ノエルの代償
「………」
私はノエルと化け物の再来であるエイデンの会話を黙って聞いていた。
『ノエル、君は幻獣フェニックスと精霊サラマンダーと契約しているね』
「そう、だけど……」
『その経緯を聞いても?』
「フェニックスとは成り行きというか、力を欲しいか問われて承諾したら契約していて」
『フェニックスは普通の幻獣だけれど、使用者によって引き出せる力は無限大だ。
それを覚えておくといいよ』
「サラマンダーとは最初友達みたいな関係から始まったの。
それから互いの事を知って、私となら契約してもいいって」
『サラマンダーは精霊の中でも優れている存在だ。
知ってるだろうけど、何せこの世界に火が誕生したその時から生きてるからね』
「何が言いたいの?」
『いつか火の天使ウリエルと契約して欲しい。
結構先の事になるけど猫の亜人ガブリエラとも。
女神ヘスティアとも』
「ちょ、ちょっと待って……天使に亜人、女神って……そんなすごい存在と契約できる訳───」
『君も自分の事をどこか“ちっぽけな存在”と思ってるんじゃないのかい?
言っておくけど、基本的に幻獣や精霊、特にフェニックスやサラマンダーは滅多に契約を交わさない。
その証拠に僕との契約が消失してから約300年間誰とも契約をしていない』
「私に化け物になれ、と?」
エイデンは首を横に振る。
『全ては君の意志次第さ。
できればなって欲しいけれどね。
必ず会う機会は設ける気だよ。
……でも、それだけじゃあこの世界の理は覆せない。
何が足りていないのか、これから強くなって争いを本気で止めるつもりなら、ちゃんと向き合って考えて欲しい』
「……私はただ、アオトと幸せに暮らせたらそれでいいのに」
『だったら尚更世界を変えないと。
根本的にね』
「………」
ノエルは黙って、視線を下に向ける。
『ところでそこで立っている君は何故ここに?』
「……居場所がないから。
仲間とは顔合わせられないし……」
『そ。
……でもきっと打ち明けても受け入れてくれると思うけどな』
「それはアオトが望んでない。
そういう貴方には私、歓迎されてないみたいだけど」
『それを言われると………手を差し伸べたいのは山々なんだけど、手出し出来ないし。
きっとマノンにも不可能だろうね。
あくまでマノンは“代行者”として来てるだけだし』
「あの方は来ないのね。
……ずっと見守ってる癖に」
『もう一つ話しておきたい事があるんだ。
ノエルの代償について』
「…………」
『因みに彼の代償は彼女だ。
君は?』
ノエルは一瞬こちらを見たが、すぐに視線をエイデンに戻す。
「……謎の2人組が現れたの。
男は人間で、女は亜人。
男はアオトの身体を実験したいって言ってて、女はアオトの頭をコレクションに加えたいって。
恐らく代償で現れた歪んだ存在。
アオトの命を狙ってる。
アオイさんは……どういう存在なの?」
「詳しくは言えません。
けれどアオトに対して敵意や殺意は無いです。
私もその2人と同じで歪んだ存在、なのでしょうね」
『伝えるべき事は伝えたし、聞く事も聞いた。
代償に対抗する手の一つとしても天使達との契約を視野に入れてもらえると嬉しいかな。
それじゃ』
エイデンは光の粒になって消えた。
「アオトの封印は中々解けるものではありません。
一度アリシア様の所に戻った方がいいかと」
「……そうだね。心配かけちゃってるし。
あと、敬語じゃなくていいよ」
「……………分かった」
優しく微笑みかけるノエルに手を引かれ、アリシアの元へ向かった。




