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アリス・カンパニー 〜TS転生したけど今度は好き勝手に生きることにする〜  作者: 青咲りん
第1章:アリスちゃんは工房が欲しい。(前編)
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擬似人格ポッド作り

 飯テロ書くつもりだったけど長くなりすぎるので端折りました。

 いつか絶対やる。

 一階に降りてくると、ダイニングの方からミネストローネの酸味の効いた香りと、焼き立てのパスティの香ばしい匂いが鼻腔を突いてきた。


「あら、アリス。

 その格好で降りてきたの?」


 ダイニングの扉を潜ってやってきた俺に気がついてマリアがこちらに顔を向けると、ミネストローネをかき混ぜるお玉を手に苦笑いを浮かべてきた。


「あっ」


 言われて、自分の服装を見下ろす。

 そこには、赤茶色ともオレンジ色とも取れる色合いのツナギに身を包んだ自分の体があった。


「あ、あはは……。

 カニスにご飯あげてからすぐに着替えてくるよ」


 付けっぱなしだった軍手を脱いでポケットに押し込みカニスの餌を餌皿に盛る。


 しまった。

 スヴィンがいないからって気を抜きすぎた……。


 カニスとちょっとだけ戯(じゃ)れてから餌をあげて、手を洗ってから裏口を通って屋内に戻ってそのまま自室がある二階へと移動する。


「ふぅ……」


 ツナギのファスナーを下ろして、無防備な肌を空気に晒す。

 椅子の背もたれに掛けっぱなしにしていたワンピを手に取って帯紐を結んで……っと、着替え完了。


 ……んー、なんかアレだな。

 一日にこう何回も着替えるのめんどくさいな。


 こう、ゲームの装備切り替えボタンみたいに、ポチッとボタン一押しで全ての装備が切り替えられる──みたいな、そんな機構作ってみようかな。


 あのクローゼットに使った位相を切り替える魔法応用すれば多分いけるっしょ。


「メイドロボ作ったら今度はそっち挑戦してみるか」


 それで、商業ギルドにも登録して、特許を取ってみるのもいいかもしれないし。

 ……いや、その場合果たしてスヴィンにバレないかどうかが心配だなぁ。


「お母さん(マリア)に相談してみるか」


 マリアなら、別にスヴィンみたいに『女の子らしくしろ!』とか言ってこないし。


 俺は自分の部屋を出ると、急いでダイニングへと駆け下りて行った。


⚪⚫○●⚪⚫○●


「あのね、お母さん。

 ちょっと相談があるんだけど……」


 昼食が終わった頃、隣で食器を拭くマリアに、食器を洗いながら話しかけた。


「なぁに、私の可愛い子」


 ……でも、なんかいざ話すとなると緊張するな。

 話したい内容は決まっているし、たぶん反対もされないだろうとは思ってるけど……。


 ……いや、ここまできたらもういっそどうなでもなれの精神で切り出すしかないな。


 俺は意を決すると、首を横に向けて口を開いた。


「商業ギルドに登録しようと思うんだけど、どうかな」


「……どうって?」


 一瞬動きを止めるも、また食器拭きを始めながら首を傾げるマリア。


「お母さん、私がお父さんに隠れて魔道具を作ってるの、知ってるでしょ?」


「そうね」


「でも、魔道具を作るのにもお金が必要なの。

 毎月のお小遣いじゃ足りない。

 もっとお金があったら、もっと早くいろんなものが作れる。

 ……だからね、その……私が発明した魔道具の特許を申請して、その費用の足しにしようと思うの。

 もちろん、何割かは家に入れるわ。

 だから、その……」


 うまく言葉が出てこずに、所々吃りながら丁寧に説明する。

 説明するうちに俺の視線はマリアの横顔を見ていたはずが、だんだんと落ちて、手元の洗剤塗れのカトラリーに向いてしまっていた。


 そんな様子の俺を見て何か思ったのだろう。

 それが何かというのは、少し想像がつかない。

 つかないが、優しくて温かい、そんな空気を纏った小さな笑い声が、耳朶を叩くのがわかった。


「そうね。

 アリスももう十歳だし、本来はいろんなことを経験していかないといけない歳だものね……」


 コトン、と机に食器を置く気配が伝わる。

 ──と、不意に体の左横からマリアの体が覆いかぶさって、優しく頭を撫でられた。


「お母さん……?」


 え、ちょ、何?

 なんで俺こんなことになってるの?

 なんで抱きしめられてんの、俺?


