ノエルの意志
あれから2日が経った──
昼ごはんを食べ終え、ノエルが机を綺麗に拭いている。
「ノエル、家に帰れ」
「え、急に何言って──」
「いいから。
仲直りするんだ」
「できっこないよ……だって、考え方が違うん……だから…………」
「そうだな。違う。
でも、話せば分かるんじゃないのか?」
「家族、だから?」
「……家族でも分かり合えないことだってあるんだろうけど、やるだけやってみるべきだと思う」
「………………そう、だね。
……うん、分かった」
「行くのはノエル1人で」
「──っ………うん」
荷物を全て持ったノエルを、手を振って見送る。
「仲直りできたら、またこっちに来るから。
それからいつも通りの仕事しよ?」
「あぁ、そうだな」
扉が閉まる。
部屋の中にはただ1人。
* * *
私は緊張したように脈打つ鼓動を感じながら村までの道を歩いた。
何も考えることなく、ただひたすらに。
扉を開くと驚いた様子の両親がいた。
「話をしたくて」
「…………」
「……分かったわ。
ほら、ここに座って」
いつも私が座っている席に座る。
お父さんとは向かい合わせの席。
お母さんは私たちをそっと見守っていた。お父さんは新聞を読んでいる。
「……あの時は感情的になってて、私もお父さんを傷つけるようなこと言ってしまったと思う。
それについては、本当にごめんなさい」
「………………」
「……………けれど、やっぱり私の考え方は変わらない。
亜人の事を嫌いになれないし、恨めない。離れることもできない。
殺した人たちのことは絶対、許せないけど。
……私がアオトの仕事を手伝いたいって思ったのはね、アオトが村を守ってくれているのを見ていたことがきっかけなの。
かっこよくて、強くて……憧れるなって。
大好きな村を守ってくれてる人のことを知りたかった。女の子を助けた時の彼の目、すごく真剣で。
その時、私のやるべき事が分かった気がしたの」
「気がした、だろ。
あいつが何の仕事をしているのか分かった上で仕事しているのか?」
新聞を置き、私の目を見た。
その顔は険しくて、けれど2日前と比べて少し和らいでいるようにも見えた。
「……分かった上でしてるよ。
アオトが中立組織にいることも、知ってる」
「何故お前は、そこまでしてあの男の隣に居る?」
「人間と亜人の歴史を知って、やるべき事を見つけたの。
……これはアオトにはまだ言ってないけど、いずれ私も中立組織に入るつもり」
「……っ、それは──」
お父さんが反論しようとするのを、お母さんが手で制した。
「アオトが話してくれたんだけどね、中立組織には戦えない人もいるって。その人たちは別の形で支えてくれてるって。
私、そうなれたらって思ってるの。
それぐらい私の意志は固い。反対されても絶対になるって決めてるから」
「……………っ」
「ノエル、それが何を意味してるのか理解しているの?」
お母さんが優しく、けれど反対に強く問いかけるように言った。
「うん」
「……そう。
まぁ、この話はそうなったらの時に話しましょ」
「……………」
お父さんは無言のままで、悔しそうな表情でいた。
「……私、お父さんと喧嘩したままじゃ嫌だよ」
「…………考え方を変えるつもりはないんだな」
「変えようとしても、もう変えれないと思う」
「………………そういう所はお前の母さんに似て……はぁ。
好きにしろ」
「──っ!……ありがとう」
* * *
「──て事になって。
お父さんとなんとか仲直りすることができたんだ」
「そうか。
それは本当によかった」
「ふふ、うん!」
そして、いつも通りの日常が戻ってきた。




