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アリス・カンパニー 〜TS転生したけど今度は好き勝手に生きることにする〜  作者: 青咲りん
第1章:アリスちゃんは工房が欲しい。(前編)
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お披露目はお預けです

「ふぅ………………やっっっっっと全部の部品がかんせいしたぁぁぁあああ!!!!!!」


 背もたれに背中を倒して、思いっきり伸びをしながら家中に響き渡らせんという限りの大声で歓喜の雄叫びをあげる少女の姿が、グラストン坂通りの家の一室にあった。


 そう、俺だ。


「いやぁ、それにしても、ここまで長かったなぁ」


 呟きながら机の上の部品、それからクローゼットの方を見やってため息をつく。


 このオートマトンを作ろうと思ったのが八歳の八月だった。

 そこから四ヶ月かけて設計図とか考えて、書いては消してを繰り返し。

 九歳の一月から部品を集めてかれこれ一年八ヶ月……。

 合計二年の歳月をかけて、スヴィンから隠れながらコツコツ頑張って作ってきた甲斐があったってもんだよ、マジで。


「作成費用二十万ギル、製作年数二年。

 全く、十歳の子供がやることじゃないわ……あはは」


 いつからこんな凝り性になったんだろうな、俺。

 何かを最後までやり遂げたことなんて、前世含めて一度もなかったけど……。


「うん。

 最後までやるってのは、気持ちいいもんだな。

 ……まぁ、あと部品を組み立てるのが残ってるけど」


 椅子を降りて、クローゼットを開ける。

 そしてその奥に隠していたオートマトンの筐体の部品を、机の上から床の上に下ろした分厚い木綿の布の上に一つ一つ丁寧に引っ張り出してくる。


 冒険者ギルドに行って買ってきたトレントの樹脂とスライムの粘液、それからスライムの皮膚で作った、より見た目を人間らしく見せるための人工脂肪。


 正直、オートマトン作りで一番大変だったところだ。

 何せ人工脂肪なんて作った人はこの世界にまだ一人もいないんだ。

 この素材を見つけることとか、どれくらいの割合で混合させるかとかの実験が、正直クソほど大変だった記憶がある。


 しかも地味だしな。


 そんな人工脂肪をつけ、より人間の腕らしい見た目とさわり心地を実現させた手、腕、肩、足、脚、股関節、下腹、胴体、胸、首、頭……そしてそれに内蔵させるハートコアやその他様々な部品たち。


「うん。

 なんか子供のバラバラ死体みたいだ」


 顔の造形とかは自分の体をシリコン型でコピーして作ったから、部品の一つ一つの形状が俺にそっくりで正直気持ち悪い。

 いくら可愛い女の子の体を手本にしてるからとはいえ、バラバラだからな。


「そんじゃ、さっさと組み立てるか」


 並べた部品たちの前に腰を落とし、一つ一つを手に取って丁寧に組み合わせる。


 メインハートコアに擬似人格ポッドを接続して、CPUくっつけて、人工脊髄に導線を通して、プラグを各人工筋肉に接続して行く。


 一つ一つ丁寧に、断線しないように気をつけながら、傷つけないように気をつけながら。


 そうやって胴体と頭部に部品を収納して背中の蓋と後頭部の蓋を閉じる。

 肩関節の駆動を確認して、手脚を繋いで、指の動きを確認して……最後にウィッグを縫い付けて……。


 ──完成だ。


「……できた。

 ……でーーきたーーーーーーッ!!!!!!」


 目の前に転がる、見た目完全な死体の幼い少女のオートマトンを見て、思わず俺は雄叫びを上げた。


 さっきあげてから二時間くらいしか経っていないが、そんなことはどうだっていい。


 俺は今、猛烈に感動している!


「ふぅ。

 型をとったのが九歳の頃だったから、今の俺よりちょっと背丈は小さいけど……間違いなく俺だ。

 ウィッグがブラックハウンドの尻尾の毛を使ってるから黒髪っていう違いはあるけど……うん。大満足」


 肌の触り心地は柔らかい。

 スベスベで、もちもちで、これが機械だって言われても多分信じる人は少ないだろう。

 だがその証拠に尾骶骨のあたりにはコンデンサに魔力を送るためのコンセントが付いているし、亜門のあたりにはガジェットを装着するためのジャックが付けられている。

 そして右肩にはシリアルナンバーである『00』というアラビア数字が刻印されている。


 この世界の数字の形とは違うから、おそらく俺以外にはこの刻印の意味は理解できないだろうけど。

 でも、もし俺と同じ異世界人がこの世界にいたりしたら……。

 これを機に、いろいろな物語が始まるかもしれない。


「まあ、確率はだいぶ低いだろうけど」


 それでも、夢を見られずにはいられないんだ。


 俺は満足に頷くと、オートマトンの体を起こしてベッドの上に乗せ、魔道具作りに使った道具をクローゼットに片付ける。

 勿論、ツナギも脱いで元のワンピースへと着替え直す。


「そうだ、この子にも服を着せてやらないといけないんだよなぁ」


 着替えている最中に、ふとそのことに思い至る。


 今まで中の部品を作ったりということで頭の中がいっぱいだったから、すっかり失念していた。

 今のままゼンマイを回せば、素っ裸なままそこら中をうろうろしかねない。


 それに、受肉させた精霊がどんな性格なのかというのもまだ不明だ。

 もしも恥じらいというものを持たないような性格の精霊だったら裸で外を走り回られて大変なことになりかねない。


 幸い、髪の毛の色が違うから俺と間違われることはないが、自分で作ったオートマトンにそんなことをさせてはこちらが恥ずかしくて仕方ない。


 ……え?

