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俺が魔王で勇者があきらめた!  作者: 結城悠
戦国編ー開幕記
62/73

賽は投げられた

白色盗の面々はすでに戦意を喪失しかけている。今その場で立っているのは三人だけ。

「白王!こいつら、前回の非じゃねぇ!まったく歯が立たない!」

「泉の力も尽きかけてる!このままじゃ!」

「慌てるな!くそっ、なぜだ!なぜ奴らは!」

それぞれが迫って来る軍勢を抑える為に、三か所に向かって魔法を生みだしていく。

けれど、放たれた魔法によって敵が減る事は無く、着実に迫って来る。

今まで感じた事の無い、圧倒的な力の前に、その場に居る者すべてが恐怖していた。

白王と呼ばれた爬魔の男は、自分の後ろに置かれた小さな噴水型の置物に目をやると、そこから湧き出る光の量が少なくなっている事に憤りを感じていた。

この光が失われた時が、自分の最期だと分かっている。

「まだ俺は死ぬわけにはいかない、この世界に復讐するまで、死ぬわけには!」

怒りで目が充血し、拳が軋みを上げる。

鬼気迫る姿に気圧された者達が、その姿に畏怖を抱いた。

「このままでは終われん!この場は一時退き、体勢を立て直すぞ!」

その言葉を、その場に居た者達は何も言わずに了承し、それぞれが武器を握りなおし、臨戦態勢を取る。

彼等を突き動かすのは白王と呼ばれる者の恐怖、ただそれだけ。

「しかし、この状況では逃げ切れるか・・・」

「俺達も目の前を抑えるので精一杯です!」

近くに立つ二人の人魔が悲鳴にも似た言葉を吐くが、白王は動じない。

白王は周囲を見渡し、状況を確認する。

彼が曲がりなりにも王と呼ばれているのは、戦闘においては天才的な才能を持っているからに他ならない。

迫り来る軍勢を確認し、この状況を打開する案を一瞬にして理解し、実行する。

「南西だ、そこが一番進行が遅い!俺の合図で最後の魔法を集中させる!そこを一気に抜けるぞ!」

その場に居た者すべてが安堵した。今までの戦いの経験と実績が、彼の判断を間違いない物として認識させている。

敵のど真ん中に突っ込むなど、逃げる者の考えとは程遠いが、目的の本質を捉えた作戦だ。

彼等の目的は、この場から逃げ切る事。

その為には、敵の隙間を通って挟撃され、後ろから追われる形になるよりも、戦力を集中させて敵の一団を混乱させ、追撃をさせない事が重要だ。

集団戦闘の知識ではなく、戦闘での経験から来る知識だったが、それが最善である事は間違いない。


「おぉ!テレア、炎だ!敵は南西の方角へ進んだみたいだ」

「魔法を目印にして遠くの味方に情報を伝えるのか、簡単だが実に分かりやすい」

「二人とも、僕はそろそろ限界だから後は任せたよ?」

テェレアは笑顔を浮かべて二人に告げたが、実際は相当疲弊していた。

全魔族で最も優れた魔術適正を持つ、人魔の中でも相当に優秀なテェレアであっても、長時間広域魔法を一人で発動させ続けるには無理があった。

それでも、敵を追い込むまでほぼ一人で魔法を使い続けた彼は恐ろしく強い魔力を持っている。

彼は後続の追撃に加わる為に目標地点へ、エクスデトとダブルヴは敵を追い込む挟撃へと向かった。

そしてテェレアは己の満足の為に目標へと向かう。

目標の白色盗の一団がトゼルとヌエ率いる一団へ向かったと言う事は、追撃にはエリスが加わるはず。

実力を直に見られる絶好の機会であり、楽しみでもあった。

けれど、そんなテェレアの期待はあっさりと裏切られる事となる。

「あれ?あなたは確か・・・」

「ファラだ、急遽追撃に加わる事になったが、問題ないだろう」

気の抜けた返事でその場を後にしたが、

「僕にとっては問題なんだよな・・・」

と、聞こえないように一人呟くのだった。


「ファラさん?彼女はどうして・・・?」

歩を進める中、何気ない質問とを向けると、ファラ自信不思議そうな顔で答える。

「さぁな、急に独り言を言い出したかと思ったら、追撃を俺に任せて挟撃に向かいやがった」

「一人言・・・?」

彼が初めてエリスを見た時も、一人言を呟いていたと思い返しつつ、続けて内容を聞いてみる。

「それで、彼女はなんと?」

「反応が4つだとかなんとか、俺にはさっぱりわかんねぇし、今更関係ないだろう?すでに勝負はついている」

テェレアは今まで彼と話した事は無かったが、それでも彼が饒舌になっている事は分かった。

話している彼は、まるでおとぎ話に出てくる歴戦の猛者に憧れる子供のように、楽しそうに話をするのだ。

獣魔族は人魔に次いで黒色信仰の根強い土地だ、たとえそれが利害から来るものだとしても。その獣魔が認めるだけのカリスマ性を、彼女は持っていると言う事だ。

彼女には何か特別な力がある。そう確信したテェレアの歩みは、少しばかり速くなっていた。

その場に居た者達も、テェレアの黒く力強い歩みに感化され、数千の勇み足となって大地を突き進んでいく。

彼もまた、万人の心を奮い立たせる強い力を秘めている。

その場に居た誰かがふと言いだした言葉。

「黒く勇み歩む者、黒勇者」


黒勇者って、また在り来りな。

けれど、分かりやすいって大切だと思いますよね?


感想御待ちしております。

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