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青き華よ希跡なれ  作者: 溶枸由 佳月
第二章,星団
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鐘が鳴るまで

翌朝。

まだ日も昇っていないような時刻。

俺とリツとエトリとジュイ、地平線からシャネさんとある場所に集まっていた。

この国の最北端、本来なら何も無い見晴らしのいい場所なのだが、今は違う。

ずっとこの5年間探していたもの。

ぽつんと、見上げる程高い塔のようなものが建っている。

その一番上には『鐘』があるはずだ。

これを壊すためだけに場所と方法を探し求め、ようやく見つけた。


「時間が無いから早速始める。

俺がここを登っている間、よろしく頼む」


「ノエちゃんの為だもん。

協力するのは当たり前」


エトリに頷き、リツ達と目を合わせた。

塔の方を向き、深呼吸すると階段を走って登り始める。

リツ達は強力な魔物が周囲に来た時の対処と、鐘の様子を窺う。


俺が相手にしているのは『七大怪狂(かいき)』と呼ばれる、世界に七つ存在する文字通り怪奇的で狂ったような強大な存在だ。

その中でもこれは『鐘が鳴るまで』と呼ばれている。

これに目をつけられた人は、首に数字が刻まれる。

その数字が表すものは鐘が鳴るまでの時間。刻まれるのは人によって様々で、10秒の時もあれば10年後の場合もある。

そして刻まれた数字が0になり鐘が鳴った瞬間、その人は死ぬ。

これは刻まれた時点での確定事項であり、絶対に覆すことの出来ない事象。


───5年前、ムニンにてノエルの身体の中に入り俺を殺そうとした存在。

あの時感じた気配の正体こそ、“鐘が鳴るまで”だったのだ。

俺は一度そいつに命を狙われた事があるが、俺自身もよく分からない不思議な力でなんとか助かる事が出来た。


「はぁ……はぁ………」


ぐるぐると塔の周りを回るように登っていく。

まだ半分も行っていない。

魔力を少しでも温存するため、飛ばずにこうして走っている。



「───!」


下で何やら声が聞こえ見ると───


「……っ、あいつなんで!?」


リツ達は魔物と交戦中、そしてなんとノエルが塔を登ってきたのだ。


「アオトーー!

聞こえてるぅー!?」


「……やべっ」


よりマズイ方に事が進んでしまった。

リツ達が止められず、ここを登ってくるなんて……!


「やっぱり納得できない!

教えてよ!!」


「お前はいいから下に降りてろ!!」


俺は階段を思い切り蹴ると、致し方なく塔と平行に飛んでいく。


「待って───」


ノエルの声が遠くなる。

早く、早くなんとか破壊しなくては。

この鐘を破壊できた者は今までに存在しない。

何を使っても一切壊れることは無かった。

つまり、俺が逃れられたのは奇跡であり本来なら有り得ない事なのだ。

ノエルを死なせる訳にはいかない。


頂上まであと少し。

ノエルとは距離が離れている。

これなら大丈夫なはず……!



───頂上を越え、鐘と対面する。



「────!」



俺は、5年前にある島で出会った“テウダ”という女性の事を最近になって思い出した。

その存在は俺に真の名を教え、いざとなれば力になってくれると。

理から外れたような存在ならば、もしかすればこいつを破壊する事が出来るかもしれないと思ったのだ。


真の名を口にし、手に光る弓矢が現れる。

俺はそれを手にし、矢を思いっきり引いた。


「壊れろぉぉぉ!」


手を離すと、鐘の中心に矢が刺さった。

すると鐘が矢と同じ色に光り、段々と透けていく。

やがて見えなくなると、頂上にあった鐘は完全に消滅した。



───少しして、ノエルが頂上までやってきた。


「はぁ……はぁ………や、やっと……」


振り返る。


「どういう事か説明、してくれる?」


段々と距離を詰める事に、不思議と足が早くなる。



「───え?」


俺はぎゅっと、ノエルを抱き寄せた。


「よかった……本当に、よかった…………」


自然と涙が零れる。

大粒の涙が溢れ出して止まらない。

視界が歪んで何も見えないくらいに。


「泣いてるの?アオト……」


「……あ、あのな───」


言葉は拙かったかもしれない。

けれどノエルに伝わるように、必死で言葉を紡いで今回の事を告げた。


「てことは、私……5年前から……あの時から……命を狙われてたんだ」


「……あぁ」


「首に何かあるってのは知ってたけど……まさかこんな……事になってるだなんて」


抱きしめながらなんとか涙を拭い、なんとか落ち着きを取り戻す。


「………破壊するまで本人には知らせちゃいけなかったから、今まで言えなかったんだ」


「そう、だったんだね。

ごめん……私、我儘過ぎた……よね。

私の良くない所だな」


風の吹く音が耳元を過ぎ去る。

朝日が出てきたのか空が明るくなり、そして太陽が俺たちを照らしていく。


「……アオトはずっと私の事、想い続けてくれてたんだね。

私……だけじゃなかったんだ」


「当たり前、だろ」


「………ありがとう」


しばらく抱きしめ合った後、塔から飛び降り地面近くで魔力を使い落下速度を遅くする。

地面に着地すると、皆と目が合う。


「無事破壊出来たんだね」


「あぁ。

皆も協力ありがとうな。シャネさんもありがとうございます」


「ノエちゃぁぁぁん!!

ほんと無事で良かったぁ!」


「わっ……エトっちゃん」


エトリがノエルに勢いよく抱きつく。


「どういう方法で壊したのか出来れば教えて欲しいけど」


「これはなんていうか……説明が難しいし、誰にでも真似出来る事じゃねぇ。

俺……以外は無理、だと思う。現状は」


「そっか。

なら仕方ないか」


リツは救えて良かったと言ってくれた。

5年間ずっと抱えていた問題から解放された。

なによりノエルが無事に生きていることが嬉しい。本当に救えて良かったと、今までに無いほどの喜びを感じていた。

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