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俺が魔王で勇者があきらめた!  作者: 結城悠
戦国編ー開幕記
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思いと想い・出発地点

白色盗との戦いが終わり、これからの事を話し合う為、エリス達三人は撤収作業の始まった野営地から少し離れた場所に集まっていた。

「それで、次の目的地ですが・・・」

「姉者、言葉を挟んで申し訳ありませんが」

ヌエが控えめに申し出ると、エリスとトゼルがヌエの方を向く。

「いえ、大丈夫です。ヌエは何かあるのですか?」

「できる事ならば、獣魔領へ向かいたいと思うのですが」

ヌエの目は野営地の中心を見ていた。その視線の先にあるのは白色盗の捕えられている場所、カガシジの居る場所だった。

その視線に気付き、なんとなくの察しを付けたエリスは、少し悲しそうな顔をした。

「カガシジさんの事、ですか?」

「・・・はい」

ヌエなりに色々と考えた結果なのだろう、未だに言葉を整理しきれずにいるのか、詰まりながらも口を開く。

「拙者は、今でも彼を、どうしたらいいのか解りません。ですから、彼の最期を見届けて、父上に、その全てを伝えようかと」

ヌエの思いを受け止め、エリスは次の目的地を決める。

「分かりました。私も獣魔領が良いと思っていましたし、その方向で行きましょう」

「姉者・・・!恩に着ります!」

深く頭を下げるヌエ、そんな真直ぐなヌエを見てエリスが微笑む。

「獣魔領ねぇ、あたしも初めて行くわ。美味しいお酒があると嬉しいのだけれど」

「あはは、トゼルは相変わらずですね」

「まったく、お前には酒の事しか頭にないのか?」

トゼルの軽口でその場の雰囲気が明るくなる。どんな時でも自分のスタイルを崩さない彼女は良きムードメーカーだ。

「それじゃ、ファラさんに同行の許可を取った方がいいですね」

そうして三人は、ファラを探しに野営地へと歩いて行くのだった。


ファラを探すために撤収作業をする獣魔に話しかけると、以前とは打って変って笑顔で応答してくれた。

「おや?エリスさん、ファラさんですか?この先に居ますよ!」

「エリスさん!ああ、この先のテントですよ、そこにファラさんがいます」

誰しもがエリスの名前を知り、拒絶することなく対応してくれる。この野営地に初めて来たときとは正反対の対応に、エリスは嬉しくなる。

「これが、認められるってことなのかな。凄く、嬉しい」

その思いにつられて足取りも軽くなる。

野営地の撤収作業を取り仕切っているファラを見つけ、声をかけた。

「ファラさん、少しお話があるのですが」

「ん?お前か、少し待て」

ファラはエリス達を見ると、作業をしている獣魔に作業の続きを告げ、時間を作ってくれた。

「待たせたな、予定より荷物が多くて作業が遅れてな。・・・それはいいか、で、どうした?」

少し疲れた顔で愚痴をこぼすが、頭を振り、切り替えるとともに話を戻す。

「私達の今後の進路なのですが、一度獣魔領に向かおうと思いまして。良ければ御一緒させてもらえないですか?」

エリスの問い掛けに頷き、二つ返事で答える。

「ああ、かまわないぞ」

「・・・えっ?いいんですか?」

あっさりしすぎて逆に驚いてしまうエリス。その態度が気になったのか、ファラが眉間にしわを寄せた。

「なんだ?俺はかまわないと言ったが?」

「ちょっと、あっさりしすぎて驚いたと言うか。いえ、よろしくお願いします!」

勢いよく頭を下げるエリスと、習って頭を下げるヌエ。

「元々大所帯だ、多少増えても困らないだけだ」

そう言って作業へと戻っていくファラ。彼のそんな態度も、認めてもらっているからだと思うと、悪い気はしなかった。


「では、今後の予定は獣魔領に向かうと言う事で決まりですね」

そうと決まれば旅の支度をしなくてはいけないと、自分達の馬車へ戻る三人だったが、その場所には意外な人物が待っていた。

その人物の姿をいち早く見つけたのはトゼル。

「あら?あれって確か?」

「確か、エクスデトさんとダブルブさんでは?」

向こうもエリス達に気付いたようで、ダブルブが軽く手を挙げて挨拶する。

「やぁ、どうもどうも」

「こんにちわ、なにかご用ですか?」

腕を組んだまま動かないエクスデトに変わり、ダブルブがエリスに話しかける。

「いやなに、エク兄が君に聞きたい事があるって言うんだけどね」

「私に、ですか?」

「先の戦いでの、伝説の破壊。その真意が知りたい」

