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ジェネシス・オブ・アイランドー天神七代記ー視えない私の神攻略  作者: 梵天丸(ぼんてんまる)
第壱ノ世界 コモリク 未だ天地開闢は起こらず

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国之常立神 弍

 今度は私ではなく、最初からサクヤへ向かって一直線に。

 これまでの作戦なら、私が割り込むところだ。

 だが今回は、割り込まない。


 「サクヤさん!」

 「分かってる!」

 

 サクヤが横へ跳んだ。

 神の右腕が空を切る。

 

 サクヤは着地と同時に銃を構えた。


 「クリティカル・バレット!」

 

 至近距離から放たれた弾丸が、鬼神の脇腹に直撃した。これまでより大きなダメージエフェクトが弾ける。


 「距離が近い方がダメージが出るんだよねえ!」


 私も動いた。

 国之常立神の左側から踏み込む。脇腹へ薙刀を叩き込む。

 

 ガギン!

 

 両腕が痺れる。でも止まらない。

 引き戻しざまに膝関節へ石突を打ち込む。

 敵がわずかに揺れた。

 その瞬間、国之常立神の左腕が横薙ぎに払われた。

 避けきれない。

 

 「っ!」

 

 腹部に直撃した。

 

 ドォン!

 

 衝撃が内臓まで響く。触覚全振りの痛みが、思考を白く塗りつぶそうとする。

 HPが大きく削れた。残り三割。

 でも、倒れない。

 膝が笑う。それでも足を踏ん張る。

 

 (立て。立て。立て)

 

 薙刀を杖のように地面に突き刺し、体を支える。

 後ろからドンッ、ドンッ。

 サクヤが撃ち続けている。

 

 まだ動ける。

 私は薙刀を引き抜き、再び構えた。


 「カナデちゃん!HP!」

 「見てます!続けてください!」

 

 国之常立神が再びサクヤへ向かった。

 今度は私も追いかけない。

 代わりに、背後へ回り込む。

 

 サクヤへ腕を振り下ろす。

 サクヤが横へ転がって躱す。

 直撃は免れたが、衝撃波でHPが削れる。


 「ぐっ……!」

 

 サクヤは即座に立ち上がり、銃を向ける。


 ドンッ、ドンッ、ドンッ。

 

 連続で命中し、ダメージエフェクトが連続で弾けた。

 私も同時に、背後から脚の付け根へ薙刀を叩き込む。

 

 ガギン、ガギン!

 

 国之常立神がわずかによろめいた。


 「十パーセント!」

 

 サクヤの声に力が戻ってきた。

 国之常立神は、今度は私を狙ってくる。


 右腕が振り上がる。大振りだ。

 私は懐へ踏み込んだ。

 腕が頭上を通り過ぎる轟音。

 その隙に、胸板へ薙刀の切先を突き込む。


 左腕が来た。

 避けきれない。


 「っ、ぅ……!」

 

 左肩を直撃された。HPが更に削れる。残り二割を切った。

 

 痛い。

 痛いが、体が勝手に動く。

 触覚が、衝撃の方向を読み取り、その力を利用して体を流す。

 吹き飛ばされながらも、着地の衝撃を最小限に抑える。

 

 エコーロケーションが弾丸を捉えた。

 前へ踏み込む。弾丸が背中を通り過ぎ、鬼神の胸部に命中した。


 「二十パーセント!」

 

 削れている。

 確かに削れている。

 でも私のHPが限界に近い。


 「カナデちゃん、傷薬!」

 「使います!」

 

 走りながらストレージを開き、傷薬を口に放り込む。HPが少し回復した。

 でも、鬼神の攻撃は止まらない。

 

 右腕が来た。

 低く潜る。

 左腕が来た。

 右へ流れる。衝撃波で足元が揺れる。

 

 神は無秩序にサクヤへと向きを変えた。

 私は即座に神の前へ躍り出た。


 「こっちです!」

 

 薙刀を顔面へ向けて思いっきり突き上げる。

 届かない。四メートルの顔面は、私の薙刀では届かない。

 だが、国之常立神の注意が私へ向いた。

 その瞬間、サクヤが叫んだ。


 「スコープ・スナイプ!!」

 

 轟音。

 完全に静止した鬼神の頭部に、渾身の一撃が炸裂した。

 これまでで最大のダメージエフェクト。


 「三十パーセント!折り返した!!」

 

 確かに届いている。

 確かに削れている。

 でも、サクヤのHPは残り一割を切っている。


 「サクヤさん!回復!」

 「もう残ってないって!」

 

 私の手元にもあと一個しかない。


 「受け取って!」

 

 走りながら傷薬を投げる。


 「助かる!」

 

 サクヤが傷薬を飲み込む音がした。

 その一瞬の隙を、神は見逃さない。

 

 サクヤへ向かって地を蹴った。


 「サクヤさん!!」

 

 私も同時に動いた。

 全力で、進路へ飛び込む。

 

 間に合うか。

 間に合わないか。

 

 国之常立神の右腕が、サクヤへ向かって振り下ろされる。

 私はその腕に飛びついた。

 両手で薙刀を腕に絡め、全体重を乗せて軌道をずらす。

 

 ガギィィン!

 

 腕が軋む。骨が折れそうな痛みが走る。

 でも、軌道がわずかにずれた。

 

 ドォン!

 

 腕がサクヤの真横で地面を叩いた。

 クレーターが生まれる。土煙が舞う。

 私は吹き飛ばされた。地面を何度も転がり、なんとか止まる。

 HPが残り一割を切った。


 「カナデちゃん!!」

 「……生きてます……!」

 

 立ち上がれない。膝が地面についたまま動かない。

 それでも、薙刀を握る手だけは離さなかった。


 「カナデちゃん、もう……!」

 「まだです」

 

 私は薙刀を地面に突き立て、それを支えに立ち上がった。

 両腕が痺れている。脚が震えている。

 視界の代わりのエコーロケーションが、激しく揺らいでいる。

 

 それでも、国之常立神はそこにいる。

 HPは残り七十パーセント。

 まだ遠い。

 でも、諦める理由にはならない。


 「サクヤさん」

 「なに」

 「まだ撃てますか」

 「……撃てる」

 「ならまだできます」

 

 私は薙刀を構え直した。

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