 突然のことに頭の中が真っ白になる。

 真っ白になって、今さっきまで頭の中に浮かんでいた言葉が全て消え去ってしまって、何も口から出てこない。


「わかったわ。

 後でお母さんが色々手続きしておいてあげる」


 しかし、後に続いたその言葉で、バラバラになっていたそれが一気に形を取り戻して、自然と口から溢れ出した。


「ありがとう、お母さん!

 私、頑張るよ!」


 マリアが何を思ってあんなことを口に出したのかはわからなかったが、どうやら提案には賛成してくれたらしい。


 俺は嬉しくて思わず母を抱き返そうとしたが、今は手が洗剤で泡だらけ。

 グッと堪えて、頭だけを向けてマリアの首筋に顔を寄せるだけに留めたのだった。


「それで、申請する魔道具はもう完成してるの?」


 言われて、居心地悪そうに彼女から身を離してから少し視線を外に向ける。


「まだ……もうちょっとだけ……時間かかりそう、かな……?」


 一応、今使ってるオートマトンとこれから作る瞬間お着替えマシーン(仮)を特許申請しようかと考えてはいるが、完成にはもう少し時間がかかる。

 というか、オートマトンの方は一機目は自分のものとしてそばに置いて置きつつ、二機目をサンプルとして提出したいと考えていたのでだいぶ時間がかかるだろう。

 やるならすぐにでも作れそうな瞬間お着替えマシーン(仮)くらいだが……。


「そうなの?

 じゃあ、金庫だけでも使っておいてあげようかしら。

 お父さんに見つかったら嫌なものは、そっちに隠しておけばいいし」


 そう提案されて、少しだけ考えてみる。


 今現在、見つかって嫌なものは全部例のクローゼットに隠してある。

 だがスヴィンは魔法使いだ、あのクローゼットが魔道具に改造されてあることくらいは余裕で見抜くはず。

 そうなると家に隠してある限り見つかる危険性というのは存在する。


 そしてもし見つかったら……捨てられちゃうかもしれない。


 それだけは是が非でも回避しなければならないだろう。


 ほら、起こりうる可能性があるものはいつか必ず実現するってマーフィーの法則で言ってるじゃないか。

 だったら普段目につくことのない金庫の中に避難させておいた方がまだマシというものではないだろうか。


「そうだね、お願いするよ!」


「じゃあ、午後は商業ギルドに行って、ついでにお買い物して帰ろうかしらね」


 彼女はニコリと笑顔を浮かべると、エプロンのポケットから手帳とペンを取り出してメモを執りだした。


 それから食器洗いや片付けなど諸々のことが終わると、マリアはカバンを手に取って商業ギルドへと出かけていった。


 ああ、お母さん。

 本当にありがとう。


 彼女にだけは絶対頭が上がらないよ。

 これからも絶対親不孝なことなんてできないね。

 するつもりもないけど。


 鉄の扉を開けて出て行く彼女を見送って、家の鍵を閉める。


 さて、それじゃあオートマトン作り、再開させますかね!


⚪⚫○●⚪⚫○●


 洗面所で歯を磨いてから自室に戻る。

 ああ、この世界の歯ブラシは元の世界とほとんど似たようなものだ。


 構造は木の柄にスライムの体液を通すなどして加工された猪などの硬い体毛を垂直に縫い付けた形である。


 なぜスライムの体液を通すとかいう工程を知っているかって?

 オートマトンの髪の毛を作る時に色々調べたからだよ。

 まあ、結局自作するのが難しいってことがわかったから、ウィニスさんに頼んでウィッグを買ってもらってそれを使ったんだけどね。


 『何に使うの?』って聞かれた時はさすがに焦ったけど、まぁ、なんとかなった。


 それはともかくとして。


 部屋に戻った俺は、再びツナギに着替え直す。

 この際着替えなくてもよくね?なんて思ったりするだろうが、それは違う。

 ちゃんとこっちに着替えないと、魔道具を作った時に出る残滓やら何やらでバレる……と、思う。


 知らんけど。

 まあ、念には念をっていうのは大事だよね。


 もし油とかで汚れたりとかしたら言い訳考えるのが大変だし?