唐突に話を切り出したエクスデトに驚き、話の内容を理解して焦る。

一先ず考える時間を稼ぐために、相手の出方を伺う事にした。

「えっと、真意とはどういう事でしょうか?」

エクスデトに言葉を返すと同時に、肩に乗るキュウに目配せをし、どうしたらよいかを尋ねる。

この件に関してエリスは実行しただけで、本当の理由はキュウしか知らない。

間違っても「この魔物の命令で」などと口が裂けても言えない。言ったところで冗談かはぐらかされているかと思われるのが落ちだろうが。

「読んで字の如く、本当の理由だ。我々の力があれば無傷で手に入れる事も出来たのではないか?」

エクスデトの言う事は正しい。あの魔術道具があったところで、戦況が揺らぐ事は無かった筈だ。

ただしそれは、あの魔術道具の間違った使い方をしなければだが。だからキュウは、あえて間違った使い方を教える事にした。

いつも通り、エリスの口を借りて説明を始める。

「確かに、運が良ければそれもできたでしょうが・・・」

「運?どういう意味だ」

エリスの口調が正確になったのを不思議に思ったのか、エクスデトが少し後ずさる。

「あの魔術道具は周囲の魔力を吸収する物でした、それは戦場を見ていれば分かると思いますが」

彼は戦場での魔力の流れを思い返し、その発言に同意する。彼が魔法を得意とする人魔であるからこその説得力。

「たしかに、言われてみれば不自然な点もあったかもしれない」

自然魔力の流れは風と同じで大きな規則性の流れの中に、変則性の流れが混ざり合う物だが、今回の戦場では白色盗の陣取る場所に持っていかれているような流れが存在していた。

テェレアという爆風の近くに居たせいで気にも留めなかったが、それは確かな不自然だ。

「それこそがあの魔術道具の持つ特性で、魔力を吸収し、術式暴走を引き起こすのです」

「術式暴走・・・?」

その言葉を聞いた事のなかったエクスデトは首をかしげる。隣に立っていたダブルブも同じようで、手を広げて肩を上げ、さっぱり分からないと言った顔だ。

「つまり爆発です。様々な術式が暴走して広がる。運が悪ければこちらも相当な被害が出ていたでしょう」

「爆発か、なるほど。伝説については分かった、その危険性もな」

理解してくれたようで、エリスはほっとした。それと同時に、自分が破壊した物がそれほど危険だったとは知らず、キュウが破壊しろと命令した理由も良く分かった。

「だが、どうして知っている?伝説の術式は我々人魔ですら解読困難なものばかりだ、それを、戦いの中で理解したと言うのか?」

その質問に、エリスはしまったと思い、どう答えて良いものか悩む。

キュウはエクスデトという男の頭の回転の速さを素直に認め、楽しんでいた。

「この男、できるな。もしかすると、あいつよりも厄介なのはこいつなのかもしれないな」

独り言のように笑いながら喋るキュウを横目に、助けてと言う視線を送るエリス。

これ以上はエリスの為にならないと判断し、

「言い訳くらい自分で考えろ」

とだけ言い、口を閉ざす。

内心で焦りながらも、少しづつ言葉を選んでいくエリス。

「えと、それは、私の師匠がとても魔術に詳しい方で、それで、私も詳しいと言うか」

「師匠?その者は一体何者だ?」

「そ、それは、秘密で・・・」

エリスのはっきりしない態度が気に入らないのか、組んだ腕を指で叩きながら苛立つ彼が口を開きかけた時。

「エク!エリスちゃんを虐めちゃだめだよ!」

「チッ、テレア・・・」

エリスの背後からテェレアが現れ、エクスデトが分かり易く嫌そうな顔をする。

「ごめんね、エクは疑い深くて、ホントはいい奴なんだけど口うるさいから」

「え・・・と」

突如現れたテェレアにどう反応してよいか分からず、さらに混乱するエリス。そんなエリスを無視してエクスデトの苛立ちは頂点に達していた。

「・・・どうして来た」

「鍛錬から戻ったら、二人が外に出たって聞いたから、昨日の話をするんじゃないかって思ったのさ」

おそらく、エクスデトは二人にエリスが伝説を破壊した話を先にしていて、そこから察しを付けてこの場所にやって来たのだろう。

「テレア、別に虐めていた訳じゃないのさ。エク兄は人魔の発展の為に・・・」

「ダブ、大丈夫さ、ちゃんと分かってる。でも、それとこれとは別だよ」

「チッ!そう言うと思ったよ、だからお前を置いて来たというのに・・・」

エリス達を置いて押し問答を始める三人、ややこしい事になったと頭を抱えるキュウと、どうしたらよいか分からずオロオロするエリス。ヌエとトゼルもあきれ顔でその様子を伺っていた。


