予想外
次の日。
ノエルがそろっと扉を開け、入ってくる。
俺は立ち上がり、ドキドキしながら言葉を待っていた。無論、表にはそれを出さずに。
「勿体ぶらずに言うね。
お母さん、いいって」
「……っ、いいってちゃんと説明したんだろうな?」
「うん。どういう島に行くかもちゃんと説明した」
「なら、なんで………」
「その代わり、アオトと会って話がしたいって。
それで本当に行っていいか決めるって」
「…………」
「約束、したよね」
「それは分かってる」
正直、許可されるなんて思ってなかった。
いくら仕事とはいえ、呪いの島なんて不吉な呼ばれ方をする島に行かせるなんて。
しかもその条件に俺と会って話したいって……。
親に仕事隠してるのに、いいのか?
「あ、前に親には秘密って言ってたけどお母さんにはバレてたみたい……。
まぁバレない方がおかしいみたいな感じだけど……。
お父さんの方は忙しくて家にこもりっぱなしか、時々街の方に行ったりするからバレてはないみたい」
「………………」
ローブを羽織り、荷物を背負う。
「……ほら、行くぞ」
「うん」
* * *
村に着くと、噴水の前にノエルの母らしき人が立っていた。
「お母さん、連れてきたよ」
「この人がアオトさんね。
知ってはいたけど、こうして話すのは初めてね」
ノエルと同じ色の長い髪、綺麗で整った優しそうな顔。
身長も高く、俺と同じくらいだ。
「そう、ですね」
「娘がいつもお世話になってます」
「いえいえ、こちらこそ……」
何を話せばいいのか分からない。
第一ものすごく気を遣う。
「…………」
「えっ──」
一瞬だった。
さっきまで数歩離れていたノエルのお母さんが目の前に、深く被っていたフードを持ち上げ目が合った。
「お母さん、何やってるの!!
ご、ごめんね……お母さん時々こういう謎の行動しちゃうっていうか……その……」
「い、いや……だ、大丈夫……な、はず」
今ので知られてしまった?自分が、亜人であることを。
フードを持ち上げたんだ……その時に見られた可能性は高い。
ノエルも俺も、その事を一番に気にしていた。
……それもそうだが、あの動き……普通じゃない。
ノエルもノエルのお母さんもいったいなんなんだ?
「……うん。任せて大丈夫そうですね」
「「へ?」」
ノエルと反応が重なった。
もう……何がなんだか分からなくなってきた………。
「アオトさんの目を見てね、分かったのよ。
あぁ、この人は優しくて強い人だってね。
そりゃあノエルも憧れるわね」
「お、お母さん……なんでその事を!?」
「ふふ、お母さんはノエルのお母さんだもん。
ノエルのことなら、なんでもお見通しよ」
そう言って悪戯っぽい笑みを浮かべる。
………………。
「それじゃあノエルのこと、よろしくお願いしますね」
「はい。ちゃんと責任持ってお守りします」
「ふふ、よし。
行ってらっしゃい」
「行ってきまーす」
軽く頭を下げ、ノエルと共に村を出た。




