↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂乱の【ウエポナー!】  作者: 拝 印篭
離章 因縁と亡霊と戦争の足音
33/35

第28話 親の心子は知らず は嘘!

『おのれ! タザン! おのれ! ガザン! おのれ! シールズの一族め! 可哀想なタマキは薬が無くなれば長くは生きられん! かくなるうえは、貴様らの血でタマキの死出の旅路を飾ってくれる!』


『今の村長には何を言っても無駄だ! タザン! ヌコを連れて王都に逃げろ! そして魔王様に報告するのじゃ! ケッツィオの村人たちは悪くない、全ての元凶はローゼン男爵の野心故だと!』


『親父殿~』


『白々しい! 今更命乞いするか!』


 ぐさり、ぐさり、何度も親父殿の背中を鋭い鎌で抉るように刺すハクロ村長の、嘲笑し、糾弾するうちに、人を捨て、獣そのものになったかのような姿を見て俺は恐れおののいて、我が家で寝ていた一人娘のヌコを抱きかかえ山道を全力で駆け昇って行った。幸い狂ったような村長の姿に腰の引けた他の村人が俺を追ってくることが無かった為に俺は無事に山を越えてアッチラの村までノンストップで行かれた。そして、アッチラに着いたとたんにぶっ倒れて門番の男の家に世話になった。

 着の身着のまま逃げ出した俺は、親父の最期の姿に魘されながらも、アッチラの地頭から路銀を借り受け翌日には王都に向けて出発した。ヌコには詳しい話もしていなかったのだが、何かを察してくれたようで黙って俺に付いてきてくれている。 やがて、途中で商人の馬車に便乗した俺達は十日間程で王都に到着し、魔王様に謁見を求めることが出来たのが、親父が殺されてから二週間後だった。




「……報告、大儀であった。この上は拾った命、だ。今更身分を戻してやる訳にはいかないが、できる限りの融通はしよう。何か希望があれば言ってみよ」


「ありがたき幸せ。つきましては、私と娘二人で暮らせる環境だけあれば、他には何もいりません」


「とはいえ、田舎暮らしとは違い都暮らしは何かと物入りだろう。何か職の当てはあるのか?」


「恐れながら、料理人としてはいささか経験もございます。と、いっても貧乏料理ゆえ魔王様方にお召し上がりいただけるような物は作れませんが……」


「ならば、王都で店でも開いてみるか? 人足税は三年間減免する故その間に足場を築くといい」


「ははぁっ、勿体ないお言葉、誠にありがとうございまする」


 そして、約束通り俺たち親子は、魔王様から下賜された土地に何とか借金して店を建てるとそこで料理屋を始めた。

 当初は、何の売りも無い普通の料理屋だったのだ。当然売上も芳しくはなかったが、なんと、営業中に魔王様が姫様方を連れて食べに来てくれた。最初は王宮の料理人としてスカウトしようと思っていたらしいが、俺の料理をおかわりまでしてくれて、


「こういった料理なら、こういう店で食わなけりゃ野暮ってもんだ。むしろ俺様御用達の看板をやるから、また、たまには食わせてくれよ」


 と、仰っていただき、その場で看板に「魔王御用達」の文字を書き入れて下さった。


 それからは、軌道に乗ってお客の数も増えた。そのうちに、ある人の助言で店を増築し上の階で下宿を始めた。苦労をかけたヌコにもお年頃ということで一人部屋を用意できた。家賃は普通だが、保証金をゼロにして、冒険者にも借りやすい様にしたところ、あっという間に全室埋まった。不労所得はできたものの、建物の強度不足が判明して、その頃からぶくぶくと太りだした俺は上の階では寝ていられなくなった。仕方なく働いて補強工事はしたものの、いまだに店はやばい部分があるのか、何かぶらぶらと安定しない。

 そうして減税措置が切れる頃、税金の払い分がヌコの分だけ不足してしまった。追加の補強工事で現金が出ていった矢先に税金が今年から増える事を失念していた俺のせいである。


 やむなくヌコをドナドナして、税金未払いの冒険者にしてしまった。本人は、


「うちでウエイトレスしてるよりも稼げるにゃ! バンバン稼いで欲しいものはこの手で掴むにゃ!」


 と、言ってくれたが、持たせた武器がペディナイフのような小さな武器だけでは火力不足である。どうしたものか? とは思っていたが、俺が考えるまでもなく自力で新しい武器を工面してきた。とはいえ、魔王様に紹介いただいた新入りの店子から貰ったものらしいので、ここでも俺達は魔王様に救われた訳であり、ますます魔王様に御恩ができたわけである。


 そうして、ヌコも言ってたように、多数の「魔剣」を自力で掴んできたヌコは、二振りを現金化して俺に渡してきた。十二万ドロップの臨時収入は二万を税金として支払ってなお、うちの半年分の売り上げに匹敵する。