「えーっと、次はポッドの組み立てか」


 ツナギのポケットから軍手を引っ張り出して装着し直してから、擬似人格ポッドの材料を手に取って組み立て始める。


 この作業は比較的簡単だ。

 金属製の筒を加工したり、内部にレコード(魔法陣)を仕込んだり、プラグや導線なんかをあれやこれやすれば……はい、完成。


 作るのに一時間も必要ない。


「そんでそんで、次は何をするかというと……」


 自分で描いた設計図に視線を移す。

 するとそこには日本語で『微精霊を集めてぶち込む』と書かれていた。


 我ながら説明が雑い。

 二機目ができたらこれと一緒にサンプル持って行くんだから、綺麗に書き直さないといけないなぁ、めんどくさい。


 微精霊というのは、前にも説明した通り、大気中にいて魔法陣を機能させてくれる重要な役割を持つ──文字通り微小な精霊のことだ。


 これが集まって何かに受肉したりすると精霊になる。

 俗に言うエレメンタルとかいうやつだな。

 火に受肉すれば火の精霊、水に受肉すれば水の精霊、風に受肉すれば風の精霊、地面に受肉すれば地の精霊……とかね。


 このエレメンタル(精霊)には人格があって、しかるべき魔法を使えば対話とかもできるようになる。


 で、今使ってる擬似人格ポッドはその性質を利用するのだ。

 つまり、その元となっている微精霊をかき集めてこの部品に閉じ込め、強制的に受肉させるのである。


 やり方は……そうだな。

 魔力を餌にして微精霊を集めて、エクスプロージョンの要領で微精霊を圧縮、そのままポッドに移して精霊になるまで『圧縮圧縮、微精霊を圧縮……ッ!』てところだろうか。


「これくらいなら自力でどうにかできるな」


 机の上に擬似人格ポッドを立てて、軍手を脱いで手を翳(かざ)す。


 体内の魔力に集中して……両掌から放出……。

 餌に集まってきた微精霊を魔力の渦で捉えて中心に……。


 ああ、そうそう。

 説明し忘れてたけど、微精霊や精霊は魔力を餌にして活動している。

 魔力が豊富にあるところだと活発に活動し、それが無いと一気に大人しくなる。

 というか、動物で言う休眠状態に近い感じになる。


 この性質は街の外とかにあるダンジョンの異常気象とか危険地帯の気候とかに影響しているらしいが今は割愛しておく。


 で、俺が作ってるこの擬似人格ポッドはそれを応用している。


 簡単に言うと、メインハートコアを稼働させると擬似人格ポッドに魔力が流れて内部の精霊が活性化、オートマトンが行動できるようになるが、逆にメインハートコアを止めると魔力の供給が止まって精霊が大人しくなり、オートマトンは動かなくなる、と言うシステムだな。


 単純だろ?


 ……え、わかりにくい?


 そうだな。

 魔力を電力として考えるといいだろう。

 電源を入れると動いて、切ると動かなくなる。

 それを魔道具でやってるんだ。


 I型ハートコアは稼働するのが一瞬だからそんな機構は必要ないが、II型にはありふれた機構だ。

 ゼンマイの動きを制御することでコンデンサから供給される魔力のオンオフを切り替える。


 ……っと、そろそろ微精霊もいい感じに集まってきたな。


 感覚的にそれを感知すると、今度は予定通りそれをポッドの内部へと移動させる。


 予め開いておいたポッドの蓋から微精霊の塊を注ぎ込んで、密閉する。


 それからこいつを圧縮して圧縮して……。


 イメージは渦だ。

 内側に巻き込むように、渦潮のその中心に飲み込んでいくように、微精霊たちを内部で圧縮して行く。


 ……すると、不意に内部で微精霊を圧縮する手応えが変わる感覚があった。


 どうやら微精霊が精霊に変わってきているらしい。


 ……だけど、まだ完全に精霊にはなっていないようだ。


 以前、スヴィンとの稽古で何回か精霊と対話したことがある。

 あの時はうちのボイラーに住んでる火の精霊だったか。


 あの時の精霊の気配というか、肌触りというか、感覚は独特だったから覚えてる。

 近いものは……そう、スクイ◯ズだ。

 あの触った瞬間の意外な反発力のあの感覚。

 あれがめっちゃ似てる。


 ……まぁ、触覚で感じてるわけじゃ無いから、近いってだけでス◯イーズそのものってわけじゃあないんだけど。


 ……で、ちょうど今中心にそれっぽい感覚が出来つつあるのがわかる。

 でもまだ荒い。

 ここからさらに圧縮して、微精霊を育てなければ……!


 ……っていうか、なんかこれ楽しいな。

 精霊作るの楽しい。

 小学生の頃ハマってた『ねるね◯ねるね』に近い楽しさがある。


 ……これだけでもなんか売れそうな気がしてきた。

 特許申請するときは部品ごとにやろう。

 そんで最終的にはオートマトンも……って感じで……。


 ……となると、都合三機分の材料が必要なのか。


 ……遠いなぁ。



 ここまでお読みいただき、誠にありがとうございますm(_ _)m

 もしよろしければ、ここまで読んだついでに感想、いえ、評価だけでもしてくれたら嬉しく思います。

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