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アリス・カンパニー 〜TS転生したけど今度は好き勝手に生きることにする〜  作者: 青咲りん
第1章:アリスちゃんは工房が欲しい。(前編)
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魔道具弄るの大好きですが何か?

 めっちゃ用語出てきますけど分かりやすいように解説するよう努めましたのでご安心くださいませませませ。

「わふ(ところで、お嬢は何をお買い上げなさったんですか?)」


 帰り道。

 カニスの上に乗りながら魔導街を散歩していると、不意に首をこちらに向けてそんなことを尋ねてきた。


「ちょっと前から考えてて作ってる最中の新しい魔道具作りに必要な材料を」


 言いながら、重い麻袋を揺らして見せる。

 中で何やら重い金属音がガチャガチャ響いてきて、とても心地がいい。


 どうしてこう言う金属音は心が高まるんだろう。


「わふ?(新しい魔道具?そりゃあ、一体なんです?)」


「ふふん、聞いて驚きたまえ、カニスくん。

 俺は家に帰ったら、かねてよりやりたいと思っていたオートマトンを作るのだよ」


「わふぅん!?(お、オートマトン!?)

 ……わふ?(……って何ですか、お嬢?)」


「いや知らんのかい!」


 知ってて驚いたようなそぶりを見せる飼い犬にツッコミを入れて肩を竦める。


 全く、犬のくせに芸が細かい。

 魔犬だから、普通の犬より賢いのは知ってるけど、もはや人間と同レベルじゃん。


「わふわふ(それにお嬢、帰ったら二番倉庫を見るんじゃありませんでしたっけ?お父様に言われていたじゃないですか)」


「うっ……」


 指摘されて、少し顔を歪める。


「ま、まあ後でそれもやるさ。

 帰ってくるまでに済ませれば良いんだしさ」


「わふ……(まったく、お嬢は……)」


 カニスが呆れたように首を振る。


「なんだよ?」


「わふ(魔道具弄りが好きですね、と言うことですよ)」


 そんなやりとりをしている間に、魔導街を抜けて立体的に入り組んだ居住区に出た。

 魔道具を動かすためのボイラー、そこから排熱される煙がまた少し濃くなって、太陽の光をわずかに遮る。


 いくつかの階段を抜け、歩道橋を渡る。

 蒸気機関式の魔道具を発明したヘロン・ホ・アレクサンドリウスの銅像が飾られたモニュメントのある小さな公園の前を抜ければ、坂道に並ぶ少し大きな三階建ての家屋たちが見えてくる。

