第二十二話 「はじめてのぴーんち!」
色々と、問題を抱えながらではあるが、その後も、数回の戦闘の後、現在の作戦区域である古代遺跡D区画に到着した。
「ケンジの為に少し説明すると、この古代遺跡区画内に、ゴブリンが巣を作ってしまったようだ。昨年末にこの区画を発見してから、これまで8000匹以上のゴブリンを始末してきたが、未だ解放の目途が立たない。我々の使命は、ここの奪還であり、この悍ましい生き物の完全駆除である」
とはいえ、昨日の講義を聞いていた範囲では、完全駆除も難しそうである。
ゴブリンの生態は、簡単に言うと、猿山のサルと同じようなものであり、一族を率いるボスの存在が最優先されるようになっている。ただ、サルと違う点は、ゴブリンの繁殖力の問題である。
一匹のメスが繁殖時には、大体6~12匹を同時に生む。そうして、そのメスがボスの所に数十匹単位で侍っているのである。群が観測されると、一回の発情期が来るだけで、1000匹以上の新たな命が生まれてくることとなる。しかも、それが年二回ある。増加を止めるだけでも恐ろしい程経費が嵩む。だからこそ、ほぼ無償に近い形で駆除できる現在の制度となったわけである。
もっとも、今回のこの群は、現在繁殖期を終えて個体数は安定期である。駆除のタイミングとしては打ってつけである上、既に群れの四割近く削ってある。と、いっても、現在駆除されているゴブリンの大半が、ボスに負けながら群を出て行かず外周部でやさぐれていたオスばかりである。こういったオスが、群の外周部で壁となり、中枢であるボスとメスのハーレムや子供を守りながらたまにボスの目を盗んで繁殖の機会を伺っているというのが、典型的なゴブリンの群である。
「つまり、可能なら、群のボスを駆除したい所だが、それには中枢部まで突っ切らなければ不可能だろうというのが、今回の作戦の問題点だ。単純に戦力が足りないこと、そして、群の個体数から想像しても、恐らくボスは相当強いだろうことが予想される。そんな、王国並の群をどうやって駆除するか?」
「ちなみに、推定でどの位の群なんだ?」
「恐らく、これまでに駆除された分、約八千も含めれば、大凡二万匹の群だ」
「それでも、ミミが加入してからは駆除のスピードが大分上がったから、現在潜ってるパーティーで一番の戦績を残しているのはうちのチームだ!」
他に、四つのパーティーが駆除に参加しているらしいが、時間帯が違うため、中で合流することはほぼ無いらしい。この規模の群を相手にするなら、一致団結した方が良いのではなかろうか?
「いや、実は、以前にレイド戦やったことがあるんだが、そこで決定的ミスがあって、他のパーティーと組むことにみんな嫌気がさしてしまったようだ」
「みんな酷いトラウマを背負ってしまってね。ゴブリンの罠に多数決で突っ込んで行ったような展開になったものだから、これなら自分たちだけでやった方がマシという結論に至ってしまったのさ」
うわぁ! 想像しただけで悪手だったようだが、そんな罠を仕掛けるような固体もいるのかよ。
「中枢に行けばかなり強い個体が多くいるのは間違いないところよ。中には魔法を使うものもね」
なんか、本格的に人間並の知能の持ち主なのだなぁ。
「そういえば、ゴール教導官のようなベテランの冒険者は、どうしてこの駆除に参加しないのかな?」
「それは、別の区画、地底湖の方でも、サーベントの大量発生があって、実力者は、そっちの駆除に回っているからさ。あっちは水源に直結しているから全都民の死活問題だしね」
つまり、深刻は深刻でも緊急度が違うという訳か。難儀な話だが、おかげで初心者にも大量の経験値獲得の機会が回ってきたわけだ。
「ところでヌコ、お前のナイフ、刃渡りが短かすぎないか? どうも、その所為でダメージが通らない気がする。なんなら、俺のナイフ使ってみるか?」
「それはありがたいのにゃが、いいのにゃ?」
「魔王様に譲って頂いたものだから、多分いい物だろうと思う。俺は装備できないから、使えるなら使ってくれると助かる」
とは、言ってもスローイングナイフだから、そこまで戦闘向きでも無いんだがな。それでも、刃渡り10センチ位のヌコのナイフよりはマシなはずだ。とりあえず五本貰ったうちの二本を使ってもらう事にして、この先は、もっといい武器を使うべきではなかろうか?
