声に出ない
「もう大丈夫だから」
「ほんとに?」
俺は念の為ここ数日部屋で休まされていた。
その間ノエルはずっと一緒に居てくれた。
「ずっと部屋に篭もりっぱなしも飽きたし。
それに封印解かれた時から言ってるけど、本当に何も無いんだってば」
「……嘘はついてないみたいだね」
「だから何度もそう言ってるだろ」
「じゃあお散歩しよっか」
水の中にあるせいか秋のように涼しく、過ごしやすい気候だ。
庭にある椅子に座っていたアリシアと目が合う。
「あら、もう外に出て大丈夫なんですの?」
「あぁ。
封印解いてくれてありがとうな」
「いえいえ。
……私こそ止められずすみません」
「だからこの島から一刻も早く出てほしかったんだな」
「はい。
……予知夢を見たもので。
到底信じられないと思いますが」
「いや、信じるよ」
「私も」
「……ありがとうごさいます。
そんな2人にしておきたい話があります。
少し付き合ってはくれませんか?」
「全然構わないが」
庭の椅子に座り、しばし沈黙が流れる。
「こんなお話を知っているでしょうか。
300年前の英雄とお姫様のお話」
───化け物の再来と呼ばれた英雄には、結ばれてはいけない存在がいました。
それは私の先祖にあたる、この島の王女だったのです。
英雄には化け物の血が流れ、王女には創造主の血が流れています。
化け物と創造主はそれよりも600年、つまり今からだと900年程前から続く因縁の関係。
けれどその2人は冒険の始まりからの付き合いで、想いを寄せるのには十分すぎる時間が流れていました。
「ですから本来化け物と創造主の血を引く者は位が高いのです。
どうやってかは知りませんが本来結ばれてはいけない2人は結ばれる事ができた。
だから……」
「ちょっと待った」
気がつけば、ステファニーが近くの柱にもたれかかって話を聞いていたようだ。
確か後でノエルと合流すると言っていた。ちょうど、俺の封印が解かれた時に来たらしい。
「ステファニー、依頼終わったの?」
「ああ。
……英雄と王女様も結ばれた。
だからこの2人も結ばれるって言いたんだろ、お姫さん。
けれど、あたしは反対だ。
カナヤは2人を応援してるみたいだが、ノエルにもしもの事があったらあたしは……!」
「ステファニー、例え悲惨な運命を遂げるとしてもアオトと一緒ならそれでいいの。
それは何度も伝えているよね。
もちろん運命に抗う。
でも、ダメだったとしても後悔なんてある訳ないんだよ」
「じゃああたしのこの気持ちはどうなる!?
あたしは、ノエルが悲惨な運命にあって死んでしまうなんて嫌だ!
だから、アオトには悪いけど……金輪際会わないでほしい」
「………」
「ちょっと、いくらなんでもそれは」
「ノエルは分かってない!
あたしはこの目で見たんだ。
ノエルみたいに運命に抗った人を。
そしてダメだった事を……」
「……俺も、見た事ある」
「なら───」
「でも………それは」
その先の言葉が出てこなかった。
ステファニーの言う通りなのは分かってる。
それがきっとノエルにとっての本当の意味での幸せにならない事も。
なんとも言い表せない複雑な感情が絡み合い、何も言えなかった。
何かしら言うべきなのは明らかなのに。
「とにかく、私は絶対……絶対に認めらないから」
ステファニーは足早にここを立ち去る。
「……ごめんね、ステファニーそういうとこあるから。
私がどれだけ言っても聞いてくれなくて」
ノエルがじっと、俺の方を見た。