 坂道に入って入り口から四番目──グラストン坂通り四番、そこが我が家の住所だ。


「ただいまー」


 カニスを家の中庭へ連れて行きリードを外してから、裏口の扉を開けて屋内に入る。


「おかえりアリス、お疲れ様。

 ちゃんと手洗いとうがいはすませた?」


「んー」


 ブーツの靴裏を布で拭いながら返事を返すと、煤まみれの銀髪の女性がタオルを首に掛けながら様子を見にきた。


「あら、また何か買ってきたの?」


「ちょっと作りたいものがあったの」


「てことは、またウィニスさんのところに行ってたのね。

 またお父さんに女の子らしくないって怒られるわよ?」


 彼女の言う通り、スヴィンは魔道具弄りをする私を見つけると、いつも女の子らしくない、もっと淑女らしくしなさいと言ってくる。

 それがどうしてかはわからないが、好きなものは好きなんだから仕方ないじゃないか。


 それに、禁止されるとやりたくなるもの。


「上手くやるからいいの!」


 ぴしゃりと跳ね返して、筋力強化の魔法を使って(魔道具を使わない自力だ)重い麻袋を担ぎ、二階へ続く階段へ向かう。


 第二の人生はやりたいことをやりまくるって決めてるんだ。

 親不孝にならない程度にね。


「もう、あの子ったら」


 ため息をつくマリアの声。

 しかし階段を上がる前にちらりと見えた彼女の顔は、少し嬉しそうに微笑んでいたのを俺は見逃さなかった。


⚪⚫○●⚪⚫○●


「それじゃ、早速メインハートコアの改良と擬似人格ポッドの作成に取り掛かるか」


 自室に入り、鍵をかける。

 勉強机の上に買い物袋を置いて上着のレザーコートと外着の茶色のドレスエプロンを脱ぐ。


「また白いの着たら汚れるからな」


 椅子の背もたれに掛けていた部屋着の白いワンピースを素通りしてクローゼットに手をかけると、ドアノブに魔力を通して中の位相を切り替える。


 これは俺がスヴィンに習って覚えた空間魔法を、魔道具として作り替えたものだ。


 クローゼット内部の位相を切り替えることで、収納しているものを切り替えるのである。


 ちなみに、切り替えたこちら側の中身は、スヴィンに隠れて作ってる魔道具の部品とか色々だ。

 これから作るオートマトンの筐体や部品もそこにある。


 そんなクローゼットの中から、サラマンダーの革で作られたツナギを引っ張り出した。

 古着の大人用ロングコートを改造したものだ。


 手芸の技術は、昔マリアに習った経験があるからな。

 ロングコートを改造するくらいはお手の物なのだ。


 ドロワーズを履いた脚をツナギに通して、袖に手を通す。

 鼠蹊部から伸びる首元までのファスナーを上げて、装着完了。


「さて、まずはメインハートコアの改良からだな。

 せっかくいい霊圧アンプが手に入ったんだ、こっちをメインに付け替えないわけにはいかないだろう」


 隠しクローゼットから部品と道具を取り出して、早速改良を始める。


 ハートコアというのは、魔道具の心臓となる部品だ。

 具体的にどこの部分かっていうと、電気を生み出すタービンとか電磁石とかある電気系の部品全般と、それから魔力オイルが入ったシリンダーに霊圧アンプ。

 基本的に魔道具が魔法を発動するのに必要なこの部品をハートコアと呼ぶ。


 実は、このハートコアには二種類あって、電気系統の部品を必要とするさっき説明したものがI(いち)型ハートコアと呼ばれる。

 対してコンデンサと呼ばれる道具に予め魔力を充填させておいて、これをゼンマイを回すことで魔力を抽出して霊圧アンプで魔力の圧力を上げて使用するものをII(に)型ハートコアと呼ぶ。


 今回俺がオートマトンに利用するハートコアはII型の方だ。


 利便性の違いは……イマイチよくわからん。

 コンデンサのあるII型は変圧器とか作らないで済む分、魔力オイルのシリンダーがないから、一目見て魔力の残量が分からないが、I型はわかる……くらいか?


 冒険者はもっぱらI型を利用してるイメージがあるけど、その理由はよく知らない。

 単純に考えれば、性能としてはII型の方が良いと思うんだが、I型がII型を凌駕できている部分がイマイチ思いつかない。


 ……っと、閑話休題。


 怪我をしないように軍手を嵌めて、コンデンサのスイッチが切れていることを確認する。

 霊圧アンプのソケットとコンデンサを固定しているロックを外してプラグを抜いて、今日買ってきたアンプに差し替える。


 これで消費効率が大体十三割増しくらいになったか。


 こっちの交換したアンプは、後でサブハートコアに付け替えよう。


 サブハートコアはコンデンサをつけられるほど容積に余裕がなかったからI型を使っているが、別にプラグの形は同じだから使えないことはない。


 両方とも同じくレモネード社製の部品使ってるからね。


 いやぁ、今思い返すと、月々の小遣い一万ギルだと、部品を買うお金をやりくりするのに苦労するよ。

 ウィニスさんには、このオートマトンが完成した暁には絶対披露しに行かないとね。


 全部彼のお店で買った部品で作ってるんだから。


 メインハートコアとサブハートコアの改良が終わったので、次は本日の大イベント、擬似人格ポッド作りに取り掛かるとしよう。


 この部品はオートマトンに人格を与える為に超絶重要なものだ。

 これがなくても動きはするけど、あったほうが命令とか正確に聞き取ってくれるようになるし、何より人間らしいロボットというコンセプトの主幹でもある。

 これ無くしてオートマトンはオートマトンとは言えないだろう。


 それに、人の心を持つ機械とか、ロマンだろ?


