表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青き華よ希跡なれ  作者: 溶枸由 佳月
第二章,星団
62/83

小話1「当たり前の光景」

───時は少し遡り、ノエルと出会う前の事。

1月1日元日。

人気が一切無い神社にて、俺とリツはお参りをしていた。

この神社は中立組織(エイレネ)の敷地内にあるものだ。

専属の(かんなぎ)───普段は地平線の補佐、『次の世代の干支』となる13歳の人間の少年が居る。

紺色の髪を頭の後ろで結び、白い袴を着ている。


「あけましておめでとうございます」


少年───ヴィカの元へ。


「あけましておめでとう、ヴィカ」


「おめでとう」


「僕に用という事はおみくじ、でしょうか?」


「それもあるけど、挨拶しないとね。

寒い中ここで頑張ってる訳だし」


「いえいえそんな。

はい、こちらを振ってください」


手渡された筒を振り、番号を見せる。


「15番と30番ですね」


紙を手渡され、どうもとお礼をいい歩き始める。


「ねぇねぇ、せーので見ようよ」


「別にいいけど」


リツのせーのという声に合わせ開いた。


「俺は大吉。

内容は苦難を乗り越えて、咲き誇るであろうだってさ。

リツは?」


「うぇ〜ん、僕は末吉だって。

思いがけない事があり、見ている世界が逆転するであろうだって。

なんか不安な事書かれててやなんだけどぉ〜」


そういうと肩にもたれかかってくる。

いつもシャキッとしている様子からは想像できないであろうが、これが素のリツなのだ。

普段は仕事モードみたいなもので、今は甘えん坊の『弟』のような感じである。


「とりあえず結ぶぞ」


「はーい」


俺はなんとなく2番目に高い紐へ。

リツはその隣に結ぶ。


「屋敷に戻って、雑煮とかおせち食べよっか」


「だな」


屋敷とは、中立組織本部の事である。

中立組織全員が泊まれる程の大きさと広さで、正月休みの俺達はそこに泊まっている。

もちろん緊急の仕事があれば、いつでも出れるようにというのも理由にあるが。


「やっと2人とも戻ってきたー。

遅いよ」


「ごめんごめん」


私服姿で、しかも寛ぐ雛菊の姿を見るのは我ながら珍しいと思う。

新年会という事で集まって食事やら酒やらを飲むのが毎年恒例。まるで家族のようだ。


「では、皆揃ったということで乾杯」


「「乾杯」」


グラスを鳴らし、ビールを一口飲む。

こたつに入り、おせちをつまみながら雑煮も食べる。

ちなみに、おせちや雑煮は地平線や烏丸の手作りだ。

こうやって皆でゆっくり話しながら食べる光景を見るのは嫌いじゃない。

むしろ落ち着くような感覚だ。


「アオト食べないの?」


ヨミが小皿を持って声をかけてきた。


「ん、食べるけど」


「好きそうなやつ取っといたから」


小皿を見ると、いくつかの具材が盛られている。


「ありがとうな」



食事を終えると、子供達が雪にまみれながらはしゃいでいる姿が目に入る。

この中立組織には4歳の子や10代前半の子も所属している。

当然として年齢に関わらず強い力を持っており、一般の子供や大人よりも強い。

そんな子達も今は子供らしく元気に遊んでいる。

子供達に誘われ何人かの大人も一緒に遊んでおり、非常ににぎやかだ。


「元気だな」


「そうね。

ま、こんな時ぐらいしか遊べないしいいんじゃない」


ヨミが隣に座って言った。


「……こんな事を言うのはあれかもだけど、本当はあの子達も争いが無ければ普通に暮らせてたかもしれないのにな」


「……でも、この道を選んだのはあの子達自身よ。

それを否定してしまうのは、あの子達の尊厳を踏みにじることになる」


「…………」


「……けど、そうね。

あたし達みたいに『戦うことしか選べない』人じゃないだけいいじゃない。

“死ぬことを前提として”作られた組織なんかより」


「そう言いながら全員が望んだ事でもあるだろ。

結局俺達も同じなんだよ。

けれど、あの子達の未来が明るくなるために犠牲になれるなら」


「アオトってそんなに正義っぽい事言うキャラだっけ?

なんて。アオトは優しいから」


「別にあの子達のために死ぬんじゃねぇよ。

あくまで理由の一つに過ぎない。

そんな出来た大人じゃないからな」


「こんな光景を見れるのもあと何回かしらね」


ふとヨミの指先と俺の指先が触れる。


「なんか湿っぽくなっちゃった」


俺の指を絡めるように、すっと手を握られる。


「そういいながら手を繋ぐんだな」


そのヨミの手を握り返す。


「アオトだってそうじゃない」


まるで互いに弱さを隠して支えるみたいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