「そのお金でうちが居ない間の従業員を雇うといいにゃ! そんで帰ってくる頃にはうちは実家を離れてまたにてぃだにゃ!」 


 と、ほとんど置いていきやがった。まったく、金の使い方がやたらと男前に育ってやがる。まあ、口数が多すぎるのが玉に瑕だがな。


 いずれにしても、娘の言葉に甘えて受け取った金で二人の従業員を雇い、今日から働いて貰うことになっているが、やはり気になるのは、ヌコの旅の行方である。普通に物見遊山なら心配するような事は無いのだが、よりによって行き先が「ケッツィオ」では、俺自身のトラウマも含めてやはり不安で仕方ない。ここ数日は眠りも浅く普段から4時半には起きて仕込みをするのだが、それよりも一時間は早く目が覚めてしまう。今朝もまだ3時過ぎたばかりというのに、寝覚めが悪く寝ていられなくなった。


 大恩ある魔王様だが、この件に関してだけはホント恨んでしまう。なにもヌコじゃなくてもいいじゃないか! 俺もヌコも二度とあそこには戻らないと思っていたのに……



・

・

・


「ん?」


「どうした? ヌコ?」


「いや、おとんがま~たぐじぐじ言ってる気配がしたのにゃ」


「んな、まさか!? 人類はそこまで分かり合えるのか!?」


 うちらは、あの後早めに寝て翌日の日が昇る前にケッツィオに入ろうと計画を立てていたのにゃ。

 そんで、何とかたまちゃんに会って村長が何を考えているのか教えてもらおうと考えているのにゃ。

 草木も眠る丑三つ時という奴だにゃ。正直眠いのにゃが種族スキルのおかげで暗闇でも街道沿いに飛ばすにゃら支障ない程度には見えているので夜でも安心にゃ。

 遺跡でもらった忍装束を初めて装備したのにゃ。トイチさんとかぶってしまったのが難点なのにゃが、まあ、こっちはマフラーもあるし、オシャレ忍者ということで。

 一応、第一目標として、たまちゃん。第二目標として、近所の商店のオナベさん家に侵入するてはずになっているのにゃ。まあ、実際の難易度を考えたら村長の家に忍び込むのは無理があるから、まずオナベさん家が戦略目標にゃ。


「で、そのオナベさんってのは大丈夫なのか? 村に入ったとたんに通報されました! じゃ困るんだからな」


「その点は大丈夫なのにゃ! なぜなら、オナベさんは、女の人なのに男気のある大人物なのにゃ! 余りの男っぷりに村長はじめ、村の男衆はみんなドン引きにゃ。今じゃあ四人のお嫁さんを囲って悠悠自適の暮らしをしているはずにゃ。いや、もっとお嫁さん増えてるかも?」


「大丈夫なのかよ? まあ、少なくとも長い物に巻かれるタイプではなさそうだが……」


 おおおっ! ここにもドン引きの男が一人誕生したにゃ。


「少なくとも、件の商店は周囲の風情に関係なく通常営業中でござったよ。アイスを買い食いしてきたでゴザル」


「塩が無いのにアイスはあるんだ!」


「ケッツィオの名物『ミルクアイスくりん』にゃ。店の裏手で飼ってる牛のミルクで作るのにゃ。お嫁さんの一人が、元冒険者で【氷結の魔女】と呼ばれていたニャ。その人とオナベさんの合体技にゃ!」


「俺様も食いてぇ! なぁ、アイス~!」


 ドロンと、ラダーが化けて自己主張しだしたのにゃ! 頭使う時や、怖い人が近くに居る時は早々に退散するくせに、欲望を丸出しにするときは積極的に来るとか、こいつ、うちらよりよっぽど猫っぽいのにゃ!


「あのなぁ、俺ら観光に来たんじゃないんだぞ! 先ずは、その人と接触していろいろ聞かなきゃならないんだからな!」


「まあ、オナベさんはカワイイ娘が大好きだから、アイスくらい奢ってくれるにゃ。その代り、ラダーも食べられる覚悟がいるかもにゃ!」


 びくっ! として、ラダーが沈黙したにゃ。ふふん。チョロイのにゃ!


「ソ、ソレニシテモ、ソンナ人ト仲良クヤッテイクナンテ、ヌコ様ハ凄イコミュ能力ナンダナァ……」


「うちの初めてのお相手だったからにゃ♡」


「「「!」」」


 いや、にゃにを勘違いしてるのにゃ! 小一時間とっちめてやりたい所だが先をいそがなきゃにゃ。


「いろいろゲームやら遊びを教えてもらったにゃ。昼間の人狼ゲームも、師匠はオナベさんにゃ!」


「……色々計り知れない人みたいだな」


 その通りにゃので、何も言えないのにゃ。


「あと、一時間程で夜明けでゴザルよ。先を急ぐでゴザル!」


 こうして、ギリギリ夜明け前に村近くのほこらで馬車を置いて行くのにゃ。シシャモチャンやキンノホシ(鱒科の美味しい川魚の名前にゃ)は、しっかりした賢い馬にゃので、ゴブやオーク位なら繋がれたままでも蹄で一撃にゃ! いざという時はそのまま馬車に乗って逃げる必要もあるかもにゃ?


「では、村に侵入するでゴザル。拙者が合図したら一気に門を潜り抜けるでゴザル」


 こうして、潜入ミッションがスタートしたのにゃ!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。