めんどくさい二人
ノエルと出会って約2ヶ月半が経った。
ノエルと仕事をすることが当たり前に、ノエルと過ごすことが当たり前になっている。
そう、今の俺は前とは違う。ノエルが隣に居なかったあの頃とは。
ノエルという少女とたくさん話して、一緒に過ごしてノエルの事をたくさん知っている。
だから……きっとそうなった時俺は───
続きが浮かぶ前に、窓の前に手紙が置いてあるのが目に入った。
窓を開け、手紙を手に取り中身を確認する。
────────
「……これは、ノエルには言えないな」
「おっはよー!」
「……元気だな」
元気な声とともに扉が開き、ノエルがやってきた。
また、タイミング悪く……。
「それって、手紙?」
「あぁ。でも、なんてことないやつだから」
そう言って普通に片付ける。
「ふーん……。ねぇ、手紙ってどうやって届いてるの?
村なら、郵便屋さんが届けてくれるけど」
「伝書鳩だ」
「なるほどね〜。私鳩さんが手紙置いてるとこ見たいなぁ」
ノエルは笑顔のまま近づいてくる。
「な、なんだよ……」
「……で、私に何隠してるの?」
「は?何も隠してねーよ。
そうやって何でもかんでも疑うのやめろ」
「……バレてないとでも思ってる?
実は私、アオトが手紙を取ってるとこ見てたの。扉を開ける直前に呟いた言葉も、聞いてた」
「ちっ……」
「アオトって、本当に隠したい事は上手く隠すんだね。
流石に聞いてなかったら分かんなかったよ、私」
「さっきの俺をぶん殴ってやりてぇ気分だ」
「それで、なんで言えないの?」
「……………」
「意地でも言わないつもり?」
「あぁ」
「………私を危険な目に遭わせたくないって、想ってくれていることは分かってる。
自分がわがままだってことも」
「なら──」
「私だってアオトのこと心配なの。傍にいて、一緒に手伝いたいの。
………足手まといってこと、分かってるけど」
「別にそうは思ってねーし、簡単に死ぬかよ。
ノエルは知らねぇと思うし、自分でも言うのもなんだが、俺が所属してる組織は本当に強いやつしか入れないし選ばれない、認められないんだ。
だから心配すんな」
「じゃあ、逆の立場でも同じこと言える?」
「……逆って」
「言えるの?」
「………………あぁ、めんどくせーな!
今回の仕事はとある島に行って調査してこいって、依頼されたんだよ」
俺には分かる。
きっと、いや……絶対ノエルは俺が口を開くまでこういう話を延々と続けるだろう。
「とある島って?」
「ポリアフの近くにある、『ムニン』って島だとよ。
そこは何度も人が住もうと試みるも、いつも必ず住めなくなる“呪いの島"とも呼ばれている不気味な島だ」
「その、こんな事言うのはあれ……なんだけど、ポリアフにいる亜人に頼んだら早いのにって」
「俺もそう思ったけど、どうしても離れられないからだってさ。
皆に比べて暇だし、おまけに休暇みたいなのも貰ったからな。これぐらいやらないと」
──もしかしたら、この方法ならノエルを連れていかずに済むかもしれない。
「日帰りじゃなく、1日かかるかもしれねぇ依頼なんだよ」
「え、そうなの?
……その間、村はどうなるの?」
自分のことより村のことを気にするんだな。
……優しいな。
「信用してるノエルに任せるってのはダメか?」
「………信用してるって言葉、すごく嬉しい。
……私、当ててもいい?」
流石にこれぐらいじゃあ、ダメ……か。
「当てれるんなら」
「街の方に亜人がいるって言ってたよね。
その人に任せて行こうとしてたんじゃないの?」
「……なんで分かるんだよ」
「前にもう1人亜人がいるって言ってたこと思い出して、もしかしてって……。
想像力豊かすぎるかな」
「豊かすぎるな」
「……ふふ、だよね。
昔から、なんだ。これも。
普通の人が分からない事が分かっちゃうの。……変だよね」
「変、じゃねーよ。
それを言うなら俺だって…………他の亜人とは違う存在、だから。
普通とは違う、から」
「……それって………………ううん、言葉にしないでおく。
やっぱりすごく優しいね、アオトは」
「………仕事でその島に行くことを親に言って、許可をもらえたら特別に連れてってやる」
さっき思いついたのはこちらの方法だ。
親が簡単にそんなことを許すはずがない。
何せ大事な娘だし、村から、島から出たことが無いんだ。
許可をもらえる可能性が低いはず。
「………ほんとに!?やった!!」
「まだ決まってねーだろ」
「うん。だけど……きっと行けそうな気がする!」
「そうか」
お願いだから、許可しないでくれ。
嫌な予感がする。
……とてつもなく、後悔しそうな何かを。