 精霊の性格は自分では決められないのかって?


 全くだよ。

 彼らの性格が決まるのは、どんな微精霊をかき集めたかで決まるのだろうと予想してはいるが、それがわからない以上、それはランダムに決まってしまう。


 だからこの子がどんな性格のオートマトンとして目を覚ますか、俺にも全く予想がつかないのだ。


 まあ、万が一の事態になったら擬似人格ポッドを取り替えてリセマラするだけなんだけどね。


 でもなるべくそんなことはしたくないから、ここはもう祈るばかりだ。


 ……と、話が逸れたな。


 そういうわけだから、この子に服を着せてやる必要があるのだ。

 すっかり忘れてたけど。


「でも、どうせなら可愛い服を着せてやりたいな。

 昔お母さんに裁縫の練習とかいって着せ替え人形で遊んだあの時みたいに、やっぱり自分の可愛いオートマトンには特別な衣装を着させたい」


 ……作るか。

 来月のお小遣いを貰ったら、旧ブリューナク通りの服飾店で材料買って、マリアのミシンを借りて。


 それまでは、とりあえず俺の服を着せておこう。

 確かクローゼットの奥に着てない服が数着くらいあった気がするし。


 クローゼットの位相を切り替えて、普段のものに戻す。

 ハンガーにかかっている服をかき分けて、着ていない服を探す。


 ……マリアがいつも、『アリスに似合うと思うの』とか言って何着も買ってくるから、結構な量の服があるのだ。


 ワンピースは十着くらいあるし、エプロンドレスも六着くらいある。

 他にもチュニックやパーカー、カットソー、などなど。


 中でも一番量が多いのがブラウスだ。

 襟や前縦に可愛いレースやフリルがあしらわれた、上流に近い貴族が着ていたらしい中古のブラウスがほとんどだが、中には新品で買ったものもある。

 デザインにそこまで違いはないが、淡いピンクとか青とか赤、白、黒、さまざまなカラーバリエーションがある。


 トップスだけでもかなりの数。

 これだけあれば全部合わせてかなりの値段になったはずだ。


 いくら服を作るのが全部機械でできて量産できるようになったとはいえ、なぁ。


 うちがそこそこお金持ちだからできる所業、かもしれない。


 そんな無数にある服の中から、あまり着ていない白のブラウスと、裾に向かって幅が広くなる、ゆったりした黒のズボンを選択した。


「うーん……なんか、味気ない」


 併せて黒色のベストを着せてみる。


 ファッションはモノトーンにしておけば間違えないとは聞くが、こうしてみるとなんか、コレジャナイ感がある。

 正直この組み合わせはない。


「別のにするか」


 まず、何色を基調にするかから考え直そう。


 何着ても似合うが、やはり組み合わせというのは大事だ。

 ……いや、むしろ組み合わせなくて済むものにすればいいんじゃないか?

 ほら、俺が今着てるワンピースみたいに……。


 服を脱がせて、別のものに挑戦してみる。


 いくらロボットとはいえ、ここまで精巧な見た目をしてると脱がすのもちょっと緊張する。


 まぁ、もう毎日自分の裸を見てるから女の子の裸には見慣れてる……筈なんだけどね。


 ……え?

 下着を着せてないのかって?


 あー、うん。

 俺、服の数はあっても下着の数ってそんなにないんだよなぁ。


 ドロワーズ五着しかない。

 いつも洗濯はまとめてやってるから、一個足りないとすぐに下着が無くなる。

 だから残念だけどこっちは譲れない。


 これについては、来月買いに行く。


 閑話休題。


 次に選んだのはワンピースだった。

 と言っても、部屋着用ではない、外に着ていく用のワンピースだ。


 あまり着ることがない、焦げ茶色を基調としたものである。

 キャバルリーシャツを彷彿とさせるワンピースの前面はベージュ色で明るくなっていて、襟にはレースが、スカート部分の裾は透けている裏地が少しだけ伸びていて可愛らしい。


 ……うん。

 これならいける、か?


 少なくとも俺にはおかしい点が見えない。


 何着ても似合う美幼女が組み合わせ無しのワンピースを着ているだけなのだから、おかしくないはずがない。


 一つあるとすれば、これが一昨年流行してた服だってことくらいか。


 当時の騎士ブームは凄かったなぁ。

 何が原因でそうなったのかわからないけど。


 と、そうこうしていると、ガチャガチャと扉の鍵を開ける音が聞こえてきた。

 振り子時計を見てみれば時刻はもう十六時になろうとしていた。


「これ見せたら驚くかな?」


 ……いや、まだ秘密にしておこう。

 お披露目は、特許を出す日までお預けだ。


 俺はとりあえずオートマトンをクローゼットの中に隠すと、玄関までマリアを迎えにいくことにした。

 ここまでお読みいただき、誠にありがとうございますm(_ _)m

 もしよろしければ、ここまで読んだついでに感想、いえ、評価だけでもしてくれたら嬉しく思います。

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