幕間──隠す者達の集い──
大規模作戦が落ち着いた頃。
俺はジュイに呼ばれて、とあるバーを訪れていた。
「それでさぁ………って、えぇ!?」
俺の顔を見た途端顔を強ばらせ、次の瞬間顔を隠す。
その人物とは、情報屋のシーフルだった。
いつもは顔を隠しているが、今は仮面をしていない。
「あぁ、やっと来たか」
黒髪に大人っぽい雰囲気を纏わせている女性───ジュイのもう一つの姿。
いつもの金髪、子供っぽい明るさの面影は無くまるで別人と言わざるを得ない。
「ちょ、ちょっと……アオトが来るなんて、他の人が来るなんて聞いてないよ」
「アオト君なら、見せても大丈夫だと思ってね」
「それはジュイが判断する事じゃないでしょー!?
もーー!」
「あー……俺居ない方がいいなら帰るけど」
「……………そうは言ってない。
ただ、顔を見られたくなくて」
「この娘はそばかすを気にしててね。
私はいいと思うんだけど」
「俺も全然気にしないんだけど……そうじゃなくて、自分が気にするんだよな」
「…………そう」
「ほら、おいでな」
手招きされるまま席に座る。
シーフルはまだ恥ずかしそうに顔を背けている。
「で、なんで俺を呼んだんだ?」
「懇親会という程でもないが、ぜひ3人で仲良くなれたらと思ってね」
「はぁ……」
「………まぁ、別にいいけど。
馬鹿にしてくるような奴じゃないって知ってるし」
「という事で飲もうじゃないか。
マスター」
各々飲み物と食べ物を選び、頼む。
ぽつぽつとした会話の中、頼んだ物が運ばれてきた。
「乾杯」
カランとグラスの合わさる音が響く。
「んん、やっぱりこのワインは格別だ」
「私はビールに限るけどね。
で、アオト……君は?」
「呼び捨てでいいよ。
俺は酒に弱いから、アルコール度数が少ないやつをよく頼むな」
「へぇ、弱いんだ。意外」
飲んで食べてたまに話して、そうやってゆっくりと出来上がってくる。
「うぅ……こんなに飲んだの久しぶり、だな」
「ふぇ〜まだまだこんなもんじゃないぜぇ!」
高らかに声を上げ、ぐいっと飲むシーフル。
「皆弱いねぇ。
私はまだまだいけるよ」
顔はほんのり赤いが余裕そうな様子のジュイ。
「はぁ〜ひっく……大体さぁ、この世の中生きづらすぎるんだよ。
私みたいなコミュ障には特にさ。
人と話すの苦手だし、なのに情報収集能力に長けちゃってるから結局人と多く話す仕事に就いちゃったし。
まぁ、報酬と引き換えに一人では中々買いにくい出店とかの食べ物買ってきてもらえるのはいいんだけどさぁ」
「始まった。
いつも酔うとこうなるんだよ」
「そうなのか」
「それよりも、アオト君大丈夫かい?」
「あぁ、気分は大丈夫……けど、なんか頭がぼんやりと」
「もうそろそろ帰った方がいいんじゃないか?」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
シーフルはまだぐちぐちと何かを言っていたが、今の俺はそれどころではなく、ふらふらとしながら出口に向かう。
外に出ると思わぬ人物とぶつかった。
「わぁ、アオトそ、その……偶然だね」
「……ノエルか?
なんで、ここに」
「アオトひょっとして、酔ってる?」
「少し飲みすぎてな……っと」
「わ、だ、大丈夫?」
ノエルを抱きしめるようなかたちで、支えられる。
「す、すまない……頭がぼーっとして」
「そ、そうなんだ……」
ぎゅっと自然に抱きしめる腕に力が入る。
「ちょ、ちょっとアオト……!」
「うーん……いい匂いだな。
ひょっとしてお風呂上がりか?」
「え、えと、うん、そうだけど……アオト、ほら肩貸すから───わわっ!」
更にぎゅっと抱き寄せる。
「もう少しこのまま……」
「え、あ、う、うん……いい、けど」
右手をノエルの後頭部に持っていき、優しく撫でる。
「あ、アオト恥ずかしい……よ」
「……嫌だったら抵抗すればいいだろ。
今の俺なんてただの酔っ払いなんだから」
「うぅ……嫌じゃないよ。
私だってこの時間がずっと続けばって……」
「なら、文句言うなよ」
「文句は言ってないし……」
ノエルの全てが愛おしかった。
彼女を独り占めしたい。
誰にも触れさしたくない。
そんな気持ちが頭を支配する。
抑えられるはずが無かった。
だって、俺は───
「……しばらく、このままでいいよ。
アオトから甘えてくるなんて滅多に無い事だもん」
ノエルが俺を抱きしめ返し、背中をトントンと優しく撫でる。
「でも、あと少ししたら帰るからね。
今日ももう遅いし」
「あぁ、それで……構わない」
────────
「………………」
翌朝、ノエルと顔を合わせ昨日の事が瞬時に思い出される。
「あ、あのだな……その、昨日はす、すまなかった。
急にあんな風にされるの───」
「嫌じゃなかったよ。
むしろ嬉しかった。
だけど、びっくりはしたかな」
「だ、だよな……」
ふとノエルが近づき、ぎゅっと抱きしめられる。
頭を撫でられ、耳元でこう囁かれた。
「昨日のお返し、ね?」




