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青き華よ希跡なれ  作者: 溶枸由 佳月
第一章,連星
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交わした約束─ねがい─

今夜、村では祭りがある。

そのため夜も見回りしていた。

屋台がたくさん出て賑わっており、皆楽しそうだ。

見回りはすぐ終わり帰ろうと村を出ようとした時、誰かが手を握った。

驚いて振り返ると、ノエルがいた。息を切らして、じっと見つめてくる。


「さ、探した……んだから」


「な、なんだよ。今日は祭りだろ?お前も楽しんで──」


「どうしても、行きたい場所があるの」


「今からか?夜は危ねーから明日な」


「……明日じゃダメなの、今日じゃなきゃダメなの!それも夜じゃなきゃ。お願い……」


「………」


何時に無く切実な表情に、俺はいつからこういうのに弱くなったんだとため息をつく。


「……ノエルがそこまで言うなら」


「ほんと!?」


「で、そこは何処なんだ?」


「案内する!」


嬉しそうなノエルの後をついて行く。

村からどんどん離れ、小屋も通り過ぎ着いたのは境界近くにある小さな丘だった。

ノエルは1番上まで駆け登り、くるりと俺の方を向いて止まった。


「ここでね、どうしてもやりたい事があったんだ。今日じゃないとダメなの」


「やりたい事っていうのは一体なんなんだ?それに今日じゃないとダメって」


「2つとも後でちゃんと話すから。

すぅー……はぁ………」


緊張したように深呼吸をする。

なんだかこちらまで変に緊張してしまいそうだ。


「……今から話すのは、私が小さい頃に読んだ御伽噺」


『むかしむかし、あるところに女の子と男の子がいました。

女の子は普通の家に生まれた、普通の女の子。男の子は幼いながらも苦労してきた、男の子。

その2人はある日、出会いました。それは偶然か必然なのか。

一目見て正反対であると、けれどどこか似ていると感じました。

女の子は男の子に話しかけますが、男の子は冷たい態度をとります。男の子は素直になれないだけで、本当は女の子と話したいと思っていたのです。

女の子は不思議とそれを分かっていました。だから冷たくされても傍にいて、話しかけ続けたのです。

いつの間にか男の子も女の子と話していて、仲良くなりました。

そんな日が何日か続いて、女の子とお別れの時がやってきました。

女の子は家族と旅行でこの島に来ていたのです。もう帰らなくてはなりません。

男の子には家族がいません。また、ひとりぼっちです』


「──その男の子がひとりぼっちにならないように、ある『おまじない』をしたの」


「それをやりたいってことか?」


「うん」


「理由を聞いてもいいか?」


ノエルが話した御伽噺は寂しく、どこか自分にも似ているような気もして、なんとも言えない複雑な気持ちだった。


「……私ね、この御伽噺が好きなの。

真似してやりたいっていうことじゃなくて、このおまじないにはね『ずっと一緒』って意味が込められているの。

このおまじないをしたら……絶対に切れない繋がりが、結ばれるんじゃないかって」


「絶対に切れない、繋がり……」


「それに今日は、1年に一度綺麗に晴れる日なの。

空を見て」


言われて空を見上げた。

雲一つ無い、綺麗な星空。年中曇り空が広がるこの島では珍しい光景だ。

大小様々な星、白く光る星、赤っぽいのや青っぽい色の星が、満遍なく空に散りばめられたように輝いていた。


「綺麗、でしょ」


「そうだな」


「こんな素敵な日におまじないができたら、御伽噺の……お話の中でのおまじないとはいえ、本当に叶いそうじゃない?」


「……だな」


自然と笑みがこぼれる。

自分でもそうなるんじゃないか……そうなればって、強く思っているなんて。これは思いというよりも、願いに近いのかもしれない。


「どうやればいいんだ、そのおまじない」


「手を出して」


「こう、か?」


手を前に伸ばすと、ノエルはその手をそっと握り──


「……はぁ!?」


驚いて変な声が出てしまった。

なんとノエルは、俺の手を自分の胸にぎゅっと当てたからだ。


「お、おま……何やって………!」


「……動かさないの。

ほら、同じように」


ノエルが手を伸ばす。そこでようやく理解したのだ。

ノエルの手を自分の胸に当てる。


「目を閉じて」


言われた通りに閉じる。


「アオト、私の胸の鼓動……聞こえる?伝わってる?」


優しい風が通りすぎる。


─────緊張したように少し速い鼓動の音、振動が伝わってくる。


「あぁ。聞こえたし、伝わってきた。

……ノエルはどうなんだ?」


「私も聞こえたよ。ちゃんと伝わってきた」


綺麗な星空の下、小さな丘の上で2人っきりで、特別なおまじない。

俺たち以外誰もいない、自分たちだけの、自分たちのためだけの空間と時間。

時折吹く穏やかな風が、俺たちを守ってくれているような。




──ずっと一緒に居れますように



彼女の、彼の、願いが聞こえたような──





目を開けると、ノエルと目が合った。



しばらくそのままで────先にノエルが口を開いた。


「ほんとはね、このおまじないには続き……があるの」


何故か恥ずかしそうに目を逸らす。


「続き?それはやらなくていいのか?」


「……そ、そそそれは……ま、またいつか、ね!」


「………?あ、あぁ」


このおまじないの続きとは何なのだろうか。

………なんだか胸の辺りが温かく感じる。

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