第2話 三国街道を越えて、幕末の夢の跡
まだ10月も始まったばかりですが、つるべが落ちるが如く、日は落ちて、歩く信濃川は鈍く翳り 冷えてきました。暑がりの私は半袖 半パンで飛び出しましたが、最初は蚊に刺され、最後は川の冷風に追われ、100メートル走のように帰宅しました。散歩道のエッセイご覧ください。
第2話 三国街道を越えて、幕末の夢の跡
彌彦山 苅田を照らす 暮れなゐ
稲を刈り終えた田に、切り株が低く並ぶ。その一本一本の影を、斜めの陽が紅に染めていく。この静けさの山向こうに、幕末の嵐があった。
星に問え 小栗上野 夢の道
勘定奉行・小栗上野介忠順。横須賀製鉄所を興し、日本の近代化を担った男である。慶応四年閏四月、上州権田村に退いた末、烏川の水沼河原で斬られた。裁きらしい裁きもなかった。
世に言う「赤城の埋蔵金」。あれほど掘っても、金は出なかった。掘る山を間違えたのではないか。
小栗には 三国街道 つづれ坂
ここからは史実ではなく、私の推理である。
赤城から北へ向かうなら、厩橋、渋川、沼田を経て三国街道をさかのぼる。上杉謙信が関東へ出兵するたびに越えた、いくさの道だ。
途中、猿が温泉に浸かっていたと伝わる猿ヶ京を抜け、三国峠へ至る。
関所は幕府の目だが、勘定奉行だった小栗にとって、この道は誰よりも手の内にあったはずだ。峠を越えた先の越後には幕府領も多く、雪深い山々は荷を隠すのにも、あるいは密かに再起を期すのにも絶好の地である。
つわものや 星の瞬き 夢の跡
小栗が散り、やがて時代の幕が下りた。
だが、つわものたちが三国峠のつづれ坂の向こうに夢見たものは、単なる黄金ではなく、新しい日本の姿だったのかもしれない。
刈田を照らす夕闇の向こう、峠の星だけが、今もその夢の跡を静かに照らしている。
全2回のエッセイにお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
また次のお散歩で新しい景色に出会えたら、ペンを執りたいと思います。
蛇口を捻ると、冷たい水を感じるようになりました。皆さま、お身体をご自愛下さいませ。 曲木 六円




