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散歩道 俳句を詠んでみました。  作者: あっちゅ寝太郎


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弥彦からの眺望とだいろ山


ふと足をとめれば、そこはかつて文人や歴史の旅人たちが行き交った地。新潟の海沿い、寺泊から弥彦、そして巻へと続く散歩道。

夜の日本海にぽつりと灯る漁火、満天の星々が渚へと流れ落ちるような弥彦山からの夜景、そして地元の呼び名に隠された、どこかユーモラスで哀愁漂う歴史の記憶。

日々の一歩一歩から紡ぎ出された四つの即興句とともに、秋の越後路が持つ独特の空気感を静かにつづる、大人のための散歩エッセイ。

本文

一、 寺泊の夜、影と光の交差点


秋の気配が濃くなると、夜の散歩道はいっそうの静けさをまとう。

私の足が自然と向かうのは、日本海を間近に望む沿岸の道だ。かつて松尾芭蕉が『おくのほそ道』の途上で足を止め、佐渡を望んだとされる寺泊の周辺は、今もどこか独特の詩情を漂わせている。

すっかり日の落ちた漆黒の海を見つめていると、遠くの波間にぽつり、ぽつりとイカ釣り漁船の漁火が揺れ始める。冷たい夜気の中、赤々と、しかしどこか儚げに灯るその光を見つめていると、ふと、かつてこの道を歩んだであろう昔の旅人たちの姿が、心の中に静かな影となって立ち上がってくる。

顔を隠すように深く笠をかぶり、ただ黙々と、それぞれの目的のために夜道をゆく。そんな歴史の幻影と、現代の自分の足音が重なる瞬間の心地よい緊張感を、まずは五七五に留めてみた。


漁火に 二つの編笠 なに歩む


この道をゆく者は、一体何を求めて歩んでいるのだろうか。そんな風雅な問いかけが、波の音に溶けていく。


二、 天空から渚へ流れ落つる光

寺泊からさらに足を伸ばし、弥彦山へと向かう。天気の良い秋の夜、この山頂から見下ろすパノラマは、まさに息をのむ美しさだ。

見上げれば、都会の喧騒からは遠く離れた圧倒的な星空。そして見下ろせば、暗い日本海の海岸線に沿って、街の灯りや遠い光がどこまでも続いている。

空にある星と、地上にある光。その境界がまるで見えなくなるほど澄み切った夜は、まるで夜空の星々がそのまま砂浜を伝って、自分の足元まで流れ込んできているかのような錯覚にとらわれる。星が文字通り、この手ですくえそうなほど近くに感じられるのだ。

芭蕉はここで「天の川」を仰ぎ見たが、現代の私もまた、同じ宇宙の広がりの中に身を置いている。


日本海 砂浜つたう 万の星


大自然が見せる一瞬の、しかし普遍的なきらめき。この壮大な光の絨毯を踏みしめるように、夜の散歩は続いていく。


三、 雷鳴の予感と、小さな「だいろ」の知恵

山の天気は変わりやすい。

つい先ほどまで満天の星空を見上げていたかと思えば、にわかに雲が広がり、遠くの空でゴロゴロと低い音が響き始めることがある。秋の夜の、あのどこか張り詰めた空気の変わり目だ。

これから天候が荒れる、あるいは旅の難所に挑む。そんなとき、昔の旅人ならきっと、足元を確かめるようにキュッと草鞋(わらじ)の紐を締め直したに違いない。静かに紐を締める指先と、天を割るように響き渡る雷鳴の対比。


わらじ締め かみなり響く 寺泊


自然の圧倒的なエネルギーを前に、人間がフッと覚悟を決める瞬間の心地よい硬質さが、そこにはある。

だが、人間はいつも身を強張らせて自然や時代に立ち向かうばかりではない。

弥彦山と並び立つ多宝山。地元では古くから「だいろ山」という愛称で親しまれてきた。だいろ、とはカタツムリのことである。

かつて江戸時代、この地には「巻の代官所」が置かれていた。お上というものは、いつの時代もどこか「鬼の面」のように、庶民にとっては威圧的で、顔色を伺わねばならない存在だったのだろう。

そんな強い権威を前にしたとき、この地の庶民はまさに「だいろ(カタツムリ)」のように、時にはツノを出し、危なくなればサッと殻の中に頭を引っ込めながら、しぶとく、ユーモラスに嵐が過ぎ去るのを待ったのではないか。

山容を見上げながら、その土地の言葉の響きに隠された、クスリと笑えるような、しかし確かな生きる知恵に思いを馳せる。


だいろ山 巻の代官 鬼の面


先人たちの難儀な足跡を辿る旅は、決して暗いものだけではない。そこには、星空を見上げる心の余裕があり、雷鳴に備える覚悟があり、そしてカタツムリのようにしなやかに世を渡る知恵があった。

夜の散歩道を歩き終え、自宅の明かりが見えてくる頃、私の心には、越後の地が持つ豊かで深い物語の余韻が、心地よく広がっている。

あとがき

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

日々の散歩の途中で、ふと目の前の景色と歴史の記憶が重なり、気がつけば四つの句が生まれていました。

私たちの足元にある何気ない道も、かつて誰かが歩み、何かを感じた場所なのだと思うと、いつもの散歩が少しだけ特別な旅のように思えてきます。

皆様の街の散歩道には、どんな歴史や景色が隠されているでしょうか。

また次回の随筆でお会いしましょう。


【ご報告】あっちゅ寝太郎、改め「曲木 六円」です!(頭隠して尻隠さず編)

いつも作品を読んでいただきありがとうございます、曲木(まがき) 六円(ろくえん)です。

以前からアナウンスしていた通り「あっちゅ寝太郎」から名義を変更したのですが……システム上のIDやランキング周りの仕様により、一部で「あっちゅ寝太郎」の尻尾がガッツリはみ出している状態になっております!(⌒▽⌒)

いわゆる「頭隠して尻隠さず」な状態ですが、これもまた一興ということで、当面はこのまま(ハイブリッド名義のような形で)活動を続けてまいります。

「曲木 六円」も「あっちゅ寝太郎」も中身は同一人物ですので、どちらの名前で見かけても、どうぞ変わらずにお付き合いいただけますと幸いです!今後ともよろしくお願いいたします。


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