第2話 越後、秋色の散歩道――柿の朱から信濃川の粉金へ――
日常のふとした歩みのなかで、景色がふわりと色づく瞬間があります。今回は、私が散歩道で出会った秋の気配と、胸の奥にある故郷の情景を、いくつかの俳句とともに二つの物語に仕立てました。パレットから取り出したような青空から、足元の小さな虫たちの知恵まで。深まりゆく秋の空気感を、どうぞご一緒に歩くようにお楽しみください。
【第3話:遥かなる島、秋の天井】
• 染まる空 島へ向こうは いわし雲
さらに歩みを進めると、夕焼けは勢いを増し、空全体をダイナミックなグラデーションで染め上げていく。
視線を遥か彼方、海の方へと向ければ、うっすらと浮かぶ島影が見える。その「島へ向かう」視線のさらにその先、天高くに広がっていたのは、見事な「いわし雲」だった。
空の天井を埋め尽くすように細やかに並んだ雲の群れが、沈みゆく太陽の光を照り返して陰影を深めていく。手前の染まる空から、遠くの島、そして宇宙へと抜けていくような果てしない空の奥行き。秋という季節が持つスケールの大きさと、どこか旅情を誘うような寂寥感が、私の胸を静かに震わせた。
【第4話:大河の終幕、至高のきらめき】
• 眉月や 粉金に染まる 信濃川
散歩道の終着点に待っていたのは、今日という贅沢な一日を締めくくるにふさわしい、圧倒的なクライマックスだった。
日が落ちた直後、紺青へと変わりゆく空に、ぽつりと姿を現したのは細く繊細な「眉月」だ。まるで夜の始まりをそっと告げるかのように、空に凛と掛かっている。
そして、目の前をゆったりと流れる雄大な信濃川の水面を見下ろした瞬間、思わず息をのんだ。傾いた光の粒が、波間にきらきらと溶け込み、まるで細かな金粉を流したかのように、大河全体が「粉金」の色彩に染まり上がっているのだ。
柿の朱から始まり、蘭の白、いわし雲の夕映えを経て、最後にたどり着いた黄金の世界。越後の豊かな自然が織りなす一瞬の美しさをただ真っ直ぐに見つめながら、私は今日も、この足で歩き、この目で出会った景色を言葉に紡ぎ続けている。
ご一読いただきありがとうございました。日々の歩みのなかで紡いだ言葉たちが、どなたかの心に届き、小さな道標となれば幸いです。




