反転した二人
私は廊下を走り去るノエルの腕を掴んだ。
「アオイどうしたの?
ごめん、ちょっと急いでて───」
「あの2人の元へ行くつもりでしょ?
私も同行させてくれない?」
「……貴方は何者なの?」
「貴方ならもう察しがついているかと思うけど、私の口からは言えない」
「なんでついて来ようと?」
「必要な事だから」
「…………分かった。
貴方、戦える?」
「鈍ってると思うけど、多少なら」
「いざという時は自分だけでも逃げてね。
じゃあ、行こっか」
「うん」
町外れの寂れた公園。
そこに2つの影があった。
「ふふ、ほんとに来た。
しかもスペアまで」
「………」
金髪の長い髪をかき上げ、結んでいる人間の男はこちらを見てにやりと笑っている。
「キミと会うのは初めてだね。
自己紹介をしよう。
俺の名はネレイド」
「私はオキナ」
黒髪を2つお団子に結んだ亜人の女性が微笑む。
「私を呼び出してどうするつもり?」
「いやぁ、アオト君ってば封印されちゃってるでしょ。
こっちも手を焼いててさぁ。
そこで隣の子と一緒に来るかなぁって思って」
ネレイドはアオトが封印されている事を知っているようだ。
「最初からアオイ目的だったって訳?」
「へぇ、その子アオイっていうんだ。
よろしくね」
オキナから手を軽く振られるが、私は代わりに睨み返した。
「あら、つれないの。
呼び出したのはね、貴方の事をもっと知りたいなぁって」
「奇遇ですね。
私も貴方達と話したいと思っていましたよ」
「なら、私から。
貴方武器は何?
アオト君は刀だけど」
「……杖です。魔法を主に得意としてますので。
次は私の番です。
貴方達は私と同じく最初から存在していたという記憶を持っていますか?」
「えぇ、持ってるわ。
親から愛されて育った。
今はもういないけれどね」
「次は俺ね。
どうやったらアオト君の封印が解けるかな?
一緒に考えてくれない?」
「もし方法があったとしても絶対貴方達に教えたくないですけどね」
私は杖を出現させ、地面を軽く突いた。
オキナから放たれた、魔力をおびた矢を展開した魔法陣で防いだ。
続いてノエルがネレイドと剣をぶつかり合う。
「急に攻撃してくるなんて」
「こうなった方が面白いだろ?
話してばっかは性に合わない」
「私の相手は貴方?」
「そうなりますね」
連続して魔法を放つも、軽く避けられる。
ネレイドにも魔法攻撃をするも、呆気なく避けられた。
「あっぶないなぁ。
にしても、オキナ相手しながらこっちを攻撃してくるなんて高度なこと。
見立てではアオト君より弱いのは確かなはず」
「その見立ては合ってる。
だから弱いのは私達の方」
「弱い、か。
認めたくないねっ!」
ネレイドが剣を横へ振りノエルが反って回避、衝撃が風となって吹く。
「私の事、無視しないでくれる?」
「無視なんてしてないさ。
ただ、狙いはキミじゃないだけさ」
ネレイドとノエルの激しい攻防の中、私はオキナに向かって魔法をひたすら打つ。
オキナはそれを躱しながら矢を放つ。
オキナの矢を防ぎながら、ネレイドに向かって攻撃を仕掛ける。
それが何度か続き───
「「ペリオリズモス」」
「なっ」
声に振り返るとノエルが拘束され、前を見た時にはもう遅かった。
ネレイドが私に馬乗りになり、両腕はオキナによって地面に押し付けられていた。
「アオイに何するつもり!」
「ちょーっと血を頂くだけだけさ」
首筋に針が刺さる。
あっという間に血を抜かれ──
「ふーん、やっぱりキミ変態だね」
上着をめくられ、下着姿を見られた。
「……っ、変態なのはあんたでしょ!」
「わぁほんと、この子ってやっぱり正反対なのね」
オキナが覗き見る。
やがて興味が無くなったように立ち上がると。
「じゃあ、また会う機会があれば」
手を振って空間に溶け込むように消えてしまった。
私が起き上がると、ノエルがぎゅっと私を抱きしめる。
「助けれなくてごめんね。
あんなの嫌だよね。
ほんとにごめん……」
「貴方が……ノエルが謝ることないでしょ?
……泣かないでよ」
「だ、だって……あんなの女の子にするなんて最低だよ。
怖かったよね」
「………」
本当は怖くも無かったし、見られても何とも思わなかった。
ただ血が取られてしまった事が厄介な事に繋がると懸念しただけ。
そうか、やっぱり私は普通じゃないんだ。
「心配してくれて、ありがとう。
私は大丈夫だよ」
「うぅ……」
ぎゅっと抱きしめるノエルの頭を撫でる。
この子はあの時からずっと変わらない、優しい心で満たされている。
いいな、アオトはこの子に想われて。
でも、今だけは───




