知らない誰か
暗闇の中で見たのは、知らない世界で生活する少女だった。
黒のボブヘアに、青い瞳。
見たことの無い乗り物や風景や物。
その少女はどうやら学校に通っているようだった。
いつも1人で居て、つまんなそうな顔をして過ごしている。
───だけど、その少女は俺には持っていないモノをたくさん持っていた。
家族と暮らして、友達が居て。
好きな物があって、将来の夢まで持っていて。
正直羨ましいなって思った。
全て手を伸ばしても手に入らなかったモノだから。
俺の父さんは殺され、母さんは守れず行方不明。
一番の友達だと思っていた人は考えが合わず遠くへ。
好きな物はあるけど、夢中になればなる程、羨ましくて苦しくなるだけだった。
この職も就きたくて就いたんじゃなくて、生きるために仕方なくやっていたから。
世界云々以前に、住んでいる環境が俺とは何もかも正反対だった。
「お前は……誰、なんだ?」
声を出して問いかけてみた。
すると映像が止まり、少女が今までの顔つきとは違った表情でこちらを見た。
『さて、誰なんでしょう』
「……これを見せる意味は何だ?」
『意味……意味なんて無いのかも。
ただ知って欲しかっただけだったりして』
「………それは本心か?」
『お、鋭いね〜。
半分本心ってとこかなぁ。
意味は……そのうち分かるよ』
「………」
『それよりさ、私についてどう思う?』
「どうって言われても……」
『君の正直な感想でいいよ。
ほら、遠慮せずに』
教室で机に頬杖をつき、俺の答えを待っている。
「………どこの誰かも知らないけど、知ってる……みたいな。
………正直羨ましいと思うよ。
だって、俺に無いモノを持ってる、から」
『……そっか。
私は君の事ちょっと羨ましいって思うよ』
「え?」
『さーて、時間切れのようだね。
……また、どこかで会おうねアオト』
「なんで俺の名前知って───」
そこで視界がぼやけ、やがて真っ白になった。