「さて、それでは、準備が整ったら作戦開始だ。まずは、予定通りギリギリまで群れに近づき外周部にいるゴブリンを引き連れて通路上まで誘導する。一直線上に並んだゴブリンにミミの魔法が通ったら残敵掃討を行う。では、作戦開始!」
「「「「了解!」」」」
だが、この時既に俺達は狡猾なゴブリン共の罠に嵌っていたという事実に全く気が付いていなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ファイヤーウォール!」
二倍掛けされた火炎壁の劫火が、憐れにもおびき出された百匹程のゴブリンを焼き尽くす。一先ずは成功といったところである。残敵掃討も、ヌコの戦闘力が当社比で150%増しとなったことで、サクサクと進むようになった。
「これで二周目が完了かな? 魔王様のナイフ、思ってたより良い物だったみたいだな。俺も一本欲しいところだぜ」
「しかし、思ったよりも簡単に釣れるものだな。本当にそんな人間を罠に嵌めるようなゴブリンがいるのかねぇ?」
今にして思うと、この台詞は完全にフリだったなと反省しきりである。しかし、それまでに二百程のゴブリンを退治して、気分は余裕のよっちゃんであった為の増上慢である。こんな時、一人でもベテランがいれば、案外簡単に切り抜けていた程度の罠なのかもしれないが、悲しいかな昨日、今日、潜り始めたばかりのあんちゃんばかりでは、そんな腹芸の騙し合いが出来る筈も無く。
「それにしても、昨日までは百匹倒せば中の一匹、二匹はホブゴブリンが混ざっていたのに、今日はどうしたことだろう」
「なーに、偶々だって。なあ、もう一周できないか? ここで、あと百匹分もあれば、俺の取り分が大分増えて最後のボーナス位にはなるんだよ。ミミ、頼まれてくれないか?」
「うーん、仕方ないわね。散々お世話になったジェイドの門出だしね。よーし、お姉さん頑張っちゃうわよー!」
と、いうことで、再度おびき寄せを試みる。アルバとジェイドが左から、俺とヌコが右から大きく円を描く運動をしてみれば、それにそれぞれ追手がつくという訳だ。そして、それぞれが狭い通路に突入。ここで、二つの追手の群が狭い通路で合わされば、身動き取れないまま通路に詰まってしまう。そこを狙って再度ファイヤーウォールの餌食となるのである。果たして、今回の獲物はいかに?
「あるぅぇええええっ!? ちょ、ちょっとさっきよりも多くなってないかい?」
「不思議にゃ! 敵が7分に雲が3分にゃ!」
だから、どこでそんなネタ拾ってくるんだこの子? いや、それよりももっとヤバいお知らせがある。
今回、追いかけてくるのは、ゴブだけではない。ヌコが言った台詞は文学的表現という奴ではないのだ。
雲の真ん中に顔があるような生き物? も追ってきている。青筋たてながら。
「ギズモだにゃ! 酸の雲にゃから、触ると火傷するにゃ!」
「にゃんだとぉぉぉぉぉぉっ!」
うつった。
「ちょっとこれは拙くないですかぁぁぁぁっ!」
「正直スマン!」
ああ、向こうの二人も追い立てられている。
どうやら俺達の冒険はここまでのようだ。
さらば近藤マッチとデート! 次回をまた、おーたのーしーみーにー♪
「って、簡単にあきらめんじゃないわよ! ダブルブリザァァァァァァド!!」
ミミの魔法がすり抜けてきた俺達と交代にゴブとギズモの群を襲う。カキン! と凍ったギズモはなんかかわいいが、そのまま下のゴブに向けて落ちていく。ぱきん! とギズモの群が粉々に砕けるとその上を凍らなかったゴブたちが進軍してくる。
「なんの! ファイヤーウォール!」
今度は、無事だったゴブを巻き込んで凍ったゴブやギズモも熱膨張で粉みじんである。更に、
「ギズモは燃えやすいにゃ! そんな風に無造作に火をつけたら」
どっかぁぁぁぁぁぁん!!
そりゃ、爆発するよなあ。おかげで追ってきた敵は全滅! 一気に数百のモンスターを駆除するという快挙を成し遂げたミミは、
「ふにゅー!」
一緒に爆風を喰らって俺達諸共吹き飛ばされた。そして、その先には、
「よくも、我が同胞共を虐殺してくれたなあ! 貴様らは、楽には殺さんぞぉぉぉぉぉぉっ!」
怒りに震えるやたらとでかいゴブリンが無数のゴブリンを侍らせていた。
「「「「ゴ、ゴブリンキングだ!!」」」」
俺達は、既に包囲されていた。
この作品は、内容に危険な要素が多数含まれます。
精神的疾患をお持ちの方、心身喪失状態の方、心の弱い方、特に、いじめの経験をお持ちの方にはおすすめいたしません。
この作品は、皆様の愛情と狂気の提供で、活動のエネルギーとさせて頂いております。
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(ただし、執筆スピード、スケジュールについての事は除外します)
しかし、まさかゴブのくせに喋る奴がいるとか、どんだけ~




