絶対の盾と破滅の剣
工場から出てすぐの事、今度は何者かの気配がして振り返る。
「…………」
顔を隠した男が立っていた。
髪は紫で、お洒落なスーツを身に纏っている。
「……アオト、どうしたの?」
皆には見えていない。
そして、この気配を俺は知っている。
「悪い、先に行っててくれないか?」
「え、でも……」
「大丈夫だから、な?」
心配そうなノエルの頭を優しく撫でる。
「じゃあ、私少し行った所で待ってるから」
「あぁ、分かった」
男は歩き出し、俺もそれに続く。
工場の裏に移動し、立ち止まる。
「お前……テウダって奴と同じ存在だろ?
何しに来た」
「お前にとっての『基礎』を聞きに来た」
「基礎?」
「基礎とはその人の土台となる部分。
最も大事な所だ。そこが歪めば、育つモノも歪む」
「俺にとっての基礎……」
そこで思い出されるのは、大きな鳥に攫われた先で何度も子供の頃の夢を見た事。
「なんで、今のタイミングで来たんだ?」
「今のお前なら俺の予想よりいい答えが聞けそうだからだ」
「よく分かんねぇけど、答えればいいんだろ?」
軽く息を吐く。
「俺の基礎は、憧れ。
皆を助け守る師匠を見て、光り輝く優しさを持ったノエルを見て思ったんだ。
俺もそうなりたいって。
自分は助けられた側だから、だからこそ誰かを助けられるような、守れるような存在に憧れたんだ。
絶対にそうなりたいって、それが……俺が求め続ける光なんだって」
男はテウダの時と同じように跪く。
「申し遅れました、俺の名はカノ。
基礎という概念そのもの、その残り香のような存在です。
俺の力は絶対的な守り。
これから貴方に真の名をお伝えします。
きっと貴方のお役に立つことでしょう」
真の名を言うと、一礼し光の粒となって消えていった。
「概念的存在……か」
考えがまとまらないまま、ノエルと合流した
***
亜人側の動きが中立組織に阻止され続け、硬直状態が続く中。
僕は更に力を求めるため、朽ちた剣が刺さる無人の島へとやって来た。
「僕はお前に用があって来た」
瞬きをし、目を開くとそこには髪がボサボサの男がしゃがみ込んでいた。
「昔、ここには世界を滅ぼそうとして失敗した人が居たそうだね。
強力な魔力を宿した魔剣を島の地面に突き刺した事で、島一つを滅ぼしたとか。
君が張本人だろ?」
「……………」
微かに荒い呼吸音が聞こえる。
「僕は君の想いに感銘を受けてね。
まぁ世界を滅ぼす事に興味は無いけど。
人間を滅ぼす事に興味は無いかい?」
男の頭がぴくっと反応した。
「この魔剣を無理やり引き抜こうとした奴は皆塵になったそうじゃないか。
僕も魔剣を引き抜きに来た。
けど、塵になんて当然なる気もない。
どうだい?僕と取り引き───いや、契約しようじゃないか」
「………対価は?」
「やっと喋ってくれたね。
んー、そうだね、対価。
あ、そうだ」
僕はにやりとほくそ笑む。
「もしも僕が『暴走』したら、塵になって消えてもいいよ」
手を差し伸べる。
「………………分かった」
男は手を握ると、黒と紫の粒になって消えた。
僕は魔剣を握る。
すると、あっさりと剣は抜けた。
「………はは、これで」




