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俺が魔王で勇者があきらめた!  作者: 結城悠
戦国編ー開幕記
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能ある鷹は爪を隠す

戦況は一方的だが、被害が出ていない訳ではない。

エリス率いる一団と、テェレア率いる一団は二人の圧倒的な魔法を持って進んでいるが、トゼルの一団は苦戦を強いられている。

空から降り注ぐ岩を魔法で迎撃してはいるが、相殺しきれなかった岩が一団へ降り注いでいた。

「予定通り、我々八叉の者が前方の対処をするが、各自己の身は己で守れ!」

ヌエを筆頭に、八叉の門下生が空へと飛び上がり、大小の岩破片を砕いていく。

魔法と言っても岩には実態があり、素手で触る事が出来る。

それでも、全てを対処する事は難しく、軽傷を負う者が少なからず出ていた。

「この伝説、汎用性が高い分一発の威力は大した事無いのよね」

「ホゥ?お前さんのソレはやはりぃ伝説かね、なるほどね。妖魔が魔法を使うなんて珍しいと思ってたんだ」

トゼルの愚痴に反応したロクロクは納得したように頷いている。

「あら、知られちゃった?それで、こんなところでロクロクさんは何やってるのよ?」

トゼルは隊の最前列で魔法を撃ち続けている。

降り注ぐ岩はトゼルの異法で吸収する事も出来たが、岩の落下速度は吸収するよりも早く、魔力として取り込む以前にトゼルを押し潰してしまう為、吸収する事ができない。

一方ロクロクは魔法を使う事無くトゼルと並んで歩いているだけ、かといって茶々を入れに来ただけと言う訳ではなさそうだ。

「お前さん、そろそろ魔力の底が見えてきたんじゃないかね?」

「・・・そうね、そろそろ限界かも」

ヤトオウドの魔力を吸収してから、ほぼ魔力を使う事の無かったトゼルは、万全の状態でこの戦場に来ていたはずだが、数時間の戦いですでに魔力は尽きかけている。

時々撃ち漏らしの岩破片を吸収で取り込んでいるとはいえ、魔莢も残り3つ。持って後30分と言ったところだろうか。

他の魔術使いも入れ替わり立ち替わりで魔法を放っているが、疲労の色が見て取れる。

エリスが示した予定の位置まで届くか届かないか、微妙なラインだ。

「ホゥホゥ!正直なのはよい事だ。わたしゃ、自分の役目をまっとうするよ」

「・・・何を?」

トゼルの後ろへと回り込み、言葉を紡ぎだす。

「大いなる空に広がる訪れよ、永遠の栄光へ、烏合に蠢く、息吹の抱き、朝と在りて示さん」

魔力流が渦巻き、彼の言葉に載せて激しく躍動する流れがトゼルを包み込む。

魔術であればトゼルの異法で吸収する事が出来る。

たとえそれが影響を及ぼさないただの魔力だったとしても、今のトゼルは魔力を変換する事のできる法冠を持っている。

「わぉ、こんな魔力見た事もないわ。貴方、もしかして凄い人?」

「ホゥホゥ!こんな魔法でも役に立てたならぁ良かった、そんな事より次がきてるぅぞ?」

予定よりも多くの魔力を手に入れたトゼルは舌舐めずりと共に、手に持った法冠を宙へと投げた。

「まさかこんなに早く試せるなんてね」

法冠が魔力を受け、輝く。


討伐隊野営地までの道中、エリスが教えてくれた法冠の情報。正確には、エリスの口を使って教えられたキュウの知識。

「魔法のかんむり。冠とは王が頂く物、王とは即ち頂点。魔法を頂く者が持つべき力。それを使いこなせるかは、力量ではなく器で判断しろ」

そんな漠然とした説明だけされ、直感的に閃いた事が一つあった。

この伝説に技術など必要ないのではないか。キュウの言う器で判断と言うのは、どう扱うかではなく、どう扱えるかを模索しろ、と言う事ではないのかと。

物事を分かり難く説明するのは、キュウの思惑の一つだ。それについて文句を言われようと、今後も変えるつもりは無かった。

それは、彼の掲げる理想形である、自身の想像を超える世界の創造であるからだ。

「器って言われてもねぇ、器なんてお酒を入れる以外使い道無いでしょう?」

「二言目にはお酒が出てくるのはどうかと思いますよ?」

「酒好きが招じて大事おおごとにならなければ良いのだがな」

「何言ってるのよ、お酒は命であり魔力なのよ?それが大事になるなんて・・・」

トゼルの中で言葉が繋がっていく。器と、酒と、命の意味。

「どうしました?急にだまってしまって」

「酒が飲みたくなったなんて言うのは無しであるぞ?」

「うふふ、お姉もたまにはいい事言うじゃないの。参考になったわ、ありがと」

そのまま笑い続けるトゼルを見ていたエリスとヌエは訳が分からないと言うように顔を見合わせていた。一方でキュウはトゼルの勘の良さに感心していたのだった。


輝きに包まれた法冠から、幾つもの光の軌跡が描かれていく。

一団の前方を覆い尽くすかのような輝きは、魔力の描きだす巨大な魔術式。

式の各所に設置された収束地へと魔力が集まり、氷の槍を形造る。

百本の氷の槍が連なり、あたかも壁が行進しているような異様な光景。

率いる一団を守るには心許ない数ではあるが、敵に対して畏怖を与えるには十分な効力を発揮していた。

空から迫る岩は前方のトゼルを集中的に狙い、それ以外の場所への攻撃が少なくなっている。

降り注ぐ岩は氷の槍に触れた瞬間砕かれ、一方は自然魔力となって消え、小さな破片となった物はトゼルに吸収され消えていく。

「ホゥ!これぇは凄い、まさかこんな隠し技があるぅなんてね!」

「うふふ、でもやっぱり消費が激しすぎるわね。これじゃ結局長くは持たないかもね」

「わたしゃ、後三回くらいならさっきと同じ事ができるぅんだがね?」

トゼルはその言葉に驚かされた。自身の留めておける四倍もの魔力をこの男は扱えるのか、魔力だけならお姉様と慕うエリスさえも超えるのではないかと。

そんな驚きが見透かされたのか、ロクロクは愉快そうに笑う。

「ホゥホゥ、お前さんが思っている事は多分間違っているぅぞ?わたしゃ、ただのヘンノウだよ」

「軽率なのは私の特権なんだから、取らないで欲しいわね」

「それぇはすまなかった、気を付けるぅよ」

そんな軽口を交わしながら、一団は前進していく。


更新が安定しない・・・のは大目に(通例


考えもまとまって来たので、そろそろ真面目に更新速度を上げなければ!


感想御待ちしております。

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