第二十話 「はじめての一人暮らし」
こんな危なそうな物件、大丈夫なのかよ?
どうやら、俺の懸念は華麗にスルーされてしまったようだ。そのまま手を引かれ建物に入っていく。
「ただいまー 新しい店子さん連れてきたのにゃ! それも政治物件にゃ!」
すると、厨房で料理をしていたのであろう中年男性が出てきてヌコから袋を受け取った。
「おおおっ! でかしたぞ! ひー、ふー、みー、すっ、すっごいぞっ! 三か月分の家賃が入ってる!」
ヌコから受け取った袋を開いたおっさんは、すげーテンションが上がってきている。
「にゃんと、驚くなかれ、それで十日分にゃ!」
「にゃ! にゃんとぉぉぉぉっ! き、きみぃ! いつまでもいてくれていいんだよぉぉぉぉっ!」
「え、えーと、はじめまして、今日からお世話になるケンジ=クリスです?」
「なぜ疑問形にゃ? こっちがうちのオトン、料理人のタザンて言えば、グリモールじゃちょっとした有名人にゃ!」
「はっはっは! まあ、安飯屋のタザンってことで有名なだけだがね。よく来てくれたよえーと、ケンジ? クリス? どっちが名前?」
「一応、ケンジが名前ですね。クリスがファミリーネームです」
「鮎川宮澤みたいなものにゃ?」
「おいっ! どこでそんなネタを仕込んだんだ? 異世界の住人!」
「?」「?」「?」
ドウシテコンナトコロデミスクミニナツテイルノデショウカ?
「えーと、それで俺はどうすればいいのでしょうか? タザンさん?」
「おおおっといけねぇ! ヌコ! お部屋へ御案内しろ! 判ってるな? 303だぞ」
「了解にゃ! では、行くにゃ!」
「ちょっとまてぇぃ! 手は繋がなくていいだろう!」
父、激昂!
「おっと、これは失礼にゃ!」
うん、やっと突っ込んでくれた。手を繋ぐのはいいのだが、父親の前というのもなぁ。
と、言う訳でやっと部屋へ案内してくれるようだ。階段を上り、二階をスルーして、三階へと上がる。
「ちなみに二階部屋は1.5倍の価格にゃ!」
「じゃあ、俺、二階でもいいんじゃ?」
「は! ピーピーピーピー♪」
「ごまかせてないからな!」
「そのかわり、誰もが入りたいがるVIP室にゃ!」
そのVIPルームとやらの正体は、
「じゃーん! 誰もが入りたがる屋根裏部屋にゃ! しかも、薄い壁一枚向うはウチの部屋! もうすぐ発情期だから、あられもない声が毎日聞き放題にゃ! どうにゃ! 最高の自家発電環境! これでお値段据え置きにゃ!」
「部屋番号……401って書いてあるんだが?」
「なーに、体重オーバーのパパは登ってこれにゃいから鍵さえ見せなきゃ判らないにゃ! それに、夜トイレに行きたい時は好都合にゃ!」
「ああ、この部屋端っこにトイレあるんだ」
「そう! ウチが近くなった時も、誰か部屋に居れば安心」
「一人で行けないのかよっ! ってか、俺の部屋ですんの?」
「そういうわけで、自家発電には最適な環境にゃ!」
「そんな特殊性癖にすんなぁぁぁぁっ!」
「あ、時々見学させてにゃ!」
「させるかぁぁぁぁっ!」
はあはあ、何だ? こんな奴だったのかよ?
「なんなら壁外すにゃ?」
「せんでいい!」
「えええっ! してみたかったんだけどにゃ~。同棲生活。これからの寒くなる時期、同じ布団の中でとか。湯たんぽいらずなのににゃ」
「暖房器具にする気だったな! どうも、話が胡散臭いな。何を企んでいる?」
「もちろん、安定顧客を捕まえて、あわよくば既成事実からの婿養子♡」
「させるかぁぁぁぁっ!」
腕を捕まえに来た所をバックに回ってベッド上にジャーマンスープレックス!
どしーん!! ぷるん、ぷるん、ぷるん!
思った以上の振動ってか、建物が揺れてる?
「ぱっきゃろ――――っ! 建物崩壊さす気かっ!!」
階下からおやっさんのダミ声が! 強度をちょっと舐めてた、反省。
またしてもくるくる目を回し失神したヌコを隣の部屋へ押し込んで、ようやく自分の部屋へ一人となった。
「へっへっへ、遂に手に入れたぞ! 一人部屋!」
夢、だったんだよなぁ…… まさか、こんな形で叶うなんてな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
りんごーん
ああ、どっかで鐘が鳴っている。
いつの間にか寝てた。
そういえば、ここまでのんびりしたのもいつ以来だろうか?
めんどくさいので、もうすこーし
パタン!