口論の続く中、エクスデトの感情がその場において言ってはならない一言を放つ。

「だから!このヴァイスが!っ・・・」

「・・・エク、その呼び名は使わない約束だろ」

いつものテェレアとは違う、冷たく、強い口調。その変わりように、エクスデトだけでなく、その場に居た全員が静まり返る。

人魔であり、ヴァイスと反対に存在するテェレアがその言葉を嫌う理由は分からないが、その雰囲気から、それが冗談ではなく本意であることは明白だった。

「ごめんねエリスちゃん。僕達はこれで帰るから」

エリスに向けられた言葉は、いつも通り軽く柔らかい物で、先程のような冷たさは一切なかった。返事を返す事も出来ず、踵を返すテェレアをただ見ていた。

しかしエクスデトがそれを制して呼び止める。

「待て、テレア」

「・・・まだ何かあるのかい?」

振り返らず、エクスデトに背を向けたまま話す。顔も見たくないという怒りの表れだろうか、エクスデトに向けられた言葉は淡白なものだ。

「この際、この者についての追及は置くとしても、伝説については責任を取らせなければならないだろう」

「・・・どういう意味だい?」

「この戦いでの報酬は伝説、その約束は守られていない。そうだろう?」

その言葉はエリスにも向けられていた。

「えと、それは・・・」

テェレア達が白色盗討伐において協力する条件は一つ。彼等の持つ伝説を全て受け取ると言う物だ。一見すると、約束通り三つの伝説を手にしたが、白色盗の所持していた魔術道具は4つ、本来テェレア達が手にする筈だった物を、エリスが破壊し、約束を守らなかったのは確かな真実だ。

「あのねぇ、あんたさっきの話聞いてたの?お姉様が壊さなきゃ私達だって無事じゃなかった、いいえ死んでたのよ?」

「珍しく意見が合うな、姉者は間違った事はしておらぬ。それを無視して約束など、おこがましいのではないか?」

ついに黙っていられなくなったのか、ヌエとトゼルが進み出る。迫る二人にたじろぐが、

「しかし、約束は約束だ。そうだろう?」

負けじと自分の意見を曲げないエクスデト。

気丈に振舞ってはいるが、二人に詰め寄られる姿は蛇に睨まれた蛙、猫に追われる鼠にしか見えない。

「エク、女性が苦手なくせに今回は頑張るんだね」

テェレアはその姿に苦笑いしつつ、少し考えるそぶりをした後、エリスに提案を持ちかけた。

「それじゃ、エリスちゃん。この後、鋼魔領の山賊討伐に参加してくれないかな?」

「・・・えっ?」

唐突な提案に、エリスも含め、その場に居た全員が呆然とテェレアを見ていた。

「実は、最近勢力が拡大したのは白色盗だけじゃないんだ、人魔の水賊、鋼魔の山賊、小さいところを含めると他にも多くの族が台頭してきている」

台頭してきた盗賊は、その全てが伝説を所持しており、一般の者では到底太刀打ちできない。それをテェレア達で討伐し、伝説を集めるとともに、魔国の平穏を取り戻そうとしているのだ。

「水賊との戦いで僕に力を貸してくれる人だけでは辛い戦いになると分かってね、力を貸してくれると嬉しいんだけど」

お願いしているように聞こえるが、これは命令だ。断ればエクスデトが黙っていないし、このまま押し問答を続ける事になる。それに、彼という存在を知るいい機会になるのかもしれない。

「断る選択肢が無いじゃないですか・・・」

「んー、そうかもね」

いたずらっ子のような明るい笑顔、内心はエリスと居られて嬉しいと言うのが見え見えな顔だ。

「けれど、一つだけ条件があります」

エリスも自分達の目的がある。それを曲げる事になってしまうのは少し心苦しかった。

「ヌエは予定通り獣魔領へ向かいます、参加するのは私とトゼル。それでいいですね?」

「あ、姉者!?なにを・・・」

だから、せめてヌエには自分の思いを最後まで見て来て欲しい。そして、その思いを教えて欲しい。

「ヌエはカガシジさんを最期まで見て来て、そして私に教えて下さい」

「しかし、拙者一人別を行くなど・・・」

ヌエも迷っているようだった。カガシジの最期を見たいという思いは確かに自分の望みだ、けれど、エリスと別行動など、自らの想いに反するのではないか。

思いと想いの狭間で悩むヌエの背中を、エリスが押してやる。

「私達は誓で結ばれてる、だから、離れていても想いは一緒ですよ」

その言葉で、ヌエは決心した。

「そうですな、拙者は、己の思いを確かめてきます」

今度は逆に忘れ去られたような様子のテェレア達三人、条件を言いきられてしまった手前、断るわけにもいかず、双方が提案を受け入れる事で、その場は落ち着いたのであった。


長らくお待たせして申し訳ありません(定型文


一通りプロットも纏まったのでヌルヌル書いていこうと思います。

それと、暫くサブタイがややこしくなりそうなので、ちょっと簡略します。

様々な視点の物語が散らばって行く予定ですのでお楽しみに。


感想、御待ちしております。

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