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青き華よ希跡なれ  作者: 溶枸由 佳月
第三章,軌道
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隠して

俺は、トラウマの詳細は伝えずにあの時を思い出す。


───今から2年前。

ヨミと2人で俺の母さんの居場所を突き止め、その人物と接触しようとしていた。

そこに現れたのは、俺にトラウマを植え付けた張本人だった。

大きな巨体に、あの頃と変わらないように見えるおぞましい顔。

俺はその姿を見て、その場で動けなくなってしまった。

結果的に脅され、ある男の家に連れていかれた。

ある男というのは先日会ったあの大男だ。

そこに居たのは変わり果てた母の姿だった。

目は虚ろで、俺の事も分かっていないような反応だった。


そこからは思い出したくも無い地獄が待っていた。

あいつと大男によって数時間にも及ぶ…………………

ひたすらに泣き叫んで助けを乞う。

けれどヨミも母も拘束され動けない状態。

そう、だから助けなんて来ないのだ。


用済みになった俺はヨミの元へ投げ出され、あいつと待ち合わせた場所まで連れていかれた。

母は大男に掴まり、俺もヨミも満身創痍だった為助けられなかった。


そして、あいつが俺の目の前に立った時。

幸か不幸か、その首が吹き飛ばされた。


俺は何が起こったのか分からず、ただ崩れゆくあいつの体を見つめていた。

そこで何かが切れたのだ。

あいつが居なくなってくれた。(本当は俺が……)

これでようやく解放される。(あいつが消えたとしても俺の傷はどうやっても一生消えない)

さっきまであんな事をしておいて、こんな呆気なく死ぬなんて。

俺の……俺と母が受けた屈辱はこんな、ただ首を跳ねるだけじゃ足りないものなのに。

俺と母さんがどれだけあの空間に耐えてきたのか。

どれだけ人生を狂わされたか。

普通に生きられず、その後も被害に遭い、抱えきれぬ程の苦しみを背負って生きてきたのに!

お前は……お前はこんな所で、一瞬で死ねて。


「……ぅ………ぁ」


声にならない呻き声が漏れる。

もう限界だったのかもしれない。

今まで、ずっと。

幼い頃からずっと暴走しないように自分を無理矢理抑え込んできた。

それは辛い苦しいなんてものじゃ、表現しようも無い程の苦痛。

あらゆる辛い記憶が頭を埋め尽くし、激しく脈打つ鼓動の音しか聞こえない。


「が………ぁあ………あ…………!」


座り込み俯いた俺の中から何かが現れる。

頭上に現れたそれは、俺と契約した別世界の力。

美では無く醜悪を表した真っ黒な衣装を着た1人の女性だった。

俺を中心に防御膜が張られる。

ヨミから連絡をとっていたリツが来て、この惨状を理解する。


「アオト、聞こえる!?

……これって暴走じゃ」


リツの声が遠く聞こえた。

ヨミも何か言ってるが聞き取れない。

もう全てどうでもよかった。

このまま……このまま闇に溶けて消えてしまえば………。


そこからの事は覚えておらず、聞いた話でしか知らない。

なんとか防御膜をリツとヨミ、遅れて到着してきた仲間が破壊したものの、暴走は止まらなかった。

醜悪が俺から魔力を吸い上げ、周りを攻撃していく。

幸いにも建物は皆の防御壁のおかげで無事だった。

暴走を引き起こした原因とされるあいつを殺した亜人側リーダーのユネも、暴走を抑えるために協力したらしい。

自分が原因だから、何より友達として。


「亜人側のリーダーと知り合いだったの?」


「ユネは昔1年程一緒に暮らしててな。

その時はまだ亜人側に入ってなかったから」


「そう、だったんだ………聞かせてくれてありがとう。

ごめんね辛い思いさせちゃって……」


「いいや、俺が言おうって決めた事だから」


代わりに、と俺はノエルを抱きしめた。


「しばらくこうしてていいか?」


「うん、もちろん」


俺はノエルの温かさと匂いに身を寄せた。

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