「夕飯の時間にゃ! 下に降りてごはんたべようにゃ!」
どうやら、平穏はここまでのようだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一階に降りると、そこは、戦場だった。
テーブル席は、殆ど埋まった状態。中には立ったまま皿を抱えてパスタをすすってる人なんかもいる。 そうかと思うと、中央のテーブルでは、ガロンは入ろうかという大きなジョッキを片手で持って今正に飲み干さんとしている女の人やら、バイキングのようなヘルムを被ったおっさんが、皿ごと口に持って行き一瞬で料理消失のマジックを披露していたりとか、何か、カオスである。その中には知った顔もあった。
「よお! 先に始めておるぞ!」
と、声をかけてくれた御仁は、
「ゴール教導官!」
「ゴールさんは、ここの二階に住んでるにゃ!」
ええええっ! 聞いてないよー!
「朝夕の食事もうちでしてくれるとってもいい人にゃ!」
「がっはっは、タザン殿の料理がいつでも食えてこの価格は我等冒険者の夢! 入りたい奴は引く手数多ぞ! 建物の事さえなけりゃ」
やっぱ、危ない建物なんだ!
「いつか、冒険者として財を成してここを立て直してあげたい、というのが、まあここに住んでる奴らの共通の夢だな。それは、もちろんヌコにしても変わらん」
「まあ、流石にそんだけの金になる仕事となると俺達じゃ無理だがな」
と、さっきのバイキングさんが話に乗ってきた。
「あんたが新しいゴールの生徒かい。あたしらは、ここの二階に住んでるゴールのパーティーメンバーさ。こっちの奴がドンコ、で、あたしが、リーダーのハンナさんだ!」
「今日からここでお世話になります。ケンジ=クリスです。宜しくお願いします」
「うんうん、何号室だい?」
「303だ!」
と、タザンさんが答えたが、そうすると、一同が「「「あぁ……」」」と、ビミョーな顔をしたので、ヌコを問い詰めようとしたら、
「実は303は酔ったハンナさんがはっちゃけた所為で床に大穴が開いてるにゃ! だから住むのは元々むりなんにゃよ」
成程、
「よーし、まかない丼あがったぜ! ヌコ、新入り! 取りに来いや」
タザンさんに呼ばれて厨房へ行く。そこには、トレーに乗せたなんかのどんぶりとビール? がジョッキに注いであった。
「俺ビールは飲めないですけど」
「心配すんな。こいつは水代わりのほ○ぴーってやつだ。アルコールは殆ど入ってない」
まあ、それならと、頂いてみる事にした。ヌコも同じものなので、男としての沽券にも関わるしなぁ。
ゴールさん達のテーブルに呼ばれ、二人で並んで席に着くと、みんながニヤニヤしてる?
「ずいぶんと懐かれてるじゃないかい。あのヌコがねぇ」
「まったくだ。俺達の時は打ち解けるまで一年位かかったのに」
「それは、我らが悪人面だからだ! 同年代のケンジを一緒にしては可哀想というものだぞ、がはは」
な、なんか居たたまれない空気だなぁ。さっさと食べて部屋に戻ろう。と、思って一口箸でたべてみた。 う、う、うまーい!!
表面にたっぷり乗せた白髪ネギは、向うの世界のそれよりも甘く、香りも、くどくない。その下に入っていたのは、なんと、フォアグラ??? そして、味の浸みたご飯にかかるタレは、醤油味とも味噌味ともつかない独特の風味で癖になりそう! しかも、フォアグラだけかと思いきや、中には、数種類のホルモン! しかし、臭みが全く無いな。
「ふっふっふ、これがうちの裏名物、捨てる部位だけで料理にしてしまった【ほうるもん丼】だにゃ!」
「ふっふっふ、一度食べたらもう、味を忘れられず何度も通ってしまうという魔性のメニュー!」
「「ふっふっふ、これでおまえはもう、のがれられぬにゃ!!」」
ドヤ顔の親子がうぜぇー! けど、本当にうまい!
「よーし、新入りを鎖で繋いだところで、新しい住人にかんぱーい!」
「「「「かんぱーい」」」」
店中あちこちで、乾杯の音頭がとられ、どんどんビールが消費されていった。俺もほ○ぴーを飲んでみたが、甘い。何か蜂蜜か、果汁が入っている。これならどんどんいけるぜ!
こうして、宵の口から、結構遅くなるまで宴会は続き、どうやら俺は、歓迎されて仲間に入れてもらえたようだ。
こうして、ホントの意味で異世界一日目が終わった。
明日は早朝からダンジョンである。眠れないかと思ったが、それ以上につかれていたようだ。zzz
この作品は、内容に危険な要素が多数含まれます。
精神的疾患をお持ちの方、心身喪失状態の方、心の弱い方、特に、いじめの経験をお持ちの方にはおすすめいたしません。
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