第二話 完 泡盛と紫煙の夜に、羽虫は何語を語るか
秋の夜長、手元にくゆらす煙草の火と、お気に入りの泡盛。
独り呑む酒の酔いの中で、男は身の回りの小さな命や、遠く離れた旧友、そしてかつて共に過ごした愛猫へと想いを馳せる。
言葉の通じない彼らと、言葉でしか繋がれない人間たち。
一晩の酔いが生み出した六つの即興句と、それを朝の光の中で振り返る、静かな大人の日常エッセイ。
【第2話】(後編)
:友の鼻水と、天窓のミケ
泡盛のグラスを傾けながら、手帳のカレンダーに目を落とす。
来月は、待ちに待った同窓会だ。
あいつらは今、どうしているだろう。かつて同じ学び舎で馬鹿なことを言い合っていた仲間たち。羽虫とすら言葉を通わせたいと願う夜だからこそ、なおさら「あいつら」の不格好な顔が懐かしく思い出される。
何想い 鼻水垂れし 友の会
寒空の下、何を深く考えているのかと思えば、鼻水を垂らしているような、そんな愛すべき格好悪さを持った友人たち。お互いの弱さも間抜けさも笑い合える「友の会」の時間が、もうすぐそこまで迫っている。
酒のグラスを置き、布団に潜り込む。
ふと天井の天窓を見上げると、そこから細い月明かりが差し込んでいた。その光の梯子を見つめていると、胸の奥から温かい記憶が込み上げてくる。
光さし 天窓見上げ ミケ想う
言葉は通じなかったけれど、確かに私の傍にいてくれた愛猫のミケ。あの天窓から差し込む光の向こうで、今も気まぐれに毛繕いでもしているだろうか。虫や、友や、ミケ。言葉を超えて繋がり合う愛おしいものたちの気配に包まれながら、私は深い眠りに落ちた。
◇
翌朝、目が覚めて、澄んだ光の中で昨夜の記憶をなぞっている。
泡盛の酔いの中で紡いだ言葉たちは、今朝の私に、どこか優しい余韻を残してくれている。来月の同窓会には、どんな手土産を持って行こうか。そんなことを考えながら、新しい朝の珈琲を淹れている。
(終)
【後書き】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
日常のふとした歩みのなかで見つける季節の移り変わりを、五・七・五の調べに乗せてお届けしました。みなさまの心にも、それぞれの秋の景色が浮かんだなら幸いです。