 やっぱり道具にはロマンがないと。


 ちなみにこれは、人間の体で言えば魂に当たる部分になる。


 というわけで、今日の買い物で浮いた残り四千ギルで買った部品を、勉強机の上に置いた麻袋から取り出す。


 購入したのは、銃でいう銃口部分に取り付ける、魔道具の必須ガジェット、レコード──の素だ。

 レコードは金属製の円盤に魔法陣が刻印された形状をしており、ここに魔力をぶつけると、その波が大気中にいる微精霊に反応して魔法現象が起こる。


 これと、煙突状の鉄製部品と、ソケット、その他いくつかの金属部品。


「まずはボディを動かすためのコンソール用の魔法陣を作るところからかな」


 クローゼットのところから厚手の木綿布を勉強机の上に引っ張り出してきて、そこに金属製の円盤を置く(邪魔な麻袋は机の端に追いやった)。

 ついでに引っ張り出してきた魔法陣の回路図を隣に置いて、魔法陣を描くためのペン型の機械のゼンマイを巻く。


 内部の小型霊圧アンプが淡く光を灯して、ペン先の魔法陣が起動したことを確かめて、円盤の上を走らせる。


 円盤の半径は、約三センチ。

 そこに複雑な回路を真剣な表情で描き込んでいく。


 これ、一から自分で描き込むのめっちゃ大変なんよなぁ。


 魔法陣(レコード)は基本的に安い。

 値段はピンキリだが、一番安い物だと百ギルで買える。


 描くのが大変なのにどうして?と思う人もいるだろうが、答えは魔導式写真植字機《マジカルフォトタイプセッター》(MPT)という魔法陣の回路を印刷する専用の機械を使っているからだ。


 ちなみにこのペンはウィニスさんから譲ってもらったお下がりである。


 MPTの詳しい仕組みはよく知らん。

 ウィニスさんに何回か見せてもらったことあるくらいだし。


 だから、その素となる金属板だとさらに安くなるってわけさ。


 ちなみに、レコードの魔法陣を描く機械はMPT以外にも、パンタグラフを用いて相似図形を別に描く事で写すことができるものもあるんだけど……。

 そこそこ値が張るから持ってないんだよなぁ。


「ふぅ……」


 どれくらい時間が経っただろう。

 複雑な幾何学模様を金属板に描き終え、凝ってきた肩を回して、勉強机向かって左後ろの壁にある、姿見の隣の振り子時計を見上げる。


 時刻は十一時五十七分。

 帰ってきたのが九時半くらいだから……約二時間半くらい集中してたのか。


 そりゃ肩も凝るよなぁ。


「あーっ、こんな事ならウィニスさんにMPT借りればよかったかなぁ。

 いや、そんなことしたら驚かせらんないし……」


 首を回し、腰を左右に捻って体をほぐす。

 ずっと前傾姿勢で集中してたから、身体中がきつい。


 ……まあ、数分もすれば治るのは経験上知ってるけど。


 全く、子供の体力はすごい。

 ちょっと不調になったと思ったら、ふとした瞬間にはすでに回復してるんだ。

 前世の俺が知ったら、きっと驚くだろうなぁ。


「アリスー、ご飯できたわよー」


 ──そんなことを考えていると、一階の方から呼びかける声が聞こえてきた。


 どうやらいいタイミングでご飯の時間がやってきたらしい。


「すぐ行くよー!」


 扉の方に首を向けて叫び返す。


 さて、続きはご飯の後にしようかな。


 俺は席を立つと、机の上をそのままにして自分の部屋を後にするのだった。

 ここまでお読みいただき、誠にありがとうございますm(_ _)m

 もしよろしければ、ここまで読んだついでに感想、いえ、評価だけでもしてくれたら嬉しく思います。

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