなかった。

 

 右腕が払われた。低く潜る。

 左腕が追いかけてくる。右へ流れる。


 神の体が向きを変える。今度は私とサクヤを同時に薙ぎ払おうと、両腕を大きく広げた。


 「っ!」

 「見えてる!」

 

 私は低く潜り、サクヤは宙へ跳んだ。

 両腕が、二人の間の空気を断ち切るように空を切る。

 その隙を、二人同時に逃さなかった。


 「トライスピアー!!」

 「ピアシング・ショット!!」

 

 私の薙刀が胸板を抉る。

 サクヤの銃弾は体を貫通し、内部へとダメージを刻み込む。


 二つのダメージエフェクトが重なって弾け散った。


 「六十五パーセント!!」

 

 神がのけぞった。

 その隙にサクヤが神の背後へ回り込んだ。


 「グラウンド・ゼロ!!」

 

 地面すれすれを這う弾丸が走り、神の足首を正確に撃ち抜く。神の右足がガクリと沈んだ。


 「足が止まった!!」

 

 今だ。

 私は止まらない。神の正面から懐へ飛び込む。

 胸板へ、脇腹へ、肩口へ。引き戻しざまに逆側。また返す。また叩く。

 

 ガギン、ガギン、ガギィン!!

 

 ダメージエフェクトが連続で弾け散る。

 足を止められた神が、上半身だけで私を捉えようとしてくる。

 右腕が迫る。躱す。左腕が追いかける。薙刀の柄で受け流す。衝撃が両腕を走る。痛い。

 

 「バースト・ファイア!!」

 

 サクヤが引き金を引き続ける間、無数の弾丸が神へと降り注ぐ。

 ダメージエフェクトが連続で弾ける。


 「七十パーセント!!」

 

 神がサクヤを狙おうと、向きを変えようとした。


 「こっちです!!」

 

 神の正面へ躍り出る。

 薙刀を大きく振り上げ、胸板へ思いっきり叩きつける。

 

 注意が私へ向いた。その瞬間。

 

 「ヘッドショット!」

 

 後衛とは思えない動きのサクヤが、頭部への精密射撃を叩き込んだ。

 クリティカル補正の乗った弾丸が頭部へ直撃した瞬間、スタン効果が発動した。

 

 神の動きが、一瞬だけ完全に止まった。


 「今だよ!!」


 サクヤの声が虚空に響く。

 

 私は畳み掛けた。

 脇腹。胸板。肩口。引き戻しざまに逆側。

 また返す。また叩く。止まらない。休まない。薙刀が空気を切り裂き続ける。

 

 サクヤも止まらない。

 二丁から放たれる弾丸が、頭部、胸部、肩口と次々と撃ち抜いていく。


 「七十五パーセント!!」

 

 スタン効果が切れた。

 神が動き直した。

 今度は違う。巨体を低く沈め、私とサクヤを同時に押し潰そうと突進してきた。


 「っ、速い!!」

 「カナデちゃん、同時に左足!」

 

 サクヤがそう叫ぶと、弾丸を左足に集中砲火させる。

 神の突進の軌道がわずかにずれた。

 その隙に私は横へ転がり、神の足元へ潜り込む。


 「せあっ!!」

 

 薙刀の切先を左足に突き刺す。

 

 巨躯はバランスを崩し、突進の勢いが殺され、巨体が前のめりになる。


 「カナデちゃん、離れて!!」

 

 私は即座に飛び退いた。


 「グラビティ・ブレット!!」

 

 神の胸部に命中した弾丸が、強力な重力場を発生させた。前のめりになっていた巨体が、重力に引き寄せられるようにさらに前へと引き倒されていく。

 

 立て直そうともがく神の、無防備な背中が完全に晒された。


 「八十パーセント!!ラストスパートだ!!」

 「はい!!」

 

 私は倒れかけた神の背中へ飛びついた。

 巨体をよじ登るように腕を、肩を、駆け上がる。

 その頂点で、薙刀を両手で頭上高く振り上げた。


 「はぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 神の首筋へ、重力を全て乗せた渾身の一撃を叩き込む。

 

 ガギィィィィン!!!!

 

 これまでで最大の手応え。神の体が大きく揺れた。


 「サクヤさん!!!」

 「分かってる!!!」

 

 サクヤが全力で走り込んだ。

 神の正面へ向かって、二丁を構えたまま跳躍する。


 空中で体を半回転させ、あり得ない軌道で神の頭部と同じ高さへ舞い上がる。

 重力を無視したような跳躍で頂点から、二丁を神の頭部へ向けた。


 「クリティカル・バレット!!!!」


 ドフゥゥゥゥゥン!!!!

 

 二丁から同時に放たれた、渾身の二発が、神の頭部を左右から挟み撃つように炸裂した。

 

 光が弾けた。

 私には見えない光だ。

 でも、その熱が肌に伝わってくる。衝撃波が全身を押し流す。

 神の背中から私が弾き飛ばされる。空中で体を捻り、着地する。

 

 世界の始まりを司った神の巨体が、ゆっくりと傾いていった。

 前へ。さらに前へ。止まらない。

 

 ドォォォォン!!!!

 

 四メートルの巨体が、最果ての秘境の地面に叩きつけられた。

 地響きが足の裏から全身へと伝わり、エコーロケーションが激しく揺らいだ。

 

 静寂。

 長い、静寂。


 《国之常立神を撃破しました》

 

 《第壱ノ世界『コモリク』の攻略が完了しました》

 

 《新たな世界への道が、開かれます》

 

 システムの声が、秘境に静かに響いた。

 私はその場に膝をついた。

 薙刀が手からこぼれ落ちる。腕が、動かない。


 「……カナデちゃん」

 

 遠くからサクヤの声がした。かすれていて、今にも消えそうだった。


 「……生きてますか」

 「……なんとか」


 しばらく、お互い動けなかった。風も吹かない。音もない。


 神の消えゆく光の中で、私は確かな手応えを感じていた。

 私たちが刻んだ一歩が、新たな神話の幕を開けた。

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